「熱」が出ても元気そうな子とぐったりしてしまう子、違いは? 親の注意点も解説
子どもが「熱」を出しても、元気そうに見えることがあります。なぜなのでしょうか。医師に聞きました。

子どもが「熱」を出した場合、ぐったりした表情を見せることが多いようですが、中には、かえって元気そうに見える子もいるようです。子どもが一見元気な場合、親は子どもが健康だと勘違いして発熱を見逃してしまう可能性もあり、「あまりに元気過ぎて様子がおかしいので、熱を測ったら、高熱を出していた」というケースもあります。
熱が出ても活発な子とぐったりする子は、何が違うのでしょうか。また、子どもの発熱のサインを見逃さないために、親はどのような点に気を付けるべきなのでしょうか。たけつな小児科クリニック(奈良県生駒市)の竹綱庸仁(たけつな・のぶひと)院長に聞きました。
年齢や菌・ウイルスの違いが要因
Q.子どもが熱を出した場合、ぐったりした表情を見せる子もいれば、かえって元気そうに見える子もいます。熱が出るとぐったりする子と活発になる子は、何が違うのでしょうか。
竹綱さん「発熱時にぐったりしていて元気がない子どもと、元気そうに見える子どもの差については、幾つかの要因があると考えられます。
1つ目は、発熱している子どもの年齢です。『子どもは熱に強い』と言われており、仮に40度の発熱があったとしても、元気な子どもはよくいます。小児科では、37度5分以上ある場合は発熱と判断しますが、大人は誰でも経験しているように、37度を少し超えただけで気だるくなることも少なくありません。年齢が低いほど、熱に対する抵抗力が強く、比較的元気な場合が多いです。
2つ目は、感染する菌やウイルスの種類です。発熱を起こす原因菌は大きく分けて、細菌とウイルスの2つに分類されます。溶連菌や肺炎球菌を代表とする細菌は喉や肺など一部の臓器に感染し、仮に発熱したとしても、喉の痛みやせきなどの風邪症状を合併するのみで、比較的、子どもが元気な場合が多いです。一方、インフルエンザやノロウイルスを代表とするウイルスは感染すると血液を介して、多くの臓器に負担がかかるため、37度後半の微熱であったとしても、元気がなくなってしまう場合も多くみられます。
3つ目は、発熱時に十分な水分摂取が可能かどうかです。子どもは熱よりも脱水に非常に弱く、水分が取れなければ、微熱でもぐったりする場合はよくあります。中には喉が痛くなり、水が飲み込めないという子どももいますが、水分が取れなくなるケースの多くは、ノロウイルスやロタウイルスによる胃腸炎にかかり、嘔吐(おうと)や下痢を繰り返す場合です。水分が十分に摂取できなくなると、微熱の場合はもちろん、平熱でもぐったりするケースが多く見られます。
体の状態とは無関係な要因ですが、4つ目を挙げると、子どもの看病のために家族が家にいることです。保育園や幼稚園に通う子どもが発熱した場合、園を休んで、家族と一緒に過ごす時間が増えます。その場合、『家族と一緒に過ごせる』という安心感から、高い熱が出ていたとしても元気そうに見える子どももいます」
Q.発熱時に子どもが元気そうだった場合、親は子どもが健康だと勘違いをして、発熱のサインを見逃すと思います。そうならないためにも、子どもが発熱前に出すサインや、親が子どもの言動で気を付けるべき点について教えてください。
竹綱さん「子どもは突発的に発熱する場合も多く、発熱前のサインを見抜くことは困難です。ただし、せきや鼻水、下痢などの症状があった場合、数日後に熱が出ることもあり、少なくとも風邪の症状が出ているときは、発熱も視野に入れておく必要があると思います。
なお、非接触型の体温計や鼓膜で測定する体温計は測り方によって、本来よりも体温が低く出ることもあり、注意が必要です。では、どのように発熱があるか見極めるかというと、触ったときに熱く感じるかどうかです。特に、おなかに手を当てて、おなかの芯からじわっと熱が伝わってくる場合、平熱であっても、その後に発熱するケースが多くみられます。
子どもの言動について、『普段よりも元気がない』『普段よりも食欲がない』といった場合は、後に発熱することもあるので、注意してください。また、胃腸炎や溶連菌に感染した場合、感染者の約3割が発熱前に頭痛が認められるため、突然、頭痛を訴えた後、発熱する場合も多く、元気のあるときの頭痛に関しても注意が必要です」
Q.子どもが38度5分以上の熱を出したときは、すぐに解熱鎮痛剤を使うべきなのでしょうか。それとも、少し様子を見た方がよいのでしょうか。
竹綱さん「先述のように、子どもは比較的熱に強いため、仮に39度を超えた熱があったとしても元気な場合があります。熱は、ウイルスや細菌を体の中から排除しようとする免疫機能の一種なので、感染中の体にとっては必要なものといえます。従って、仮に38度5分を超えた場合でも、子どもが比較的元気であれば、すぐに解熱剤を使用する必要はありません。
ただし、仮に37度後半の熱であったとしても、水分がしっかり取れていないときや元気がない、ぐったりしているなど、普段とは異なる状態の場合、迷わず、解熱剤を使用すべきです。中には『38度を超えたら、すぐに解熱剤を使用する』といった認識で解熱剤を使う人、『解熱剤を使用すると、感染からの回復が遅れる』と考えて使用を避ける人もいますが、それらは誤りです。解熱剤は子どもの全身の状態を見ながら使用してください。
また、解熱剤は同時に鎮痛効果もあります。多くの場合、発熱時の解熱剤として使用するため、『発熱がないと、鎮痛剤として使用できない』と誤解する人もいますが、大人が頭痛時に飲む場合と同様、子どもが頭痛や関節痛、腹痛、喉の痛みを訴えた場合、たとえ熱がなくとも、解熱剤を鎮痛剤として使用して問題ありません」
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