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夫に離婚を切り出された59歳主婦、離婚せずに夫の死を待つ「打算」(上)

「早く」「有利に」を両立させたい夫

 それでは、夫は啓子さんに対して具体的にどのような条件で「離婚してほしい」と頭を下げてきたのでしょうか。

A.夫が提示してきた条件で離婚する場合→計5580万円

1.生活費(+5040万円)
毎月20万円を妻が80歳に達するまで。毎月20万円×21年(252カ月)=5040万円。

2.住宅ローン(負担なし)
毎月17万円を完済(12年後)するまで。毎月17万円×12年(144カ月)=2448万円。

3.自宅の維持費(負担なし)
固定資産税・都市計画税として年20万円、修繕積立金・管理費として月5万円を妻が80歳に達するまで(いずれも現在の金額。仮に全期間、金額が変わらないとして)。年80万円×21年=1680万円。

4.年金(+540万円)
結婚期間中に夫が納めた厚生年金の2分の1(=離婚年金分割)。仮に妻が65歳から年金を受給し始めた場合、年金分割によって夫の年金受給額は月3万円減り、妻は3万円増える。妻が80歳まで健在だった場合、月3万円×15年間(65~80歳)=540万円。

5.夫の特有財産(0円)
夫が父親から相続した財産は妻へ分与せず。

6.夫婦の共有財産(0円)
結婚期間中、夫婦で築いた財産(すべて夫名義)は妻へ分与せず。

6.自社株(0円)
夫が経営する会社の株式(夫10割)は妻へ分与せず。

7.自宅の所有権(0円)
夫が所有権の10割を持つ自宅マンションは妻へ分与せず。

8.退職金(0円)
退職金に相当する小規模企業共済は妻へ分与せず。

 つまり、夫は、今の生活を保証する代わりに川上家の財産、会社の株式、自宅の所有権、結婚期間中に築いた財産(小規模企業共済含む)を見逃してほしいと言っているのです。夫の提示してきた条件はあまりにも不誠実で身勝手、そして自分中心の内容。啓子さんが私のところへ相談に来た時、あまりのショックにあごをがくがくと震わせ、唇は青白く、そして時折、涙を浮かべていました。

 夫は「離婚は早ければ早いほどよい」「渡す金は少なければ少ないほどよい」という、一挙両得をもくろんでいるのですが、そんな虫のいい話が通用するでしょうか。まさに、「二兎を追う者は一兎をも得ず」。早く離婚するなら条件面で妥協しなければならないし、妥協したくなければ離婚が遅れるのが常です。

 つまり「早く」「有利に」を両立するのは不可能であり、死ぬまでに離婚したい夫は、とにかく急いでいるのだから、啓子さんが納得する条件を用意しなければならず、それが自分にとって不利な内容であっても致し方ないのですが、何も分かっていなかったようで……。

※「下」に続く

(露木行政書士事務所代表 露木幸彦)

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露木幸彦(つゆき・ゆきひこ)

露木行政書士事務所代表

1980年12月24日生まれ。いわゆる松坂世代。国学院大学法学部卒。行政書士・ファイナンシャルプランナー(FP)。金融機関の融資担当時代は住宅ローンのトップセールス。男の離婚に特化し行政書士事務所を開業。開業から6年間で有料相談件数7000件、公式サイト「離婚サポートnet」の会員数は6300人を突破し、業界最大規模に成長させる。他で断られた「相談難民」を積極的に引き受けている。自己破産した相手から慰謝料を回収する、行方不明になった相手に手切れ金を支払わせるなど、数々の難題に取り組み、「不可能を可能」にしてきた。朝日新聞、日本経済新聞、ダイヤモンドオンライン、プレジデントオンラインで連載を担当。星海社の新人賞(特別賞)を受賞するなど執筆力も高く評価されている。また「情報格差の解消」に熱心で、積極的にメディアに登場。心理学、交渉術、法律に関する著書を数多く出版し「男のための最強離婚術」(7刷)「男の離婚」(4刷、いずれもメタモル出版)「婚活貧乏」(中央公論新社、1万2000部)「みんなの不倫」(宝島社、1万部)など根強い人気がある。仕事では全国を飛び回るなど多忙を極めるが、私生活では30年以上にわたり「田舎暮らし」(神奈川県大磯町)を自ら実践し「ロハス」「地産地消」「食育」の普及に努めている。公式ブログ(https://ameblo.jp/yukihiko55/)。

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