朝まで20時間、お風呂は3日に1回、視力は0.1に…ゲーム依存症だった私が“脱出”を果たすまで
ゲーム依存症が社会問題となっています。ゲームにハマっていく経緯とは、どのようなものでしょうか。当事者を取材しました。
世界保健機関(WHO)が「ゲーム依存症(障害)」を病気と認めることになり、厚生労働省も調査に乗り出す予定です。かつて、ゲーム依存症の状態を経験した当事者は、どのようにしてゲームにハマり、どうやってそこから抜け出したのでしょうか。「1日20時間、ゲームをやっていたこともある」という男性に体験談を聞きました。
「楽しみ」から「現実逃避の手段」に
取材に応じてくれたのは、長野県出身の白鳥正輝さん(23)です。両親と姉の4人家族。子どもの頃は大人数の中にいるのが苦手で、小学1年の時から不登校気味だったそうです。そんな白鳥さんがコンピューターゲームに初めて触れたのは、小学3年の頃でした。
「ポケモン(ポケットモンスター)がやりたくて、ゲームボーイアドバンスを買ってもらったのが最初でした。でも、最後までクリアすれば終わっちゃうんで、その頃はそんなに長い時間、ゲームをやっていたわけじゃありません」
小学生の頃は、テレビを見たり漫画を読んだりする時間もあったそうですが、中学校に進んだ頃、オンラインゲームを知って生活が一変します。
「オンラインRPGのCMで『基本料金無料』というのを見て、『ちょっとやってみよう』と思いました。パソコンにインストールして始めたら、どんどん新しいストーリーが出てくる。どんなに長く続けても、次々と面白いストーリーが出てくるので、やめられなくなりました」
そのゲームは、1人でプレーする時間もありますが、複数人でプレーしないとゲームが進まない部分もあったそうです。家でパソコンに向かっているのは1人ですが、オンラインでつながった「仲間」と一緒でした。そして、ゲームに熱中する時期がピークを迎えます。
「1日20時間くらいゲームをする日が、1週間ほど続きました。午前中からゲームを始めて、昼、夜…。午後8時くらいから社会人の人たちが参加してきて、夜中12時くらいが一番盛り上がります。朝5時すぎまで続けて、ようやく少し眠る。また昼前に起きて、という感じで、延々と。
ご飯は一応食べていましたが、お風呂は3日に1回くらい。外出はもちろんしません。今では考えられない生活です。ゲームして食べて寝るだけの生活ですから、かなり太りました。現在の体重が90キロですが、当時は115キロくらいありました。目も悪くなりましたね。小学1年の頃は両目とも1.2でしたが、中学を卒業する頃には0.1になっていました」
次から次へと展開するストーリーが面白くて、没頭したというゲーム。しかし、長時間プレーを続けたのには、ゲームそのものの楽しさとは違う理由もあったそうです。
「心のどこかに『学校に行かなきゃ』という気持ちがあるんです。でも行けない。行っていない。ゲームに集中しているとその不安感を忘れることができる。ゲームをやっている時間だけは現実から逃げられる。ゲームはそういう存在でもありました」
終わりのないオンラインゲームの世界が、現実逃避の手段として最適だったのかもしれません。ゲームに没頭して体調や精神状態を崩す人もいる中、白鳥さんはある時、“脱出”を果たします。
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