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朝まで20時間、お風呂は3日に1回、視力は0.1に…ゲーム依存症だった私が“脱出”を果たすまで

「ゲームより楽しいこと」が見つかった

 抜け出せたのは、環境の変化がきっかけでした。

「僕に合う学校を両親がいろいろと探してくれました。中学2年の時に転校した学校は小規模校で、1クラス10人もいないところでした。人数が少なかったので周りになじみやすく、学校に通うことができました。通い始めると友達ができます。友達と話すのが楽しくなって、ゲームの優先順位が自然と下がっていきました」

 当時は、ゲーム依存症やネット依存症の診療が本格的に始まっていなかった時代。現在では、ゲーム依存症と診断された可能性のある状態から、なぜ抜け出せたのでしょうか。

「ゲームよりも楽しいことが見つかったからだと思います。ゲームを完全にやめたわけではありません。高校や大学時代も土日などにプレーしましたが、日曜の夜になると『明日学校だから寝ないと』と思うんです。学校に行って友達と遊びたいから、ゲームはここまでと。大学時代は研究も忙しかったです。今もゲームはしますが、高校や大学時代の友人と飲むのが一番楽しいです」

 白鳥さんにとって、家族との接点が途切れなかったことも幸いしました。家の構造上、洗濯物を干す場所に行くため、母親が必ず1日1回は部屋を通っていたそうです。

「『ご飯何食べる?』『何でもいい』くらいですが言葉は交わしていました。親父も、たまに釣りに連れていってくれました。ゲームをやる前は、釣りが一番好きだったんです」

 家族の助けもあって、ゲームへの依存から抜け出した白鳥さん。現在は名古屋市内でIT関連の企業に勤めています。今、ゲーム依存症になっている人や、その家族を前にしたら、どんなことを伝えるのでしょうか。

「ゲーム以外の『何か』を見つけることが大切です。今、eスポーツが注目されていますが、ゲームで生活できる人は限られています。ゲームだけの生活を続けることはできません。本人だけでは行動できないので、周りの人の助けが必要です。『何か』を探したり、環境を変えたりする動きを手伝ってあげてください。学校をいろいろと探して、転校させてくれた両親に、本当に感謝しています」

 白鳥さんを紹介してくれたのは、ネット依存症など、ネットに関する悩みについて相談を受けるサイト「エンジェルズアイズ」(東京都港区)代表の遠藤美季さんでした。パソコンインストラクターを経て2002年にサイトを立ち上げ、小中学校や高校などでも、ゲームを含むネット依存症の予防、啓発活動をしています。

「ゲームを有利に進めるための課金で、60万円も使ったという子どもがいました。いったんのめり込むと歯止めが利かなくなってしまうんです。ゲームやSNSなどネットの世界に熱中している子どもたちには、リアルな人間の良さを知ってほしい。バーチャルリアリティー(仮想現実)の世界は精巧になってきていますが、やはり人間同士が触れ合うことの楽しさ、喜びには、かないません。

ネット依存にはさまざまな原因がありますが、予防のために家族ができることは、いろいろあります。まずは、親も自分のスマホを少し置いて、子どもと向き合う時間を作ってほしいですね」(遠藤さん)

 エンジェルズアイズのアドレスはhttps://angels-eyes.com/です。

(報道チーム)

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