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10時間も前から…健康診断前の「食事制限」、なぜ課される? 守らなかったら?

健康診断前は、開始10時間ほど前から食事が制限されますが、いつものように3食口にしていても健診を受けられる人がいます。

健康診断前に食事をしても問題ない?
健康診断前に食事をしても問題ない?

 健康診断では多くの場合、開始10時間ほど前から食事が制限されます。水やお茶以外は口にできないことになっていますが、中には、いつものように3食を口にし、食事制限をすることなく健診を受けにくる人もいます。何らかの差し障りがあるからこそ食事制限があるはずですが、食事制限をせずに健診を受けても問題ないのでしょうか。内科医の市原由美江さんに聞きました。

中性脂肪は戻るまで最低10時間

Q.なぜ、健康診断では、開始10時間前から食事制限をしないといけないのですか。

市原さん「食事制限をするかしないかは、血液検査の結果に影響を与えます。血液検査で、空腹時と食後で差が出るのは血糖値と中性脂肪です。10時間も食事制限をしないといけないのは、通常、血糖値は食後2時間程度で空腹時と同程度に戻りますが、中性脂肪は、最低でも食後10時間は経過しないと元に戻らないためです。

健康診断での正常範囲は空腹時の状態で設定されており、食事をした後の状態では、異常値と判定されることがあります。食後には、血圧は下がりやすくなるため、高血圧が見逃される可能性もあります。

また、胃カメラや胃透視(バリウム検査)では、食事したものが胃に残っていると正しく検査できないため、食事制限は必須です。腹部超音波は食後だと、胆のう収縮が起こり、胆のうが正しく見えない可能性があること、腸内ガスが多くなり肝臓や膵臓(すいぞう)も見えにくくなることがよくあります」

Q.健診前の食事制限を守っていない人も、健診を受けることができるようです。

市原さん「健診前の食事制限を守れなかった場合、先述のように異常値となる可能性があります。しかし、そうなることを本人が了承すれば、健診を受けることはできます。つまりは、自己責任です。しかし、可能な限り食事制限を厳守して受けるべきです」

Q.食事制限を守らず、健診で悪い数値が出た場合、再検査となるのでしょうか。

市原さん「異常値であれば、再検査となります。『食事制限をしなかったから異常値になった』というような言い訳で、結果が甘めに評価されるようなことはありません。ただし、後日に医師の診察を受けて、食後の数値として許容範囲内である場合は再検査なしでも大丈夫な場合もあります」

Q.食事制限をしていないということで、健診を受診できないケースはあるのですか。

市原さん「あります。例えば、生命保険に加入するための健康診断や職場に入る前の健康診断では、なるべく異常値がないことが求められていると思います。そのため、食事制限をしていない場合、異常値となる可能性があり、健診を別の日にすることがあります。また、胃カメラや胃透視、腹部超音波検査では正確に検査できないため、それらの検査だけ別の日にすることはあります」

Q.食事制限を守っていない人は、健診開始のどれくらい前に飲食をし、何を食べたかを細かく聞かれたり、別の用紙に記入したりしているようです。どのような意図があるのでしょうか。

市原さん「たとえ食事制限をしていなかったとしても、食事制限をした人に近い状態で健診を受けられるかどうかを見極めるためです。例えば、血糖値にも中性脂肪にも影響しない食事を取っていた場合、血液検査で異常が出る可能性は低くなるため、通常通り健診を受けられると判断されます」

Q.食事制限なしで健診を受診できるのであれば、食事制限を守った人にすれば、モヤモヤした気持ちや不公平感があると思います。

市原さん「やむを得ません。ただ、食事制限をしなかった人は、きちんとした人よりも異常値になるリスクを背負います。食事制限をすることで、現在の体の正確な状態を知ることができるとポジティブに考えてもらいたいです」

Q.午後2~4時ごろに健診となると、朝食と昼食も食べられないケースが出てきます。こうした時間に設定された場合、どのように空腹に対処すればよいですか。

市原さん「我慢するしかありません。どうしても我慢できそうにない場合、例えば、午後2時から健診が始まるとすると午前4時前に早起きして朝食を取ることになりますが、あまり現実的ではないでしょう。空腹を紛らわせるため、糖分の含まれていないお茶や水を少量飲む程度であれば大丈夫ですが、胃カメラや胃透視、腹部超音波検査があるときは水分も指定の時間以降は飲めません」

(オトナンサー編集部)

市原由美江(いちはら・ゆみえ)

医師(内科・糖尿病専門医)

横浜鶴ヶ峰病院付属予防医療クリニック副院長。自身が11歳の時に1型糖尿病(年間10万人に約2人が発症)を発症したことをきっかけに糖尿病専門医に。病気のことを周囲に理解してもらえず苦しんだ子ども時代の経験から、1型糖尿病の正しい理解の普及・啓発のために患者会や企業での講演活動を行っている。また、医師と患者両方の立場から患者の気持ちに寄り添い、「病気を個性として前向きに付き合ってほしい」との思いで日々診療している。糖尿病専門医として、患者としての経験から、ダイエットや食事療法、糖質管理などの食に関する知識が豊富。1児の母として子育てをしながら仕事や家事をパワフルにこなしている。オフィシャルブログ(https://ameblo.jp/yumie6822/)。

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