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宿題代行サービスに頼んだ作文が入賞…「ズルじゃん」「ためにならない」などの声、法的には?

代行業者に依頼した作文などがコンクールで受賞した場合、どのような問題が生じうるでしょうか。宿題代行サービスにまつわる法的問題について、弁護士に聞きました。

宿題代行の法的問題とは?
宿題代行の法的問題とは?

 料金を支払うと代わりに宿題を片付けてくれる「宿題代行サービス」について、SNS上などで話題になっています。小中学生の子どもを持つ親の中には、学校の宿題を代行業者に依頼し、節約した時間を塾の講習や受験対策に使う人もいるようです。

 しかし、夏休みの宿題の定番とも言える自由研究や作文などの代行については、提出された作品をコンクールに出す学校もあることから、「ズルじゃん」「子どものためにならない」「もし賞取ったらどうなるの?」など、さまざまな声が上がっています。

 オトナンサー編集部では、宿題代行サービスにまつわる法的問題について、芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

賞品などを受け取ると、詐欺罪の可能性

Q.そもそも「宿題代行」とそれを請け負う業者に何らかの法的問題はあるのでしょうか。

牧野さん「学校を欺(あざむ)いて『業務妨害』をした、つまり偽計業務妨害罪(刑法233条)が成立するかどうかが問題となります。

刑法233条(信用毀損および業務妨害)では、『虚偽の風説を流布し、または偽計を用いて、人の信用を毀損し、またはその業務を妨害した者は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金』とされています。宿題の提出が直接に成績や内申書に影響する場合、学校の業務に大きな混乱・支障を生じさせたとして偽計業務妨害罪が成立する可能性は否定できません。

さらに、宿題が代行で提出された事実が発覚し、学校が成績評価のやり直しなどを余儀なくされた場合には、学校の業務を妨害されたとして、業者側に民事上の損害賠償請求(民法709条)をすることも考えられます。

また、刑法246条(詐欺)では、『人を欺いて財物を交付させたり、財産上不法の利益を得たり得させることで、10年以下の懲役』とされています。宿題代行業自体に詐欺の可能性はありませんが、宿題の提出により学校側に良い成績や内申書を提出させた場合、『良い成績や内申書』が『財物』や『財産上不法の利益』にあたると解釈されれば、『詐欺罪』成立の可能性もあります。ただ現実問題として、その解釈は難しいと言えるでしょう」

Q.代行による作品がコンクールなどで受賞した場合、法的問題はありますか。

牧野さん「道徳的には問題となりますが、単に受賞(賞状)だけで賞品や賞金を伴わなければ、法的には問題とならないでしょう」

Q.では、賞金などを受け取った場合はどうなるのでしょうか。

牧野さん「受賞で賞金を得た場合、主催者を欺いて賞金を得たことになるので、先述の詐欺罪にあたる可能性があります。学校や親、代行業者も事情を知っていれば、共犯に問われる可能性があります。民事上は、受賞を取り消されれば、賞金は不当利得(民法703条)となるため、主催者へ返還しなければなりません。本人が未成年者の場合は、親が返還責任を負う場合があります」

Q.類似のトラブルについて、過去の事例や判例を教えてください。

牧野さん「宿題代行やコンクールについては、裁判例が見当たりませんが、類似の事例としては、いわゆるゴーストライター騒動が思い当たります。クラシックCDとして、18万枚の大ヒット作、佐村河内氏の『交響曲第1番《HIROSHIMA》」が、実際には新垣隆氏の作品だったという事件です。

この件は、詐欺罪は成立しませんでしたが、既にチケットが販売されていたコンサートが中止に追い込まれたことから、プロモーション会社が佐村河内氏を相手に、損害賠償を求める民事訴訟を起こしました。

さらに、著作権法に抵触する可能性もあります。著作権法121条(著作者名詐称罪)では、『著作者でない者の実名または周知の変名を著作者名として表示した著作物の複製物を頒布した者(レコード会社など)は、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金』とされているため、市販した行為は、著作者名詐称罪に該当する可能性があると言えます。

あまり現実的ではないかもしれませんが、宿題代行に関しても、もし代行業者に作らせた作品を自分の名義で“流通・販売”させたら(例.作文コンクールで賞を取り、それが書籍化された場合など)、同様に著作者名詐称罪に該当する可能性があります」

(ライフスタイルチーム)

牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。