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夫に離婚を切り出された59歳主婦、離婚せずに夫の死を待つ「打算」(上)

夫は何を仕出かすか分からないタイプ

「結婚生活がうまくいかなかった原因は自分にもあります。円満に離婚が成立した場合、自分はできる限りの対応をさせていただきたい」

 川上啓子さんが、夫(豊さん)から切り出されたのは1カ月前のこと。もともと、夫は自分の思い通りにならないと何を仕出かすか分からない危険極まりない性格で、ささいなことでもキレやすく、手がつけられない厄介この上ないタイプ。啓子さんは、35年という長きにわたり虐げられてきたのですが、何を言われようと「はい、はい」と事なかれ主義を貫いてきたのは、夫と結婚していれば老後の生活は安泰だからです。

 子どもたちが自立して以降、夫は毎月20万円の生活費を入れてくれたのですが、夫は会社(川上建設)経営者なので生涯現役。元気で働いているうちは同額の生活費を渡してくれるでしょう。自宅マンションの住宅ローンはまだ2500万円ほど残っていますが、退職金代わりに小規模企業共済へ加入しており、現在の掛け金は約2500万円なので、夫が現役を引退したら、共済金で住宅ローンを完済し住居費はゼロ。

 さらに、夫の厚生年金(月16万円)と個人年金(月3万円)、自分の国民年金(月6万円)があれば大丈夫という算段だったのです。しかし、「離婚」となれば、啓子さんの人生設計は根底から覆ってしまいます。

 しかも、夫は過去に脳梗塞(こうそく)で倒れたことがあり、医者からは「次はない」と言われている状況。命の危険と隣り合わせの中、決して余生は長くないのに、どうして離婚に踏み切ろうとしたのでしょうか。

 啓子さんには心当たりがあったそうです。まず、夫は創業者ではなく二代目社長。父親が立ち上げた会社を受け継いだのですが、自社株の10割を夫が持っています。父親は12年前に他界したのですが、夫は一人っ子なので実家の遺産の半分以上を相続したようです。具体的には、代々守ってきた実家の土地と建物、墓や駐車場、そして父親が生前に築いた預金や証券、ゴルフクラブの会員権など5000万円相当の財産。

 夫に万が一のことがあった場合、夫名義の財産のうち、啓子さんが2分の1を相続するのですが、夫婦で築いた財産だけでなく川上家の財産も「社長の妻」に渡るのです。だから、夫は死期が近づくと目に見えない不安にさいなまれ、疑心暗鬼に陥ったのでしょう。

 自分が目を光らせている間はよいですが、あの世に旅立ったら、妻が会社を乗っ取るのではないか、実家を売り払うのではないか、そして、退職金で遊びまくるのではないか…何より母親を追い出すことを心配しており、老い先短いからこそ「戸籍上の妻」がいると困るというわけです。

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露木幸彦(つゆき・ゆきひこ)

露木行政書士事務所代表

1980年12月24日生まれ。いわゆる松坂世代。国学院大学法学部卒。行政書士・ファイナンシャルプランナー(FP)。金融機関の融資担当時代は住宅ローンのトップセールス。男の離婚に特化し行政書士事務所を開業。開業から6年間で有料相談件数7000件、公式サイト「離婚サポートnet」の会員数は6300人を突破し、業界最大規模に成長させる。他で断られた「相談難民」を積極的に引き受けている。自己破産した相手から慰謝料を回収する、行方不明になった相手に手切れ金を支払わせるなど、数々の難題に取り組み、「不可能を可能」にしてきた。朝日新聞、日本経済新聞、ダイヤモンドオンライン、プレジデントオンラインで連載を担当。星海社の新人賞(特別賞)を受賞するなど執筆力も高く評価されている。また「情報格差の解消」に熱心で、積極的にメディアに登場。心理学、交渉術、法律に関する著書を数多く出版し「男のための最強離婚術」(7刷)「男の離婚」(4刷、いずれもメタモル出版)「婚活貧乏」(中央公論新社、1万2000部)「みんなの不倫」(宝島社、1万部)など根強い人気がある。仕事では全国を飛び回るなど多忙を極めるが、私生活では30年以上にわたり「田舎暮らし」(神奈川県大磯町)を自ら実践し「ロハス」「地産地消」「食育」の普及に努めている。公式ブログ(https://ameblo.jp/yukihiko55/)。

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