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「人間ドックを受けていればOK」ではない! 健康診断で発見できない高齢者の「喪失」の正体

「社会的フレイル」を防止するべき理由

 年齢とともに心身が衰えて、要介護ではないが虚弱である状態を「フレイル」と呼びますが、健康と同じように、フレイルにも3つの側面があります。肉体的なフレイル(身体の虚弱)、精神的なフレイル(心の張りや認知機能における虚弱)、社会的フレイル(つながりや交流の機会における虚弱)です。そして、最近の研究で、この3つのうち「社会的フレイル」を防止することの重要性が分かってきました。

 東京大学高齢社会総合研究機構の飯島勝矢教授が行った、千葉県柏市の高齢者を対象とした大規模調査(通称「柏スタディ」)では、「毎日1万歩歩くなど積極的に運動しているが、地域との付き合いや交流はない」人と、「運動はしていないけれども、地域との交流が多い」人とでは、前者の方が圧倒的に肉体的なフレイルになった人が多かったという結果が導かれました(もちろん、運動に意味がないというわけではなく、運動もせず他者との交流もないという人よりは、運動をしている人の方がフレイルになるリスクは低くなります)。

 そして、社会的フレイル(つながりの喪失)が精神的フレイル(心の張りの喪失)を引き起こし、それが徐々に肉体的な衰えにつながっていくという、“社会的フレイルをきっかけとしたドミノ倒し”の危険性を指摘しています。

 高齢期の健康維持には、社会的フレイルの防止がポイント。だとすれば、たとえ健康診断で問題がなかったとしても、交流や人間関係を喪失していると、実は肉体的フレイルのリスクを抱えている状態であるということを理解しておく必要があります。

 肉体よりも社会性(交流やつながり)を重視する姿勢が、かえって肉体的な健康につながりやすいというのは興味深いことです。逆に、肉体を鍛えたりケアしたりすることばかりに気を取られていると、社会的フレイルをきっかけに肉体の健康を損なうというのも、一種のパラドックスといえそうです。

 社会的に良好な状態が、精神的に良好な状態を生み出し、結果として疾病または病弱を遠ざけて、肉体的に良好な状態を実現する。その意味では、健康長寿を実現するには、「健康第一」より「社会性第一」を心掛けるのがよいといえるのではないでしょうか。

(NPO法人・老いの工学研究所 理事長 川口雅裕)

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川口雅裕(かわぐち・まさひろ)

NPO法人「老いの工学研究所」理事長、一般社団法人「人と組織の活性化研究会」理事

1964年生まれ。京都大学教育学部卒。リクルートグループで人事部門を中心にキャリアを積む。退社後、2012年より高齢者・高齢社会に関する研究活動を開始。高齢社会に関する講演や執筆活動を行うほか、新聞・テレビなどのメディアにも多数取り上げられている。著書に「年寄りは集まって住め ~幸福長寿の新・方程式」(幻冬舎)、「だから社員が育たない」(労働調査会)、「チームづくりのマネジメント再入門」(メディカ出版)、「速習! 看護管理者のためのフレームワーク思考53」(メディカ出版)、「なりたい老人になろう~65歳から楽しい年のとり方」(Kindle版)、「なが生きしたけりゃ 居場所が9割」(みらいパブリッシング)、「老い上手」(PHP出版)など。老いの工学研究所(https://www.oikohken.or.jp/)。

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