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登下校時は着けないのに… 小学生の名札、本当に必要? 着用に疑問の声も

都市部の小学生が、登下校時に名札を着けないことが当たり前になり、必要性に疑問の声があります。小学生の名札は必要でしょうか。あるいは、不要でしょうか。

小学生の名札は、本当に必要?
小学生の名札は、本当に必要?

 最近は防犯のため、都市部の小学生が登下校時に名札を着けないことが当たり前になりました。しかし、校内にいる間は名札を着けていることが多いようです。保護者の間でも、「登下校時にわざわざ外したり、裏を向けて名前を隠したりするのなら、いっそ名札を着けさせなくてもよいのでは?」など、名札の必要性に疑問の声があるようです。小学生の名札は必要でしょうか。あるいは、不要でしょうか。子育てアドバイザーの佐藤めぐみさんに聞きました。

慣習的な意味合い?

Q.そもそも、小学生が名札を着ける意味は何だと思われますか。

佐藤さん「名札のもともとの意味合いは、もしものときに備え、その子の身元が分かるようにするためと思われます。今で言うなら、子どもが登下校中に交通事故や何らかの災害に巻き込まれた場合などでしょう。

しかし、多くの学校が、不審者による犯罪を防ぐために、登下校中は名札を外させ、校内でのみ着用としていることから、現在は学校内での名前の認知が目的と思われます。他にも、自分の行動に責任を持たせるためということも聞いたことがあります。

ただ、私見としては、『そういうものだから』『これまでそうやってきたから』など、慣習的な意味合いが大きいようにも感じています」

Q.保護者の中にも、名札の必要性に疑問の声があるようです。小学生の名札は必要でしょうか。あるいは、不要でしょうか。

佐藤さん「いつも必要かというと、私は必要ないと考えています。名札を着けることのメリットとデメリットを比べると、デメリットの方が多いと思うからです。デメリットが多いというよりは、リスクが大きいと言った方がいいかもしれません。

メリットとしては、教師が児童の名前を把握しやすい、万が一の事故や自然災害の被害に遭ったとき本人を特定しやすいことが挙げられますが、その恩恵以上に、個人情報の流出や不審者による犯罪など、悪用された場合のリスクの方が心配です。

私は海外生活が長く、ヨーロッパの国々やアメリカの在住歴がありますが、どこの国でも小学校の低学年の児童が、外を1人で歩くようなことはありません。危険回避のためです。小学1年の児童が、車道の横を歩くだけでも危険が伴うのに、個人情報を公にして道路を歩いていたら、不審者による犯罪のリスクまで高めてしまいます。

名札を裏返しにする学校もあると聞きますが、名前を覚えるためであれば、ネームプレートを教室の自分の机に置くという形でもいいのではと思います」

Q.小学1年生は、入学当初であれば名札は必要かもしれませんが、学校生活に慣れてくると必要ないと思います。ずっと名札をつけていないと、児童同士での顔と名前の一致が難しいのでしょうか。

佐藤さん「そもそも子どもたちが、毎日顔を合わせているクラスメートの名前を、名札で確認しているとは考えにくいです。ましてや小さい子ほど、文字を手掛かりにすることは少ないでしょう。

例えば、小学1年生になったばかりの子が、クラスメートの名札を見て、『○○くん』『○○さん』と認識しようとはしないでしょう。子どもたちは、名札よりは顔で覚えていくのが自然な流れです。

ただ、教師にとっては、入学当初は、児童の顔と名前を一致させるのが大変だと思います。特に、日本は1クラスの人数が諸外国と比べても多いので、一時的に名札を着けるとか、机上にネームプレートを置くなどの対応は、授業を進める上で必要かと思います」

Q.校内では名札着用の小学校がまだ多いようですが、教師の側が児童に名札を着けさせ続けた方が都合がよい事情もあるのでしょうか。

佐藤さん「小学校は基本的に、クラス担任が授業全般を担当するので、自分のクラスの児童はよく知っていても、他のクラスの児童を知る機会は少なくなります。そのため、廊下ですれ違ったとき、名札を着けていれば、顔と名前を一致させやすいという面はあり、より多くの子どもたちの顔と名前を把握できる点では都合がいいと思います。特に、クラス数が多い大規模校では、なおさらそうかもしれません。

しかし、顔と名前が一致することがどう都合がいいのかという点では、教師それぞれだと思います。一人一人の名前を声に出してあいさつする教師であれば、把握することがメリットになりますし、ある生徒の横を通り、なにか気になることがあった場合、名前を知っていれば声を掛けやすくなるでしょう。

ただ、真摯(しんし)な先生であれば、心配に感じる児童がいれば、名前を知っていようがいまいが声を掛けるでしょうから、都合がいいか一概には言えない気がします」

Q.もし、小学生の子どもが名札を着けることを嫌がった場合、保護者はどのように対応すればよいのでしょうか。

佐藤さん「基本的に子どもたちは、『みんなと一緒』ということに安心感を得るものなので、自分だけ名札を着けたくない場合、何か引っかかることがあって言っていることが多いものです。まずは、なぜ名札を着けたくないのか、理由を聞いてあげることはとても大切なことです。

中には、名前自体が特徴的で、それをからかわれる子もいます。本来は、こうした行為はあってはならないことですが、そういうことをする子がいるのが現状です。『学校の決まりだから』と一言で片付けてしまうと、子どもが話すチャンスを逃してしまいます。それを受け入れるか否かはいったん横に置き、まずは子どもの気持ちを聞いてあげてほしいと思います。

事が大きくなると、それが小学校への行き渋りの要因にもなりかねないので、初めの段階で話を聞き、場合によっては先生に相談するのが望ましいでしょう」

(オトナンサー編集部)

佐藤めぐみ(さとう・めぐみ)

公認心理師(児童心理専門)

ポジティブ育児研究所代表。育児相談室「ポジカフェ」主宰。英レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。現在は、ポジティブ育児研究所でのママ向けの心理学講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポートする活動をしている。著書に「子育て心理学のプロが教える 輝くママの習慣」(あさ出版)など。All About「子育て」ガイド(https://allabout.co.jp/gm/gp/1109/)を務めている。公式サイト(https://megumi-sato.com/)。

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