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10代の「市販薬」乱用者急増…ネット販売解禁と関係は? わが子が乱用していたら?

30人中2人が市販薬乱用の可能性

Q.厚生労働省研究班の調査対象は、精神科の治療を受けた患者ですが、治療を受けていない人の中にも、潜在的に市販薬を乱用している人がいるのでしょうか。

森さん「神奈川県の高校生を対象にした調査では5.4%、東京都の高校生では6.7%が、市販薬を決められた目的・用量から外れて使用した経験があるそうです。30人クラスの中で2人くらいが市販薬を乱用しているという数字です。

10代の市販薬乱用患者の多くは、学校や家においてさまざまな心理的苦痛を感じ、誰にも相談することができずに1人で抱え込んでいる人です。何らかの生きづらさを感じる若者が増えている昨今、市販薬によって一時的な救いを求める人は一定数存在すると考えられます。

また、10代の市販薬乱用は約65%が女性です。女性は生理痛を緩和するため、中学生の頃から鎮痛剤(痛み止め)を飲み慣れています。痛みの程度で決められた用法用量より多く飲む人もおり、乱用という自覚がなく少しずつ薬の量が増えていくケースもあります」

Q.乱用の恐れのある市販薬をネットで簡単に買える状況を変えるのは、すぐには難しいと思われます。現状、市販薬の乱用を防ぐ手立てとしてどのような方法がありますか。

森さん「セルフメディケーションを促進する動きに逆行するようですが、医療用医薬品から市販薬への転用(スイッチOTC)を慎重にすべきです。また店舗でも、本来は薬剤師の指導のもとに販売することになっている市販薬が、複数購入も含めて簡単に購入できていることが調査から分かっています。年齢、症状、ほかに使用している医薬品がないか確認するなど、販売ルールの徹底が求められます」

Q.わが子や家族、友人で市販薬を乱用している可能性があることを知ったとしたら、乱用をやめさせる第一歩として、どのように対応すればよいのでしょうか。

森さん「松本医師によれば、市販薬を乱用する若者の多くは、親の過度な期待に対するプレッシャーや将来の不安、いじめや虐待など、生きていく中での苦痛が存在しています。誰にも助けを求められないつらさを一時的にごまかすために市販薬を使用するそうです。

もし、市販薬を乱用していることに気付いたら、『薬をやめなさい!』と注意するのではなく、背景に存在する“困っている問題”について聞いてあげてください。自己肯定感を高め、信頼関係を築いていくことが薬に頼らない自立を促すことにつながります。

次のステップとして、薬物乱用の根本にある病気の治療につなげることを目指します。うつ病や、発達の偏り、乗り越えられないストレスなどで追い詰められているケースが多いので、精神科における丁寧な診察と治療により、薬への依存と付き合いながら、できる限り量を減らしていくことが大切です」

(オトナンサー編集部)

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森まどか(もり・まどか)

医療ジャーナリスト、キャスター

幼少の頃より、医院を開業する父や祖父を通して「地域に暮らす人たちのための医療」を身近に感じながら育つ。医療職には進まず、学習院大学法学部政治学科を卒業。2000年より、医療・健康・介護を専門とする放送局のキャスターとして、現場取材、医師、コメディカル、厚生労働省担当官との対談など数多くの医療番組に出演。医療コンテンツの企画・プロデュース、シンポジウムのコーディネーターなど幅広く活動している。自身が症例数の少ない病気で手術、長期入院をした経験から、「患者の視点」を大切に医師と患者の懸け橋となるような医療情報の発信を目指している。日本医学ジャーナリスト協会正会員、ピンクリボンアドバイザー。

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