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夏休みの「宿題」はなくした方がいい理由 国民の生産性に直結する問題も

そもそも、宿題は必要ない

 そうしたことが国民1人当たりの生産性に表れています。2020年における日本の国民1人当たりの名目GDPは世界23位であり、その生産性は極めて低く、国民1人当たりが生み出す付加価値はとても少ないのが実態です。一方、子ども時代に日本の2倍もある長い夏休みを謳歌(おうか)して、しかも夏休みの宿題など全くなかった、米国の大人の1人当たりのGDPは日本の約1.6倍にもなります。

 もちろん、日本の生産性が低い原因は他にもいくつかあると思いますが、筆者はオン・オフのメリハリのない仕事ぶりがその大きな要因であることは間違いないと思います。来るべきAI時代、SDGs時代、多様性と流動性の時代、超高齢化社会に向けて、日本は国を挙げて、「働き方改革が必要だ。働き過ぎをやめてワーク・ライフ・バランスを大切にしよう。仕事と休みのメリハリをつけよう」と言っています。

 そのためには、子どものときから、スタディー・ライフ・バランスを大切にしたメリハリのある生活の仕方を教えていく必要があります。子どものときはバランスを無視しておいて、大人になって急に「ワーク・ライフ・バランスを大切に」と言うのはどだい無理な話です。

 このようなわけで、筆者はそもそも、学校が宿題を出さないようにすればよいと思います。愛知県の元公立小学校校長の沢田二三夫先生のように、実際に夏休みの宿題をなくした例もけっこうありますので、やろうと思えばできます。また、文部科学省がそのような事例を集めて、先生や保護者を啓発していくことも必要だと思います。

 そして、これは先生の働き方改革にも直結する問題でもあります。なぜなら、夏休みの宿題を出す先生たちの負担も非常に大きいからです。筆者も長年、小学校の教員だったのでよく分かります。特に大変なのは、夏休み明けに子どもたちが提出した宿題を見る仕事です。まず、誰が出してないかチェックする必要があります。提出していない子に理由を聞いたり、提出するように促したりするのは楽しい仕事ではありません。

 また、提出物によっては丸付けをしたり、コメントを付けたり、教室に掲示したりなど膨大な作業が必要になります。当然、勤務時間内では終わらないので、持ち帰って自宅でやったり、休日出勤したりということになります。文科省には、先生の働き方改革のためにも、夏休みの宿題についてはぜひ、なくす方向で取り組んでいただきたいと思います。

(教育評論家 親野智可等)

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親野智可等(おやの・ちから)

教育評論家

長年の教師経験をもとにブログ「親力講座」、メールマガジン「親力で決まる子供の将来」、ツイッターなどで発信中。「『自分でグングン伸びる子』が育つ親の習慣」(PHP文庫)など、ベストセラー多数。全国各地の小・中・高校や幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会でも大人気。公式サイト「親力」で新書3冊分のコラムが閲覧可能。公式サイト「親力」(http://www.oyaryoku.jp/)、ツイッター(https://twitter.com/oyanochikara)、ブログ「親力講座」(http://oyaryoku.blog.jp/)。

コメント

1件のコメント

  1. フランスで子育て中のママです。
    息子は今、日本でいうと中学3年生ですが、先生のおっしゃる通り夏休みは宿題がありません。大きな理由は、新学年が9月から始まるので、日本でいうところの春休みの感覚です。しかし、学校によってですが、特に私立などは課題書物を出して読ませたりすることもあります。
    それと、多くの本屋、スーパーなどで夏休みドリルを売り出し親が買っているところをよく見ます。
    おそらくフランスの親は宿題を出してもらいたいと思っているかもしれません。ないものねだりですね。2か月間の夏休みは、先生が仰るように、親も一緒に短くても一週間から二週間の旅行に行くことが普通です。いつも同じところに行く人たちもいて、バカンス友達がいたりします。
    バカンス大国ならではの楽しみ方ですね。