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手つなぎで退学に? 中国で「中高生や大学生が恋愛してはいけない」理由とは

日本では、中高生や大学生の恋愛は珍しくありませんが、中国では「中高生や大学生が恋愛してはいけない」という風潮があるそうです。背景には何があるのでしょうか。

中高生や大学生は恋愛禁止?
中高生や大学生は恋愛禁止?

 日本では街中で、中高生や大学生のカップルが手をつないで歩く光景を見ることは珍しくありません。しかし、中国では、手をつないで歩く以前に「中高生や大学生が恋愛をしてはいけない」という風潮があるそうです。日本では当たり前の中高生や大学生の恋愛風景が、中国では認められない背景には何があるのでしょうか。ノンフィクション作家で中国社会情勢専門家の青樹明子さんに聞きました。

大学では校則で「恋愛禁止」

Q.中国では、中高生や大学生が恋愛をしてはいけないという風潮があるのは本当でしょうか。

青樹さん「本当です。『中高生や大学生は恋愛をすべきではない』というのが“社会の常識”のようになっています。具体的には、中高生の場合、家庭内で『恋愛禁止』を親が明言し、特に母親が娘に恋愛禁止を強要していることが多いです。中学や高校では、あまりに当たり前なので、校則で禁止している所は少ないかもしれませんが、大学の場合は、校則で恋愛禁止とうたっている所も少なくありません」

Q.いつごろから、「中高生や大学生が恋愛してはいけない」という風潮が広がったのでしょうか。

青樹さん「1979年から始まった『一人っ子政策』が大きく関係しています。この政策の下、各家庭では、子どもを1人しか産めなくなったのですが、その影響で子どもに対する親の期待が過度に高まりました。その結果、恐ろしいまでの受験戦争と学歴社会が誕生したのです。中国では『よい子』というのは『勉強のできる子』と同義なのです。

そのため、中国の中高生は『受験戦争に勝ち抜くために恋愛などの雑念は許されない』こととなり、受験戦争が終わって大学生になっても、『よい企業に就職するため、学業に専念しなければならない。恋愛をする暇はない』という考え方が広がり、結局は中学、高校、大学の間、ずっと恋愛をしてはいけないという傾向が生まれました。

また、一人っ子政策を推し進めるために、国家は“晩婚”“遅めの出産”を推奨してきました。学生時代に恋愛などして、早々と結婚されても困るわけです」

Q.中高生は家庭内で恋愛禁止のルールを定められているとのことですが、どれくらい厳しいのですか。

青樹さん「例えば、中高生にもなると、休日に友人同士で遊びに出掛けることがあると思います。そのグループの中に男の子がいた場合、スマホなどで撮影した外出先の写真に男の子が写らないようにしたり、もし写ったら、写っていないように細工をしたりしないといけません。中国では、母親が娘のスマホを確認するのは当たり前なのです。

また、アイドルなどの有名人を好きになることさえも親に禁止されていることが多いです。私は以前、中国でラジオ番組の制作に携わり、番組内でJ-POPなどの音楽を流していたのですが、リスナーの中高生から、『好きなアイドルができると受験勉強の妨げになるから、親が聴くことを許さない』という手紙がよく届きました。こうした中高生は親に隠れて番組を録音し、通学のときに聴いていたようです」

Q.大学生の恋愛禁止が校則にまでなっているのはなぜでしょうか。

青樹さん「中国では、大学生はこれから中国を支えていく『国の宝』とされており、また、中国の大学はほぼ全てが国公立大学です。『公の費用で勉強しているのだから、恋愛する暇があれば勉強して国の発展に尽くせ』という考え方が根強いのです。

校則の中には、日本人には考えられないようなものがあります。例えば、広東省のある大学は『男女が一緒に歩くことを禁止する』という校則を作り、話題になりました。カップルが手をつないで歩いているのが見つかると、最初は警告で、再び見つかれば退学処分▽男女は50センチ以上の距離を取らなければならない▽男女2人だけで食事をしてはいけない▽男女は明るい場所で会い、そのときは5人以上のグループで会わないといけない――など、笑ってしまうような校則です。

また、黒竜江省のある大学では『同居や不適切な異性行為が発覚したら退学処分』という校則を発表しています。

中国の大学生は1部屋に7~8人で一緒に住む寄宿舎生活が基本で、男女がデートする場所がないんですね。大学内の図書館や自習室、校内の公園で会う程度がせいぜいですが、以前、私が留学していた北京の大学では、夜になると真っ暗な公園のベンチがカップルで埋まってました。しかし、風紀委員が見回りをしており、見つかったら注意を受けてしまいます。ある大学では、そんなカップルと風紀委員の間で殴り合い事件が起きたといいます」

Q.中高生や大学生の恋愛をここまで制限して、人権問題にならないのですか。

青樹さん「もちろん、中高生や大学生はこうした状況に納得していません。海外の恋愛事情もネットなどから情報を得ていますし、自分たちが置かれた環境がおかしいのではないかと思っています。特に女子高生の場合、恋愛への母親の干渉が激しいので反発は大きいです。実家から遠くの大学で、しかも、母親の目が届きにくい大学に行きたいという女子高生も多いです。

しかし、中国では人権問題になりません。中国では“人権”という発想がそもそもないからです。不満や反発があっても、大学生は校則である限り従わないという選択肢はないと考え、中高生は最終的には親の方針に従わないといけないと考えます。儒教的な価値観が根付いている中国では、根底に目上の人の方針に従うという考え方が日本に比べてはるかに強いですね」

(オトナンサー編集部)

青樹明子(あおき・あきこ)

ノンフィクション作家・中国社会情勢専門家

早稲田大学第一文学部卒、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科修士課程修了。大学卒業後、テレビ構成作家や舞台脚本家などを経て企画編集事務所を設立し、業務の傍らノンフィクションライターとして世界数十カ国を取材する。テーマは「海外・日本企業ビジネス最前線」など。1995年から2年間、北京師範大学、北京語言文化大学に留学し、1998年から中国国際放送局で北京向け日本語放送のキャスターを務める。2016年6月から公益財団法人日中友好会館理事。著書に「中国人の頭の中」「『小皇帝』世代の中国」「日中ビジネス摩擦」など。近著に「中国人の『財布の中身』」(詩想社新書)がある。

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