「水ぼうそう」子どもの発症が多い2つの理由とは? 発疹の痕が残ることも? 小児科医が解説
子どもがかかりやすい病気として知られる「水ぼうそう」。基本的な症状や、発疹の痕を残さずに治す方法、なぜ大人より子どもの発症が多いのかについて、小児科医が解説します。
毎年、冬から春先にかけて感染者が増加する「水ぼうそう(正式名称は『水痘』)」。子どもがかかりやすい感染症として広く知られています。流行する季節になると心配する親も多いようで、「うちの娘は保育園で流行したときにかかりました」「発熱とかゆみでかわいそうだった」といった体験談をはじめ、「重症化することもあるって聞いたけど…」「発疹の痕が残ることもあるって本当?」など、症状に関する疑問の声も上がっています。
子どもが感染しやすい「水ぼうそう」の症状や、痕を残さない治し方について、たけつな小児科クリニック(奈良県生駒市)の竹綱庸仁(たけつな・のぶひと)院長に聞きました。
強い感染力と、発疹の「かゆみ」が特徴
Q.そもそも、「水ぼうそう(水痘)」とはどんな病気ですか。
竹綱さん「水ぼうそうは、『水痘・帯状疱疹(ほうしん)ウイルス』が体内に侵入し、増殖することで発症します。潜伏期間はおおむね2週間です。流行のピークは冬ですが、通年性でみられる感染症で、私自身は実際に小学校3年生の夏にかかって、プールに入れなかった苦い記憶があります。
感染経路は空気感染です。比較的感染力が強く、家族やクラスで感染者が出た場合には、約2週間の間隔を置いて、接触した子どもが水ぼうそうになるケースも多くみられます。発症年齢は小学校低学年以下が多いですが、現在、水ぼうそうの予防接種が定期化され、多くの子どもが1歳で予防接種を行うため、以前と比べると、患者数は減少傾向にある印象です」
Q.水ぼうそうの症状について教えてください。
竹綱さん「ほとんどの症例で発疹(水疱)が出現し、その多くがかゆみを伴います。発熱は全ての患者さんに出現するわけではありません。小児期に発症する水ぼうそうの多くは軽症で、抗ウイルス薬の内服などで回復することがほとんどですが、かゆみが強く、発疹部に細菌が付着して、『とびひ』と一般的に呼ばれている『伝染性膿痂疹(のうかしん)』という皮膚病を合併したり、ごくまれに脳梗塞といった重度の合併症を引き起こしたりすることがあります」
Q.水ぼうそうは「子どもの病気」というイメージがありますが、子どもの発症が多いのはなぜですか。
竹綱さん「明確な理由を挙げるのは難しいですが、(1)ウイルスの感染力と免疫機能の差(2)感染経路と生活環境―の2点が、成人と子どもの罹患(りかん)率の差の原因と考えられます。
(1)については、子どもは成人と比べて免疫機能が未熟なため、ウイルスが体内に侵入した際に、子どもの方がウイルスの活性が高くなり、発症頻度が高くなると考えられます。(2)の感染経路については、インフルエンザやアデノウイルスといった感染症は、くしゃみなどの飛沫(ひまつ)物を吸うことで感染が成立する一方で、水ぼうそうは飛沫物の水分が蒸発した際に、残存粒子が空気中を漂って感染するため、園や学校など、成人と比べて密度の高い集団生活を送っている子どもの方が、感染が成立しやすいことが考えられます」
Q.「水ぼうそうは、子どものうちにかかっておいた方がよい」という意見も聞かれますが、実際はどうなのでしょうか。
竹綱さん「先述のように、水ぼうそうは発症時に発熱を伴う場合があります。子どもは成人と比較し、発熱には強いため、38度以上の発熱でも元気な子は多くみられますが、成人では37度を少し超える微熱でも倦怠(けんたい)感が出る場合があり、周囲の印象として『子どもの頃にかかっておく方がよい』と感じることがあるのではないでしょうか。
ただし、水ぼうそうのウイルスは発症後、回復しても体内の神経節に潜伏します。体力や免疫状態が低下した際に、潜伏しているウイルスが再活性化し、『帯状疱疹』を引き起こすこともあります。低年齢で水ぼうそうにかかることで、帯状疱疹の発生リスクを高める可能性もあり、一概に『子どものころにかかった方がいい』とは言い難いと思います」
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