運動会シーズンの5月、6月こそ要注意! 子どもが熱中症になったときはどうする?
子どもに熱中症とみられる症状が出た場合、どのように対処すればよいのでしょうか。専門家に聞きました。
「熱中症」と聞くと、7月から8月にかけて注意すべきものだと思う人が多いと思いますが、毎年5月から6月にかけて、小学校や中学校で運動会が行われることも多く、運動会の練習中に子どもが熱中症とみられる症状で救急搬送されるケースも珍しくありません。夏を待たず、早めに熱中症対策をすることが大切です。子どもが熱中症とみられる症状になった場合、どのように対処すればいいのでしょうか。たけつな小児科クリニック(奈良県生駒市)の竹綱庸仁(たけつな・のぶひと)院長に聞きました。
まずはスポーツドリンクなどを飲ませる
Q.ネット上では、「子どもは熱中症になりやすい」といった声があります。そもそも、子どもは大人に比べて、本当に熱中症になりやすいのでしょうか。
竹綱さん「結論から言うと、子どもと大人を比較した場合、子どもの方が熱中症を起こしやすいと考えられます。
東京消防庁の調査によると、2020年6月から9月の10万人当たりの熱中症による救急搬送者数を年代別に比較したところ、10代の人は、20代から50代の人よりも救急搬送されるケースが多かったことが報告されています。また、気温が30度以上になると、搬送者が急激に増えます。近年は5、6月でも30度を上回る日が増えたので、子どもは特にですが、大人も注意が必要です」
Q.なぜ10代の子どもは熱中症になりやすいのでしょうか。
竹綱さん「10代の子どもが大人よりも熱中症になりやすい理由としては、(1)大人と比べて体温調節機能が未熟(2)活動強度の差(3)水分摂取の関心の有無―の3点が大きな理由です。
(1)の体温調節機能の未熟性については、容易に想像できると思います。(2)については、一般的に子どもの方が公園で遊んだり、部活でスポーツをしたりと、体を動かす機会が多く、汗をかく頻度が高くなるためです。(3)の水分摂取の関心の有無については、子どもはそもそも熱中症という概念を持ち合わせていないことが多いため、自分が興味あることに夢中になり、水分を摂取するという発想に至りません。これら3点が、子どもが大人よりも熱中症にかかるケースが多いと考えられる原因です。
ただし、大人でも、1人暮らしの高齢者は、在宅時に『エアコンが苦手』『電気代がかかる』といった理由で冷房を使わずに暑さを我慢しがちなことや、生活時の活動強度が低く、トイレに行く回数を減らすために水分摂取を控えてしまうなどの点から、熱中症を引き起こすこともしばしば見受けられます」
Q.子どもが熱中症になったかどうかを見分ける方法について、教えてください。
竹綱さん「熱中症は、体内の水分や塩分の喪失により起こるため、『異常に汗をかいている』『尿が出ていない(トイレの回数が少ない)』『体温が高い(体が熱い)』『ぐったりしている』などの症状がある場合、熱中症が考えられます。
ただし、子どもは急激に症状が悪化することも多く、今まで元気に遊んでいたのに急激にぐったりすることもまれではないため、子どもの全身の状態を小まめに確認することが重要です。特に、6月から7月の梅雨時期はもともと湿度が高く、汗をかいているのか、湿度が高いために皮膚が湿っているのか判断が難しくなります」
Q.子どもが熱中症とみられる症状になった場合、どうすればよいのでしょうか。受診や救急要請の目安も含めて教えてください。
竹綱さん「先述のように、体温が高く、多量の汗をかいており、ぐったりしているようであれば熱中症を疑う必要があります。まず、塩分と糖分の入っている飲み物(経口補水液やスポーツドリンクなど)を摂取できるかどうかを確認し、少量でも水分が摂取でき、その後、尿が出たのであれば、体を冷やしながら経過を見ても問題ありません。
ただし、水分が摂取できていたとしても、『ぐったりした状態が持続している』『尿が出ない』『嘔吐(おうと)を繰り返して、その後、水分が摂取できない』といった状態であれば、体に必要な水分が不足している可能性があるため、早急に小児科を受診するようにしましょう。熱中症が重症化すると、手足がけいれんしたり、意識がなくなったりすることがあり、この状態では命の危険もあるため、輸液(血管から水分や電解質、栄養を補給すること)などの専門的な治療が必要になります。すぐに救急要請し、適切な治療を受けることが重要です。
従って、子どもが熱中症になっている可能性があれば、『少し休ませて様子を見れば大丈夫』と安易に考えるのではなく、小まめな水分摂取とともに、早めの受診を心掛けましょう」
Q.5月から6月にかけて、子どもの熱中症を防ぐための対策について、教えてください。晴れた日は帽子をかぶらせた方がよいのでしょうか。
竹綱さん「気象庁がホームページで公表している、過去の5月、6月の気温、湿度のデータを比べると、例年、平均気温の差はあまりないものの、6月に入ると平均湿度が急激に上昇するため、体温調節機能が未熟な子どもは、5月と同じ衣服を着ていたときなどに熱中症に陥りやすくなると考えられます。さらに、子どもは『自分が熱中症になるかもしれない』という考えがないことが多いため、家族や大人が子どもの体調を小まめに観察しておくことが熱中症の予防に不可欠です。
先述のように、熱中症は水分や塩分が失われることで発症するため、体温管理をする意味で帽子をかぶることは熱中症対策に有効です。帽子は手軽に着脱可能で、運動をするときにも邪魔にならないというメリットがあります。また、帽子以外の熱中症対策として、通気性の良い服を着たり、首の太い血管を冷却するために、保冷剤入りのスカーフを首に巻いたりするのもよいでしょう」
(オトナンサー編集部)
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