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新型コロナ「BA.2.75」は新たな脅威? 別名“ケンタウロス”は正式な名前?

新型コロナウイルスで主流になりつつあるのがオミクロン株の「BA.5系統」です。一方で、また違う系統の「BA.2.75」が「ケンタウロス」なる別名でも呼ばれています。それぞれの特徴を専門家に聞きました。

「BA.5対策強化宣言」について記者会見を行う塩田康一鹿児島県知事(2022年8月、時事)
「BA.5対策強化宣言」について記者会見を行う塩田康一鹿児島県知事(2022年8月、時事)

 新型コロナウイルスの感染が再拡大する中、主流になりつつあるとされるのがオミクロン株の「BA.5系統」です。一方で、また違う系統の「BA.2.75」が「ケンタウロス」なる別名でも呼ばれ、さらに感染力が強いのでは、と言われています。それぞれどのように違い、どう注意すればよいのでしょうか。医療ジャーナリストの森まどかさんに聞きました。

“ケンタウロス”はあだ名のようなもの

Q.「株」と「系統」の位置づけの違いを改めて教えてください。

森さん「新型コロナウイルスは感染が拡大、長期化する過程で大小の変異を重ねています。中国の武漢で最初に報告されたオリジナル(従来株)に対し、変異によって感染・伝播性、重症化リスク、ワクチン・治療薬の効果など性質の一部に影響を及ぼすような場合、新たなグループ『変異株』として分類されます。さらに細かく、同じ株であっても変異の箇所が異なるものが枝分かれしていきます。これが『系統』といわれている分類です。

こうした分類は『PANGO(パンゴ)系統』という新型コロナウイルスの遺伝子系統を識別するための国際的な系統分類命名システムによるもので、例えば一般的に『オミクロン株』と呼ばれている変異株は、PANGO系統では『B.1.1.529』と名付けられ、その下位系統(枝分かれ)に、BA.1(B.1.1.529.1)、BA.2(B.1.1.529.2)、BA.3(B.1.1.529.3)などが位置づけられています。これらは共通する部分が多いものの、それぞれの系統で特徴的な変異が見られます。

ちなみにオミクロン、デルタといったギリシャ文字を使用した変異株の名称は、世界保健機関(WHO)が『懸念される変異株(VOC)』に指定したものに対して、WHOの命名システム(WHOラベル)によって名付けられています」

Q.「BA.2」と「BA.2.75」、「BA.5」の違いを教えてください。

森さん「(新型コロナウイルスの表面にある)スパイクタンパク質に起きた変異がそれぞれ異なり、変異の箇所によっては免疫逃避につながる可能性や、感染・伝播性を高める可能性が生じます。

BA.5は、BA.2より感染が広がりやすい上に、ワクチンや過去の感染で得た免疫を回避する能力(免疫逃避)が高い可能性が指摘されています。京都大学の西浦博教授らの分析では、BA.5はBA.2の1.27倍速く感染が広がっていると推計されています。海外でも各国で差があるものの感染が広がる速さは同様に速いと考えられています。重症度の上昇につながる証拠は報告されていません。

BA.2.75はBA.2から派生した系統で、BA.2から派生した75番目のものとしてBA.2.75と名付けられています。BA.2に対してスパイクタンパク質に9つのさらなる変異があります。今年6月にインドで最初に報告され、世界27カ国(8月9日現在)で確認されています。

インドでBA.2.75はBA.5の3.24倍の速さで広がったというアメリカ・アーカンソー州立大学の報告がありますが、BA.5が感染の主流となっている国においてBA.2.75の割合が上昇したのはインドのみであり、ほかの系統と比較してどのような性質かはまだ明らかになっていません。

免疫逃避の可能性(ワクチンの効果が下がる可能性)も示唆されています。これまでの分析では、流行が急拡大する可能性は低いと考えられていますが、現時点では情報が少ないため、今後の動向を注視する必要があります」

Q.「BA.5」が流行する中、「BA.2.75」が注目されているのはなぜでしょうか。

森さん「WHOが『懸念される変異株(VOC)』に指定したオミクロン株のうち、いくつかの系統が公衆衛生上のリスクを持つ可能性が考えられ、『懸念される変異株における監視下の系統(VOC-LUM)』とされ、各国に調査が呼びかけられています。

BA.2.75もVOC-LUMに指定されたことで警戒が強まったと考えられます。スパイクタンパク質で多くの変異部位が報告されていることも、注目されている理由の一つでしょう」

Q.「BA.2.75」に「ケンタウロス」という別名が付いた理由を教えてください。

森さん「『ケンタウロス』というのは、単なるあだ名のようなものです。変異部位が多くBA.2系統の中でも特殊であることから、ギリシャ神話に登場する半人半獣の『ケンタウロス』に例えた人がいて、ツイッターで広がったという説がありますが、真偽は分かりません。

この別名によって不安が増す人や先入観を持つ人もいると考えられ、あえて別名を使用する必要はないと思います」

Q.「BA.2.75」が流行する可能性も踏まえての対策を教えてください。

森さん「感染対策はこれまでと変わりません。BA.2.75の動向によっては、現在『高止まり』といわれているBA.5の流行から、引き続きBA.2.75が感染拡大することも可能性としては考えられます。

症状の特徴や重症化の割合などの情報をチェックしながら、『換気』『人との距離を保つ』『会話する場面や、人が密集する場面での不織布マスクの着用』『手洗い』『ワクチン接種』など、基本的な感染対策を継続することが大切です」

(オトナンサー編集部)

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森まどか(もり・まどか)

医療ジャーナリスト、キャスター

幼少の頃より、医院を開業する父や祖父を通して「地域に暮らす人たちのための医療」を身近に感じながら育つ。医療職には進まず、学習院大学法学部政治学科を卒業。2000年より、医療・健康・介護を専門とする放送局のキャスターとして、現場取材、医師、コメディカル、厚生労働省担当官との対談など数多くの医療番組に出演。医療コンテンツの企画・プロデュース、シンポジウムのコーディネーターなど幅広く活動している。自身が症例数の少ない病気で手術、長期入院をした経験から、「患者の視点」を大切に医師と患者の懸け橋となるような医療情報の発信を目指している。日本医学ジャーナリスト協会正会員、ピンクリボンアドバイザー。

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