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滝川クリステルさん、42歳で出産へ 「高齢出産」の現状、そのリスクやメリットとは?

フリーアナウンサー・滝川クリステルさんの妊娠が話題になりました。「高齢出産」の現状とは、どのようなものでしょうか。

小泉進次郎衆院議員(左)と滝川クリステルさん(2019年8月、時事)
小泉進次郎衆院議員(左)と滝川クリステルさん(2019年8月、時事)

 日本中が驚きと祝福に沸いた、自民党の小泉進次郎衆院議員とフリーアナウンサー・滝川クリステルさんの結婚発表。会見では、滝川さんが現在妊娠中であること、年明けに42歳で初産を迎えることが明かされ、話題になりました。女性の働き方やライフスタイルの変化、晩婚化を背景に、35歳以上での初出産を指す「高齢出産」が増えつつある中で、そのリスクや実情が改めて関心を集めています。

 ネット上でも「40歳で初産だったけど、不安の方が大きかった」「どうしてもリスクが気になるけど、メリットはないのかな」など、さまざまな声が上がっています。高齢出産を取り巻く現状について、産婦人科医の尾西芳子さんに聞きました。

35歳以上の出産は全体の3割

Q.まず「高齢出産」の定義を教えてください。

尾西さん「実は、日本産科婦人科学会では『高齢出産』という言葉は使用しておらず、『高年初産婦』という言葉で定義されていて、35歳以上の初産婦のことをいいます。以前は30歳以上とされていましたが、30歳以上の出産が増加したことや医学が進歩したことで、『35歳以上』に引き上げられました。

ただ、一般的に初産に限らず、35歳を超えると妊娠・出産に伴うリスクが増加するため、注意喚起の意味も含めて『高齢出産』と呼ばれています」

Q.高齢出産をする女性は、実際に増加しているのでしょうか。

尾西さん「厚生労働省の『人口動態調査』2016年版によると、35歳以上の出産は全出生数の約3割に上っています」

Q.高齢出産には、どのようなリスクがあるのでしょうか。

尾西さん「35歳以上になると、卵子の数の減少や質の低下により急激に妊娠しにくくなり、妊娠したとしても卵子の老化による染色体異常(ダウン症など)が多くなります。また、流早産や『周産期死亡』(妊娠満22週以後の死産と生後1週未満の早期新生児の死亡)といった胎児のリスクや、妊娠中の糖尿病や高血圧などの妊婦合併症、周産期出血や脳出血、心臓・大血管疾患による妊産婦の死亡など、母体のリスクも増加します」

Q.高齢出産のリスクが最も高まると考えられるのは、何歳でしょうか。

尾西さん「35歳を超えると、『35歳より36歳』『36歳より37歳』…というように、年齢に比例して高齢出産によるリスクは高まります」

Q.リスクが注目されやすい高齢出産ですが、メリットとして考えられることもあるのでしょうか。

尾西さん「医学的には、若い方がリスクは少なくてよいのですが、社会的・経済的には、高齢出産にもメリットがあります。若いときは仕事も未熟で雑務が多い場合もあり、子育てに時間が割くことができないケースがありますが、30代後半や40代になると仕事に時間的余裕ができやすい他、金銭的にも若い頃より余裕があることが多くなるため、子どもに時間やお金をかけやすいというメリットがあります」

Q.高齢出産をする女性が増えつつあることについて、産婦人科医としてどのように思われますか。

尾西さん「やはり、医学的にみると推奨されることではありませんが、実際に私自身が社会の中で仕事を持っていて『気づけば30代…』ということを経験しているので、一概に否定はできません。

現状では、『みんなが高齢出産だから大丈夫』と思わずに、リスクを理解して妊娠・出産に挑んでいただきたいと思いますが、本当は社会全体として『若くても妊娠・出産・子育てをしながら働ける環境』になれば、医学的にも社会的にも一番良いのではないかと思います」

Q.高齢出産を控えた妊婦から、実際の診察やお産の場でどんな声が聞かれますか。

尾西さん「妊娠中の合併症についてはもちろんのこと、出産時や子育ての際の体力面を心配する妊婦さんも多くいらっしゃいます」

Q.滝川クリステルさんの妊娠のニュースについて、同様に高齢出産を控えている「プレママ」からも反響が上がっているようです。これから高齢出産を迎える女性に向けて、産婦人科医としてどんなことを伝えたいですか。

尾西さん「まずは『本当におめでとうございます』とお伝えしたいです。若くても妊娠すること自体が奇跡ですが、高齢出産となると妊娠の奇跡、流産しなかった奇跡、無事に生まれる奇跡など、たくさんのリスクを乗り越えた奇跡のつながりで、赤ちゃんが生まれてきます。そのリスクを少しでも下げられるのは、ママの力と周りの協力です。

バランスの取れた3度の食事、適度な運動、しっかりと休息を取ることなど、基本的な生活習慣を改めてみましょう。出産や子育ての際の体力は非常に重要です。合併症の予防のためもありますが、子育てに備えた体力づくりのため、妊娠中から適度な運動をしておくとよいでしょう。

また、こうしたニュースを受けて、30、40代の方が『40代でもまだ大丈夫』『もう少し先でもいいんだ』と考えることも多いと思うのですが先述のように、やはり医学的には35歳を超えると急激に妊娠しにくくなりますし、流早産の危険性、母児の周産期リスクなどが増加します。30代に入ったら、『この先、どのタイミングで子どもを持つのか/持たないのか』を考えて、一度人生の計画を立ててほしいと思います」

(オトナンサー編集部)

尾西芳子(おにし・よしこ)

産婦人科医(神谷町WGレディースクリニック院長)

2005年神戸大学国際文化学部卒業、山口大学医学部学士編入学。2009年山口大学医学部卒業。東京慈恵会医科大学附属病院研修医、日本赤十字社医療センター産婦人科、済生会中津病院産婦人科などを経て、現在は「どんな小さな不調でも相談に来てほしい」と、女性の全ての悩みに応えられるかかりつけ医として、都内の産婦人科クリニックに勤務。産科・婦人科医の立場から、働く女性や管理職の男性に向けた企業研修を行っているほか、モデル経験があり、美と健康に関する知識も豊富。日本産科婦人科学会会員、日本女性医学学会会員、日本産婦人科乳腺学会会員。オフィシャルブログ(http://ameblo.jp/yoshiko-onishi/)。

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