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臨月は「胎動」が減ったり、なくなったりする? 「本当?」と不安視する声、医師に聞く

出産を経験した女性から、「臨月に入ると胎動が少なくなる」という声を聞くことがあります。産婦人科医にその真偽を聞きました。

臨月に入ると胎動が少なくなる?
臨月に入ると胎動が少なくなる?

「臨月に入ると胎動が少なくなる」

 出産を経験した女性から、このような声を聞くことがあります。妊娠・出産に関する体験談などをネット上で検索し、参考にする女性は少なくありませんが、特に初産を控える女性からは「本当に正しいのかな」「胎動が減っても問題ないの?」と不安視する声も多く上がっています。中には「臨月に入ると胎動がなくなる」という情報もあるようですが、果たして正しいのでしょうか。

 実際に、胎動の頻度で分娩時期を判断できるのか、産婦人科医の尾西芳子さんに聞きました。

胎動がなくなることはない

Q.そもそも「胎動」とは何でしょうか。

尾西さん「胎動は、おなかの中の赤ちゃんが動くことですが、赤ちゃん自体は妊娠のごく初期から動いていて、それをお母さんが感じるようになることを一般的に、胎動が始まるといいます。多くの人が19週前後で感じるようになりますが、早い人は16週ごろから感じることもあります。

また、痩せている/太っているなどのお母さんの体格や、1人目か2人目以降の妊娠かなどで感じ方は変わってきます。痩せていたり、2人目以降の妊娠だったりする方が、早くから胎動を感じ始めることが多いです。むしろ、1人目のときはどれが胎動なのかもあまりよく分からないと思います。

また、『腸が動いている感じ』『ガスが動いている感じ』のように、いわゆるポコポコ、トントンといった胎動ではないこともあります。人によっては、『動悸(どうき)がする感じ』のように感じることもあるようです」

Q.一般的に、胎動が激しいとき、胎児はどのような状態だと考えられますか。

尾西さん「妊婦さんがリラックスすると子宮の筋肉も緩むので、赤ちゃんが動きやすく、胎動も感じやすくなります。よく、『お風呂に入っているときや、夜寝ているときに胎動が激しい』と心配する妊婦さんがいますが、お母さんがリラックスしている証拠です。また、『動き過ぎて寝ていないのでは』と気にする妊婦さんもいますが、赤ちゃんは寝ながらでも伸びたり動いたりしているので、心配はいりません。

『胎動で眠れない』という声もよく聞きますが、感じ方は、あおむけより横向きの方が少なくなるので横向きに寝て、赤ちゃんが安心するように話しかけてあげてください」

Q.一方で、胎動が少ないときはどうでしょうか。

尾西さん「胎動が少ないと感じるときは、いつもより少し気を付けて様子を見ましょう。妊娠後期になると、赤ちゃんは『起きる』『寝る』を20~30分程度の短いサイクルで繰り返しているので、寝ているだけであれば、少し時間がたつと動きを感じることができます」

Q.臨月に入ると胎動が少なくなる、というのは事実でしょうか。

尾西さん「個人差はありますが、出産が近くなると胎動が少なくなる人はいます。臨月に入る頃になると赤ちゃんも大きくなり、動けるスペースが減ってくるためです。また、出産が近づいてくると赤ちゃんの頭が下がってきて、骨盤内に赤ちゃんの頭が固定されます。固定されると赤ちゃんも動きづらくなり、胎動が少なくなったように感じます。ただ、頭が固定される時期は人によって異なるため、一概に臨月に入ったら胎動が少なくなるというわけではありません」

Q.ネット上には、臨月に入ると胎動がなくなる、という情報もあるようです。

尾西さん「臨月になると動きが鈍くなったり、回数が減ったりすることはあっても、胎動がなくなることはありません。それまでとは全く違って、『しんとした』感じがするときは要注意です。赤ちゃんが弱っていたり、亡くなっていたりするケースもあります。すぐにかかりつけの病院へ連絡しましょう」

Q.胎動の変化について、妊婦さん自身が意識しておくべきことはありますか。

尾西さん「胎動が少ないと感じたら、お母さんは少しゆっくりして、胎動を感じるようにしてみましょう。少しでも『ピクッ』『ポコッ』などの動きがあれば安心ですが、心配な場合は『胎動カウント』をしてみてください。

胎動カウントは、赤ちゃんが10回動くまでの時間を計測するものです。臨月になると20~30分かかることもありますが、1時間以上全く感じられない▽胎動はあるがいつもと比べて急に減った▽しんとした感じがする、といった場合は赤ちゃんが危険な状態のこともあるため、早めにかかりつけ医に連絡しましょう」

Q.「胎動で分娩時期を判断できる」と考えている妊婦さんは少なからずいるようです。

尾西さん「胎動はあくまでも『元気にしているよ』という赤ちゃんからのメッセージです。先ほど述べたように、臨月になって動きが鈍くなったり、回数が減ったりすることはあっても、胎動がなくなることはありません。また、骨盤内に赤ちゃんの頭が固定されて胎動が少なくなる時期は、陣痛が来るずっと前の場合や、陣痛が始まってからのケースなど、人によってさまざまです。妊婦さんの体格や子宮の傾き、赤ちゃんの性質などによっても感じ方はかなり異なります。

そのため、胎動だけで分娩時期を予測することはできません。胎動がなくなったときは『臨月だから大丈夫』と安心しないようにしてください。人と比べるのではなく、いつもの胎動かどうかを気にすることが大切です」

(オトナンサー編集部)

尾西芳子(おにし・よしこ)

産婦人科医(神谷町WGレディースクリニック院長)

2005年神戸大学国際文化学部卒業、山口大学医学部学士編入学。2009年山口大学医学部卒業。東京慈恵会医科大学附属病院研修医、日本赤十字社医療センター産婦人科、済生会中津病院産婦人科などを経て、現在は「どんな小さな不調でも相談に来てほしい」と、女性の全ての悩みに応えられるかかりつけ医として、都内の産婦人科クリニックに勤務。産科・婦人科医の立場から、働く女性や管理職の男性に向けた企業研修を行っているほか、モデル経験があり、美と健康に関する知識も豊富。日本産科婦人科学会会員、日本女性医学学会会員、日本産婦人科乳腺学会会員。オフィシャルブログ(http://ameblo.jp/yoshiko-onishi/)。

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