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米国は中国を「為替操作国」に認定するのか

人民元相場に起きている“異変”

 ところで、今年に入って人民元相場にちょっとした異変が起きています。中国は人民元を特定の水準に誘導する管理変動相場制を採用しています。資本取引に規制があるため、中国本土の「オンショア市場」と、香港やシンガポールなどの「オフショア市場」では、参加者や取引の目的などが異なることもあり、両市場の人民元相場にはかい離が生じます。もっとも、ある程度の裁定が働くため通常、両者のかい離は大きくありません。

 それが今年に入って、オフショア人民元の相場がオンショア人民元の相場を上回り、両者のかい離が拡大しています。これは中国当局がオフショア市場における人民元の流動性を引き締めたためとみられます。人民元安を阻止する動きです。結果として、オンショア、オフショア人民元の対ドル相場はともに「ほぼ横ばい」となっており、下落基調が目立った昨年と様子を異にしています。

 中国が事実上、対ドルでの人民元切り下げを行った2015年8月には真逆の現象が観測されました。オフショア人民元相場がオンショア人民元相場を下回る形で両者の差が拡大したのです。これは、海外投資家(投機家?)がさらなる人民元安を予想して、オフショア市場で人民元を売り仕掛けたためとみられます。

通貨安阻止も「為替操作国」と認定されるか

 中国当局が人民元安にブレーキをかけようとした形跡は別の統計からもうかがえます。中国は2016年の1年間に米国債を1900億ドル近く売り越しました。日本が約300億ドルの売り越し、中国と日本を除く外国が約800億ドルの買い越しでしたから、中国の売り越しの突出ぶりがわかります。同様に中国の外貨準備も減少しており、中国が「米ドル売り人民元買い」の介入を行っていたと想像できます。

 トランプ政権は、自国通貨安を阻止するための介入を繰り返している国も為替操作国と認定するのでしょうか。介入をやめれば、人民元安に大きく振れるかもしれません。もっとも、中国の管理変動相場制自体が当局による為替操作を前提とするものとも言えるため、米国が最終的に要求するのは完全な変動相場制への移行ということかもしれません。

(株式会社マネースクウェア・ジャパンチーフエコノミスト 西田明弘)

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西田明弘(にしだ・あきひろ)

株式会社マネースクウェア・ジャパン(M2J)市場調査部チーフエコノミスト

1984年日興リサーチセンター入社。米ブルッキングス研究所客員研究員などを経て、三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社。チーフエコノミスト、シニア債券ストラテジストとして高い評価を得る。2012年9月マネースクウェア・ジャパン(M2J)入社。現在、M2Jのウェブサイトで「市場調査部レポート」「市場調査部エクスプレス」「今月の特集」など多数のレポートを配信するほか、テレビ・雑誌などさまざまなメディアに出演し活躍中。株式会社マネースクウェア・ジャパン(M2J)(http://www.m2j.co.jp)。