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SNS「マナー守れよ」と怒り噴出! 観光地を悩ませる「ゴミのポイ捨て」に弁護士「犯罪です」 罰則も詳しく聞いた

全国各地の観光地で「ゴミのポイ捨て」が問題視され、SNSでも怒りの声が上がっています。ゴミのポイ捨ての法的問題について、弁護士に聞きました。

現地住民が「ポイ捨て」に悩むケースも…(画像はイメージ)
現地住民が「ポイ捨て」に悩むケースも…(画像はイメージ)

 コロナ禍が明け、全国の観光地ににぎわいが戻る中、マナーを守らない観光客による「ゴミのポイ捨て」が各地で問題視されています。ポイ捨ては、街の景観を損ねるなど、いわゆる「観光公害」の一つとして深刻化しており、現地住民が弊害を被り、対策に苦慮しているケースも少なくないことから、SNSでは「ひどい」「地元の人はうんざりだよね…」「最低限のマナーは守れよ」など怒りの声が上がっていますが、一方で「そもそもポイ捨てって犯罪だよね?」「普通に法律違反では」などの声も聞かれます。

「ゴミのポイ捨て」は“犯罪”に該当するのでしょうか。法的問題について、佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。

懲役刑や「1000万円以下の罰金」の可能性も

Q.ずばり、ゴミを公共の場に「ポイ捨て」する行為は、犯罪に該当しますか。

佐藤さん「ゴミのポイ捨ては犯罪にあたる行為です。具体的には、廃棄物の処理および清掃に関する法律、軽犯罪法、道路交通法、河川法施行令などにより禁止され、違反すると罰則を科されます。

廃棄物の処理および清掃に関する法律は、『何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない』と定めており(同法16条)、空き缶1つ、たばこ1本であっても、継続的に投げ捨て続けるなどの悪質なケースでは処罰される可能性があります。

軽犯罪法は、『川、みぞその他の水路の流通を妨げるような行為』や『公共の利益に反してみだりにごみを棄てる行為』を禁じています(同法1条25号、27号)。

道路交通法は、『道路において進行中の車両などから物件を投げること』等を禁じており、例えば、走行中の車の窓から吸い殻を捨てるような行為は罰せられる可能性があります(同法76条4項5号)。

河川法施行令は、『みだりに河川区域内の土地にごみを捨てたり放置したりすること』を禁じています(同法令16条の4第1項2号)」

Q.ゴミをポイ捨てすると、どのような罰則(刑罰)に処される可能性があるのでしょうか。

佐藤さん「ポイ捨てによって処される可能性のある罰則は、次の通りです。なお、これらの罪に問われ、有罪判決を受ければ前科がつきます。懲役刑であれ、罰金刑であれ、また、執行猶予付きの判決であれ、有罪となれば前科が残ることになります」

【廃棄物の処理および清掃に関する法律違反に問われた場合】

「5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはこれを併科」される可能性があります(同法16条、25条)。

【軽犯罪法違反に問われた場合】

「拘留」(1日以上30日未満の間、刑事施設に拘置する刑)または科料(1000円以上1万円未満の金銭を支払わせる刑)に処される可能性があります(同法1条)。

【道路交通法違反に問われた場合】

「5万円以下の罰金」を科される可能性があります(同法120条1項10号)。

【河川法施行令違反に問われた場合】

「3カ月以下の懲役または20万円以下の罰金」に処される可能性があります(同法令59条)。

Q.全国の観光地で「ゴミのポイ捨て」が深刻化し、問題となっている件についてどう思われますか。

佐藤さん「外から訪れる人にとっては『観光地』ですが、そこに住む人々にとっては日々の暮らしの場です。ポイ捨てにより、景観が害されるばかりか、臭いが出る、カラスや猫などによりゴミが荒らされ、通行や衛生面で支障が出るなど、そこで暮らす人々の日常生活への影響は計り知れないでしょう。

『法は道徳の最小限』といわれており、法で禁じられているということは、個人の良心だけに委ねておくわけにいかず、国が強制してでも禁じなければならない行為ということです。『たかがポイ捨て』と軽く受け止めるのではなく、一つのポイ捨てが周りに及ぼす影響に思いを致し、指定された場所への廃棄やゴミの持ち帰りを徹底しましょう」

(オトナンサー編集部)

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佐藤みのり(さとう・みのり)

弁護士

神奈川県出身。中学時代、友人の非行がきっかけで、少年事件に携わりたいとの思いから弁護士を志す。2012年3月、慶応義塾大学大学院法務研究科修了後、同年9月に司法試験に合格。2015年5月、佐藤みのり法律事務所開設。少年非行、いじめ、児童虐待に関する活動に参加し、いじめに関する第三者委員やいじめ防止授業の講師、日本弁護士連合会(日弁連)主催の小中高校生向け社会科見学講師を務めるなど、現代の子どもと触れ合いながら、子どもの問題に積極的に取り組む。弁護士活動の傍ら、ニュース番組の取材協力、執筆活動など幅広く活動。女子中高生の性の問題、学校現場で起こるさまざまな問題などにコメントしている。

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