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否定はダメ! 良好な親子関係を築く5つの「褒める」テクニック

子育てをする上では、子どもと良好な関係を築くことが大切です。では、親子が互いに信頼し合うためには、どのようなことを心掛けるべきなのでしょうか。

良好な親子関係を築くには?
良好な親子関係を築くには?

 子育てで大切なのは、親子関係をよくすることです。なぜなら、親子関係がよいと、子どもの自己肯定感と他者信頼感が共に育つからです。では、どうしたら、良好な親子関係を築くことができるのでしょうか。

否定的な言葉を投げ掛けない

 それは一言で表現すると「言葉遣いに気を付ける」こと。全ての人間関係は言葉遣いによって決まるからです。相手が大人であろうが子どもであろうが、他人であろうが家族であろうが、この基本は変わりません。いくら、自分では相手を大切に思っていても、言葉遣いがまずいとその気持ちが伝わりません。

 まずい言葉遣いの代表が否定的な言い方です。例えば、「また○○してない。なんで○○しないの?」「○○しなきゃダメでしょ」「ダメダメ。それじゃダメだよ」などです。こういう言い方をされて、気持ちよくなったり喜んだりする人がいるでしょうか。いるはずがありません。誰でも不愉快な気持ちになります。

 そして、不愉快になるだけでなく、素直に心を開くことができなくなります。人間は相手の言葉の中にほんの少しでも自分を非難する要素を感じ取ると、その瞬間に心の窓が閉まってしまうからです。すると、たとえ相手が言っていることが正しいと頭では思っていても、また、たとえ自分のことを思って言ってくれているのだと分かっていても、素直に聞けなくなります。

 そして、同じ人にいつもこのような言い方をされ続けると、素直に聞けないだけでなく、相手に対する不信感も生まれます。「もしかしたら、この人は自分のことをよく思っていないのではないか?」という気持ちが出てくるのです。これでは、よい人間関係など望むべくもありません。

 人間関係をよくしたいと思ったら、このような否定的な言い方をやめて、肯定的な言い方をすることが大切です。例えば、「○○するといいよ」「○○するとうまくいくよ」「○○すると気持ちいいよ」などです。こういう言い方には相手を非難する要素が入っていません。肯定的で前向きな印象を受けるので、言われた方は自分が肯定されたような気持ちになれるのです。

 ついつい、「なんで○○しないの?」「○○しなきゃダメでしょ」などの言い方になってしまう人は言う前に自分の頭で翻訳して、肯定的な言い方に切り替えるようにしましょう。それだけで、自分の子どもに限らず、さまざまな人との関係がよくなっていきます。

 肯定的な言い方の中でも、特に大切で効果的なのが相手を褒める言い方です。人は褒められるとうれしくなって、心がほかほかして、幸せな気持ちになります。そして、自分を認めて褒めてくれた相手に信頼感を持ち、その人が大好きになるのです。

 また、褒められたことで自分に自信を持てるようになり、さらに頑張るエネルギーが湧いてきます。褒められたことがきっかけとなって、いい方向に進んでいけるのです。私たちは自分の人間関係をよくするためだけでなく、自分の周りの大切な人々をよい方向に伸ばしてあげるためにも褒め上手になりたいものです。

 褒め上手な人は子どもや家族、同僚、先輩、あるいはほんの少し関わっただけの人すらも幸せな気持ちにして、いい方向に伸ばすためのお手伝いができます。褒め上手になるためにはいくつかコツがあります。

 1つ目は「部分を褒める」ということです。例えば、子どもの絵を見たとき、「あまりうまくない」と感じたとします。そういうときは、いい部分に注目して褒める所を探すことが大切です。全体的にはそれほどよいと思えない絵でも、いい部分に注目すれば、「この花の色がすごくきれいだね」「ウサギが今にも動き出しそうに描けているね」と褒めることができます。

 あるいは、同僚が作った企画書を見たときも同じです。いい部分を見つけて、たくさん褒めてあげてください。もし、アドバイスしたいところがあるときも、たくさん褒めた後にしてください。そうすれば、たくさん褒められて心が開いているので素直に聞いてもらえます。

 2つ目は「ウソでも褒める」です。例えば、子どもの書き取り帳を見たときは「このごろ、字が丁寧になってきたね」と褒めます。特にそういった事実がなくても褒めるのです。小さい子どもなら、すぐその気になってくれます。小学校高学年以上の子どもであれば、「え~、そんなことないよ。褒めてやらせようと思ってるでしょ」と言うかもしれませんが、それでも決して悪い気はしません。

 そして、1つ目の「部分を褒める」を使って、少しマシな字を5、6個見つけて、毎日褒め続けます。そうすると、丁寧に上手に書くようになります。

 3つ目は「一歩下がり法」です。これは、できて当たり前と思っていることを一歩下がって、素晴らしいことだと認め直すことです。例えば、「元気だけが取りえ」という子がいても、元気なことは当たり前のことと思われて褒められないことが多いものです。しかし、毎日生き生きと生活していることは素晴らしいことではないでしょうか。元気であることを大いに褒めてあげてください。

「あなたは毎日、元気いっぱいで気持ちがいいね。あなたを見ていると元気がもらえるよ。みんなに元気のエネルギーを分けてくれて、ありがとう」と心を込めて褒めてあげてください。子どもはとても喜ぶはずです。

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親野智可等(おやの・ちから)

教育評論家

長年の教師経験をもとにブログ「親力講座」、メールマガジン「親力で決まる子供の将来」、ツイッターなどで発信中。「『自分でグングン伸びる子』が育つ親の習慣」(PHP文庫)など、ベストセラー多数。全国各地の小・中・高校や幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会でも大人気。公式サイト「親力」で新書3冊分のコラムが閲覧可能。公式サイト「親力」(http://www.oyaryoku.jp/)、ツイッター(https://twitter.com/oyanochikara)、ブログ「親力講座」(http://oyaryoku.blog.jp/)。

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