エスカレーター「片側空け」は本当にマナー? 「歩かず立ち止まる」が新常識になる理由【専門家解説】
同調圧力と「責められたくない」心理
Q.なぜ、これだけ「歩かず立ち止まろう」と呼びかけられても、片側空けがなくならないのでしょうか。
西出さん「ここには、『暗黙のマナー』が持つ同調圧力があるのではないでしょうか。人は必ずしも、『これが正しい』と考えているから行動しているわけではありません。『みんながやっているから』『自分だけ違うと目立つから』『後ろの人に迷惑と思われたくないから』という理由で行動することもありますね。
例えば右側に立ち止まりたいと思っていても、『後ろから舌打ちされたらどうしよう』『怒られたら怖い』と思えば、仕方なく左側へ移る方々もいらっしゃるでしょう。
そうなると片側空けは、『正しいから守っている習慣』ではなく、『責められたくないから従っている習慣』になってしまいます。これは、本来のマナーの本質から外れます。
一方で、『今は立ち止まるのが正しいのだから』と、片側を空けている人や歩いている人を攻撃することにも賛成しません。マナーは、人を裁くための道具ではないからです。社会の習慣が変わるには時間がかかります。お互いを責めるのではなく、新しい安全な習慣を少しずつ広げていくことが大切なのではないでしょうか。
ただ、もともとエスカレーターは本来、両側に立ってそのまま移動するための乗り物として作られたと思いますから『元の姿に戻しましょう』ということになるのかもしれませんね」
Q.条例化して「立ち止まること」を求める自治体もあります。この動きをどう評価しますか。
西出さん「安全第一ですから、良い動きだと思います。『今まではこうだった』ではなく、『今は安全のため、こういう利用方法が求められています』と社会に明確なメッセージを出すことは、意識を変えるきっかけになります。
ただし、マナーの観点から最終的に理想とするのは、『条例があるから立ち止まる社会』ではなく、『相手の安全を考えれば自然と立ち止まれる社会』です。ルールだから仕方なく守るのではなく、『こちらの方がみんなが安全ですね』『この方が安心して利用できますね』と考えて、自分自身で行動を選んでいく。それがマナーの理想だと思います」
Q.最後に、読者が明日からできることを教えてください。
西出さん「まずは『エスカレーターでは歩かず、左右どちら側でも立ち止まる』ことです。そして、前の人が自分の進みたい場所に立っていても、急かさないことです。その人には、外見からは分からない事情があるかもしれません。右側の手すりにしかつかまれないのかもしれませんし、けがをされているのかもしれません。体調が悪いことも考えられます。
私たちは、目の前の人の事情をすべて知ることはできません。だからこそ、『もしかすると、何か事情があるのかもしれない』と想像することです。企業の研修や講演などでも『相手の立場に立つというマナーに想像力は大切で、想像したことを実際の行動に移すことが大切』だと伝えています。
今回の問題で、何よりお伝えしたいのは、『マナーの型より、何より安全が第一』ということです。昔からの形を守ることがマナーなのではありません。人の命、安全、安心を守るためにマナーがあります。
かつて良かれと思って行っていたことも、先述のように『急ぐ一人への配慮』から、『そこにいるすべての人への配慮』へと考えを転換させましょう。時代や状況が変われば、思いやりの形も変わって良いのです」
(オトナンサー編集部)






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