「頑張ったら…」はNG? 子どもの自己肯定感を育む正しい「褒め方」とは
子どもが心から、うれしいと思える褒め方とはどのようなものでしょうか。親が子どもを褒めるときの秘訣について、専門家が解説します。
あなたはどういうときに子どもを褒めますか。親が子どもを褒めるのは、一般的に次のようなときだと思います。
・子どもがよい行いをしたとき
・子どもが頑張って努力しているとき
・できなかったことができるようになったとき
・よい結果を出したとき
・やるべきことがちゃんとできたとき
常に愛情や感謝の気持ちを伝える
もちろん、こういうときに褒めたり、一緒に喜んだりしてあげることはとても大切なことですし、否定的な言葉で叱りながらやらせるより、はるかにマシです。しかし、実は、褒め方としてはこれだけでは不十分なのです。なぜなら、これらはすべて、条件付きの褒め方だからです。つまり、「よい行いをしたら」「頑張ったら」「できるようになったら」という条件が付いているのです。
それは「褒めることでもっとやらせよう」という大人の意図が透けて見えているということでもあります。それにより、子どもがいまひとつ、心から喜べないこともあります。また、子どもが「もっと褒められるために、もっと頑張らなければ」と思って、頑張り過ぎる可能性がありますし、期待に沿えなかったと感じて、悪い結果(学校の成績など)を隠すようになったり、嫌なときにも「嫌」と言えなくなったりする可能性もあるのです。
心理学では、子どもが親に愛されていると本当に実感するのは「自分の存在を無条件に丸ごと肯定されたとき」だといいます。つまり、「よい行いをしたら」「頑張ったら」「できるようになったら」などの条件付きではない、まったく無条件の肯定です。大人も子どももみんな、心の奥底で無意識のうちに次のように願っているのです。
・ありのままの自分を受け入れてほしい
・頑張れない自分も大切にしてほしい
・ちゃんとできない自分も許してほしい
・よい結果を出せない自分も肯定してほしい
・どんな自分も受け入れて愛してほしい
つまり、みんな、自分を無条件に受け入れて大切にしてほしいのです。そのためには先述のように、条件付きの褒め方だけでは不十分です。そこで、ぜひ、子どもたちに次のような言葉を贈ってあげてください。
・生まれてきてくれてありがとう
・どんなあなたも大好きだよ
・あなたといると楽しい
・あなたを見ていると、幸せな気持ちになるよ
・おかえり。今日も無事に帰ってきてくれてよかった
・今日もあなたと一緒に過ごせてうれしい。あなたがいてくれるだけで幸せ
・どんなことがあっても、お父さん(パパ)とお母さん(ママ)はあなたの味方だよ
・あなたは私たちの大切な宝物
・あなたがお母さん(ママ)とお父さん(パパ)の子どもでうれしい
これらは、子どもの存在自体を無条件に丸ごと肯定する言葉です。つまり、無条件の愛であり、無条件の褒め言葉です。親にこう言ってもらえると、子どもはありのままの自分を肯定できるようになります。言い換えると「短所も含めて、自分はありのままの自分であっていいんだ。自分は大切な存在なんだ」と思えるということであり、これがいわゆる自己肯定感というものです。
自己肯定感がある子は精神的に安定していて、明るく元気に生活できます。やりたいことを自分で見つけて、積極的に取り組むことができますし、向上心が高くて、継続的に頑張ることができるのです。また、友達や兄弟にも優しく親切に接することができるため、人間関係にも恵まれます。
このように、無条件に丸ごと肯定する言葉が大事なのです。しかし、非常に残念なことに、日本人はこうした言葉を口に出すのが苦手です。日本の青少年の自己肯定感は各種の国際比較調査で、いつも最下位なのですが、その原因の一端はこういうところにあるのではないでしょうか。
日本人は夫婦間でも「愛してる」「大好き」がなかなか言えません。それと同様に、親子間でもこういう言葉が言えないのです。一方、欧米の人たちは夫婦でも親子でも、日本人よりはるかにたくさん、こういう言葉を口に出して、自分の気持ちを相手に伝えています。だから、子どもたちの自己肯定感も高いのではないでしょうか。
ぜひ、無条件に丸ごと肯定する言葉を子どもたちに贈ってあげてください。口で言うのが難しいなら、手紙などの書き言葉で伝えましょう。ちょっとしたメモ帳を使ったミニ手紙でもいいです。また、メールやLINEも書き言葉の一種なので、それらで贈るのもよいでしょう。
子どもも含め、大切な相手に、ぜひ、きちんとした言葉で愛情や感謝を伝えるようにしていきましょう。「言わなくても伝わる」というのは勝手な思い込みであり、都合のよい言い訳にすぎないと思います。
(教育評論家 親野智可等)
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