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結婚後に“隠し子”発覚! 離婚歴や子どもの有無のうそ、罪に問える? 弁護士に聞く

結婚した相手に、婚姻歴や子どもの有無について「うそ」をつかれていた――。いわば「だまされて結婚」してしまった場合、うそをついていた側に法的責任は生じるのでしょうか。

結婚した相手の「重大なうそ」が発覚したら…
結婚した相手の「重大なうそ」が発覚したら…

 歌手の華原朋美さんが、「2021年8月に結婚した夫が、婚姻歴や子どもの有無を偽っていた」という報道について認め、話題となっています。報道によると、華原さんは夫からプロポーズをされた際、「結婚歴、離婚歴、隠し子について『そういうことは全くない』と聞いていた」にもかかわらず、実際は離婚歴があり、前妻との間に3人の子どもがいることが発覚し、「もし3つあったのならば、私は結婚しませんでした」と心情を吐露。結婚時、夫から戸籍謄本を見せてもらったそうですが、それも後に実情と違うことが分かったといい、「私はだまされて結婚してしまった」と語っています。

 これについて、ネット上では「あまりにもひどい話」「こんな大事なことを隠していたなんて信じられない」「立派な詐欺じゃん」「私なら訴える」など、同情や怒りの声が上がっています。婚姻歴や離婚歴、子どもの有無を詐称して結婚した相手に、法的な問題は生じるのでしょうか。佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。

「婚姻の取り消し」「裁判上の離婚」要求できるが…

Q.仮に、結婚前、相手に婚姻歴・離婚歴や子どもの有無についてうそをつかれ、それに気付かず納得した上で結婚し、婚姻届を提出した後に事実と異なることが判明した場合(つまり“だまされて結婚した”場合)、相手に何らかの法的責任が生じることは考えられますか。

佐藤さん「婚姻歴や子どもの有無についてうそをついたとしても、それだけで直ちに法的な問題が生じることはありません。例えば、詐欺罪は、うそをついてお金などをだまし取った場合に成立する犯罪であり、うそをついただけでは罪に問うことができません。また、一般に再婚の際、婚姻歴や子どもの有無について相手に伝えなければならない義務があるとはいえないため、うそをついたという事情のみでは、民事上も違法性が認められない可能性が高いです。

しかし、『初婚であること』や『子どもがいないこと』をあらかじめ宣言し、それを重要な条件として結婚したカップルもいるでしょう。その場合、『詐欺による婚姻の取り消し』(民法747条)や『裁判上の離婚』(民法770条)ができる可能性はあるでしょう。ただし、詐欺による『婚姻の取り消し』が認められるハードルは相当高く、また、『裁判上の離婚』についても、うそをつかれただけで認められる可能性は低いです。うそをつかれたために、互いの信頼関係が崩れ、別居期間も相当あるなど、その他の事情も含めて婚姻関係の破綻が認められれば、だました相手が望んでいなくても、裁判上、離婚できることになります」

Q.うそがバレたタイミングが「婚約前」か「婚約後」かで、何か違いはあるのでしょうか。

佐藤さん「婚約前にうそがバレた場合、法的問題は何も生じません。婚約前は自由恋愛ですから、相手に婚姻歴があることや、子どもがいることが分かって、交際を継続したくなくなったなら別れればよいからです。

婚約が成立すると、2人の関係が法的に保護されることになり、『正当な理由』なく婚約を破棄すれば相手から慰謝料などを求められることがあります。婚姻歴や子どもの有無についてうそをつかれたことが、『正当な理由』に当たるかどうかですが、一般に、婚姻するかどうかは、婚姻歴の有無や子どもの有無だけで決めるものではないと考えられ、たとえうそをつかれていたとしても、婚姻するのが困難とまではいえないとして、認められない可能性が高いでしょう。

ただし、例えば、子どもに対して多額の養育費を負担しており、再婚後の生活設計に大きな影響を及ぼすことが発覚したケースや、先述のように、『初婚であること』や『子どもがいないこと』を重要な条件として婚約したようなケースでは『正当な理由』と認められ、慰謝料などを支払うことなく、婚約を破棄できる可能性があります」

Q.うそをついた相手に対し、慰謝料の請求は可能ですか。

佐藤さん「慰謝料を請求すること自体は可能です。ただし先述したように、婚姻歴や子どもの有無について、うそをついただけで直ちに違法性が認められるわけではなく、慰謝料の請求が認められるケースは限られると思います。例えば、裁判上の離婚が認められた場合に、うそをついたことだけでなく、他にも相手にいろいろな問題があることが明らかになり、それらを総合的に考慮して慰謝料が認められる可能性はあるでしょう。

なお、うそをつかれただけだと、慰謝料が認められること自体少ないように思うので、仮にうそをつかれただけで慰謝料が認められたとしても、金額はかなり低額だと思います」

Q.このような夫婦間のトラブルを未然に防ぐために、知っておくとよいこととは。

佐藤さん「『初婚であること』や『子どもがいないこと』が重要である場合には、事前に相手の戸籍を確認することが大切です。ただし、相手が転籍したために、現在の相手の戸籍を確認しただけでは、離婚歴や子どもの存在が分からないこともあります。転籍したとしても、過去の戸籍には離婚歴や子どもの記載が残っているので、心配な場合には、過去の戸籍までさかのぼって確認するとよいでしょう」

(オトナンサー編集部)

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佐藤みのり(さとう・みのり)

弁護士

神奈川県出身。中学時代、友人の非行がきっかけで、少年事件に携わりたいとの思いから弁護士を志す。2012年3月、慶応義塾大学大学院法務研究科修了後、同年9月に司法試験に合格。2015年5月、佐藤みのり法律事務所開設。少年非行、いじめ、児童虐待に関する活動に参加し、いじめに関する第三者委員やいじめ防止授業の講師、日本弁護士連合会(日弁連)主催の小中高校生向け社会科見学講師を務めるなど、現代の子どもと触れ合いながら、子どもの問題に積極的に取り組む。弁護士活動の傍ら、ニュース番組の取材協力、執筆活動など幅広く活動。女子中高生の性の問題、学校現場で起こるさまざまな問題などにコメントしている。

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