オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

「有休買い取りは原則不可」はなぜ? 例外で買い取り可「3つのケース」とは?

働く人の大切な権利、有給休暇。その有休の「買い取り」は原則的にはできないとされますが、なぜでしょうか。一方で、例外もあるようです。社労士に聞きました。

「有休買い取り」は原則禁止、なぜ?
「有休買い取り」は原則禁止、なぜ?

 ゴールデンウイーク期間中の平日だった5月2日、6日に有給休暇(有休)を取り、10連休を楽しんだ人もいることでしょう。有休はきちんと消化して、しっかり休むのが理想ですが、「仕事が忙し過ぎて、有休を取るのが難しい」という人も多いようです。使わなかった有休は、一定期間が過ぎれば消滅してしまうこともあり、「有休を買い取ってほしい」と思う人もいると聞きます。

 しかし、有休の買い取りは原則的にはできないとされます。なぜでしょうか。一方で、例外扱いで買い取り可となる「3つのケース」があるようです。社会保険労務士の木村政美さんに聞きました。

「心身休める機会」確保のため

Q.年次有給休暇の趣旨と、根拠となる法律を教えてください。

木村さん「年次有給休暇(以下『有休』と表記します)は労働基準法39条で定められた休暇です。有休の趣旨は『労働者が心身の疲労を回復し、ゆとりのある生活を保障するための休暇を与える』というものであり、この日は休んでも賃金がカットされることはありません。

ただし有休が付与される労働者には条件があり、(1)勤務開始日から6カ月間継続して雇用されていること(2)全労働日の8割以上出勤していることの2点を両方満たすことが必要です。有休の付与日数は労働基準法で決まっていますが、労働者の勤続年数や1週当たりの勤務日数によって個々に違いがあります。

なお、有休の付与日数は労働基準法で決まっていますが、この決まりはあくまでも『最低基準』としての扱いなので、企業が独自に、法定基準以上の有休を付与することも可能です」

Q.有休が消滅してしまう期限と、なぜ消滅してしまうのか、教えてください。消滅する期限について、会社が独自に延ばすことはできないのでしょうか。

木村さん「有休がいつから付与されるかについては、労働基準法上の原則では、入社日を起算日とし、その日から数えて6カ月後が有休付与日(有休の付与条件を満たしたことにより、有休が発生する日)になります。

例えば4月1日に入社した場合、6カ月後の10月1日が有休付与日となります。その後は、1年ごとに勤続年数に応じた有休日数が新たに付与されます。有休は、付与日から2年が経過すると時効になり、取得できる権利が消滅します(労働基準法115条)。例えば2020年4月1日に20日間の有休が新たに付与された場合、その20日間の有休は2022年3月31日までに全部取得しないと時効で消滅します。

有給休暇の時効が2年である理由は、労働者の有休取得を促進するためです。有休の時効は法律の定めなので、企業が勝手に変えることはできません。ただし、2年間で消化できなかった有休について、会社独自の制度として、一定条件の下で、後で付与することは可能です。

例えば、時効で消滅した有休を、消滅日から2年以内に限り、本人が病気になった場合にのみ上限5日間まで付与できる、などです。ただし、こうした制度を運用する場合は、就業規則への明記が必要です」

Q.「有休が消化できそうにないから、買い取ってほしい」と社員が言っても、原則として禁止と聞きます。なぜ買い取りが原則禁止なのでしょうか。

木村さん「具体的に有休の買い取りを禁止している法律はありませんが、企業が労働者の有休を買い取ることは原則禁止とされており、国が通達を出しています。その理由は、有休の趣旨が、労働者の心身を休めリフレッシュすることで活力を生み出すためのものであり、企業が有休を買い取ることは、労働者からその機会を奪うことになるので、国が定めた趣旨に反する行為になるからです」

1 2 3

木村政美(きむら・まさみ)

行政書士、社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー

1963年生まれ。専門学校卒業後、旅行会社、セミナー運営会社、生命保険会社営業職などを経て、2004年に「きむらオフィス」開業。近年は特にコンサルティング、講師、執筆活動に力を入れており、講師実績は延べ700件以上(2019年現在)。演題は労務管理全般、「士業のための講師術」など。きむらオフィス(http://kimura-office.p-kit.com/)。

コメント