オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

「有休買い取りは原則不可」はなぜ? 例外で買い取り可「3つのケース」とは?

例外あるが、会社に義務なし

Q.ただ、例外があるとも聞きます。有休買い取りができる例外を教えてください。

木村さん「『労働者が心身の疲労を回復し、ゆとりのある生活を保障するための休暇を与える』という有休の趣旨に反する場合でなければ、有休の買い取りは認められています(義務ではありません)。

具体的には、次の(1)から(3)のケースになります。いずれも、制度として運用する場合には、就業規則への明記が必要です」

(1)退職時に有休の未消化分がある場合。退職に伴う業務引き継ぎなどの理由で有休を全部取得できなかった場合、退職後は有休の消化ができないため、労働者と企業が合意すれば買い取りは可能です。

(2)企業が福利厚生の一環として労働者に法定日数を超える有休を付与している場合、法定の有休日数を上回った分については買い取りが可能です。例えば、法定の有休付与日数が10日間の労働者に20日間を付与し、年間で8日分を消化した場合、法定の有休付与分の2日についての買い取りは不可ですが、法定を上回る基準で付与された10日分の買い取りは可能です。

(3)2年の時効到来後、消滅した有休を買い取ること。ただし、この場合、企業の考えとして『初めから買い取りありき』ではなく、あくまでも労働者が有休を取得しやすいように職場環境を整えることが大切です。

Q.買い取りの額はどのようになっているのでしょうか。

木村さん「企業が労働者の有休を買い取った場合の買い取り額は、法律による定めはないので、企業独自で決定できますが、就業規則への明記が必要です。有休1日あたりの買い取り額は、次のいずれかの方法で計算することが多いです。

(1)有休取得時の賃金に準じて計算する。例えば、月給労働者の場合は月給÷その月の所定労働日数など。ただし、平均賃金や健康保険法に定める標準報酬月額を基準にする場合もあります。

(2)労働者の給与額に関係なく一律で計算する。このケースでは勤務形態によって一律の買い取り額を変えている場合もあります。例えば、社員は全員1日当たり5000円、パートは時給で500円などです。

月給30万円で、月の所定労働日数が20日の社員で、有休買い取り日数が3日の場合、(1)の計算は(30万円÷20日)×3日=4万5000円。(2)の場合、例をそのまま当てはめると、1日あたり5000円×3日=1万5000円になります。

なお、法律による定めがないものですので、最低賃金法の適用もありません」

Q.有休の「最低5日取得」が義務化されて3年たちますが、有休の消化率は上がっているのでしょうか。

木村さん「労働者の有休取得を促進するために、2019年4月1日から、年度10日以上の有休が付与される全ての労働者に対して、企業は毎年最低5日間の有休を取得させることが義務付けられました(労働基準法39条)。

厚生労働省が発表した2021年就労条件総合調査の概要によると、2020年の1年間の労働者の有休取得率は56.6%で、2018年の同52.4%に比べて有休の消化率は上昇し、法律の改定による効果が表れているといえます。

有休の取得促進は、従業員と企業の双方にメリットをもたらします。従業員は有休を取り心身をリフレッシュさせることで労働意欲を高めるだけではなく、家族との触れ合い、趣味や学びを深める、各種ボランティアに参加するなどの生活時間を確保することにより、ワーク・ライフ・バランスの向上を図ることができます。

企業は、従業員が有休を取得しやすいように職場内の業務分担を考えたり、代替要員を確保したり、業務の効率化を進めたりと、労務管理の改善が必要な場合もありますが、有休取得率が100%に近づくほど、従業員が働きやすい会社としてアピールしやすくなり、従業員の定着率の向上や新たな人材の確保へとつなげていくことも可能になるでしょう」

(オトナンサー編集部)

1 2 3

木村政美(きむら・まさみ)

行政書士、社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー

1963年生まれ。専門学校卒業後、旅行会社、セミナー運営会社、生命保険会社営業職などを経て、2004年に「きむらオフィス」開業。近年は特にコンサルティング、講師、執筆活動に力を入れており、講師実績は延べ700件以上(2019年現在)。演題は労務管理全般、「士業のための講師術」など。きむらオフィス(http://kimura-office.p-kit.com/)。

木村政美(きむら・まさみ) 関連記事

もっと見る

編集部おすすめ記事

ライフ 最新記事

ライフの記事もっと見る

コメント

CAPTCHA