コロナ対策の「換気」は重要…でも、風邪対策とどう両立すればいい?
新型コロナウイルスの感染拡大防止策として「換気」の重要性が叫ばれていますが、冬場は風邪も心配です。どう両立したらよいのでしょうか。
新型コロナウイルスの感染拡大防止策として「換気」の重要性が叫ばれています。しかし、冬が近づいて、冷え込みが厳しい日も増え、SNS上では「確かに換気は大切だけど、風邪をひきそう」「会社の窓がいつも以上に開けてある。寒くて風邪をひく」といった声が上がっています。新型コロナと風邪対策をどう両立すればよいのでしょうか。医療ジャーナリストの森まどかさんに聞きました。
18度以上目安に、個人でも防寒を
Q.換気が新型コロナウイルス対策として有効な理由を改めて教えてください。
森さん「新型コロナウイルスの感染経路はウイルスが付いた手指で口や鼻、目を触ることで感染する『接触感染』と、感染者のせきやくしゃみなどの飛沫(ひまつ)と一緒に出されたウイルスを口や鼻から吸い込むことで感染する『飛沫感染』がありますが、さらに、せきやくしゃみなどをしなくても、話したり笑ったりするときに飛ぶ小さな飛沫(マイクロ飛沫)が感染力を維持したまま空気中を漂い、少し離れた距離にまで感染を広げる可能性があることが分かりました。
この『マイクロ飛沫』は軽いため、換気の悪い密閉空間だと長く空気中を漂うことになります。そのため、窓を開けて空気の流れを作り、室内の空気と外の空気を入れ替えることが感染を防ぐ対策として有効だと考えられています」
Q.換気によって室温が下がった状態が続くと、風邪をひきやすくなりそうな気がします。
森さん「室温が低いこと自体が原因で風邪をひくのではありませんが、換気によって、冷たい空気が入り込んだ部屋に長く居続ければ、その後に風邪症状が出る可能性はあるかもしれません。
『寒い』と感じると、私たちの体は血管を縮めて血流を減らすことによって、体内の熱を外へ逃がさないようにします。そうして体温調節をしているのですが、血流が減少すると、血液で運ばれる栄養や免疫を担う細胞が体全体に行き渡りにくくなり、免疫機能がうまく働かなくなることにもつながります。冬は空気が乾燥して気温が低いという、ウイルスが好む環境である上に、寒いと感じる状態が長く続くことで免疫機能が低下して、風邪に感染しやすくなることが考えられます」
Q.風邪以外に、体が冷えることでかかりやすくなる病気や症状はありますか。
森さん「冷えは肩こりや不眠、胃腸症状、生理痛の悪化など全身のさまざまな不調につながることがありますし、急な温度変化によって、せきやぜんそくが誘発されることもあります」
Q.風邪をひいたり、体の冷えによる不調を起こしたりしないようにしながら、新型コロナ対策として換気を徹底するための効率的な方法を教えてください。
森さん「厚生労働省によれば、『30分に1回以上、数分間程度、窓を全開にして部屋の空気がすべて外気と入れ替わるようにすること』『空気の流れを作るため、複数の窓がある場合、2方向の壁の窓を開放し、1つしかない場合はドアを開けること』が適切な換気方法として推奨されています。
外の気温が低い場合は、室内を暖房で暖めてから、暖房をつけたままの状態で換気する▽窓際にヒーターを設置して室内に入ってくる空気を暖める▽キッチンのレンジフード(換気扇)を回して換気の効率を上げる――など換気によって部屋の気温が下がりすぎないための工夫が必要です。
また、換気の効率という点では、二酸化炭素の濃度が換気状態の目安になるのではないかという考えに基づき、二酸化炭素濃度を測定する機器が最近注目されています。目に見えない換気状態を数字で知ることにより、必要以上に室温を下げない、効率のよい換気につなげることが期待できます。
さらに、新型コロナウイルスも風邪の原因となるウイルスも乾燥した部屋では飛沫が拡散し、感染のリスクが高くなるため、加湿器の使用や室内に洗濯物を干すなどして、一定の湿度を保つようにすることも換気と併せて大切です」
Q.新型コロナ対策と風邪対策を両立させる室温の目安、湿度の目安があれば教えてください。
森さん「政府の『新型コロナウイルス感染症対策分科会』の緊急提言を受けて、11月10日に発表された政府の具体的なアクションの中では、室温が下がらない範囲として『18度以上』を、適度な保湿の程度として『湿度40%以上』を感染対策の目安として示しています」
Q.職場などが寒いものの、ほかの人は平気そうな状況の場合、個人的な対策としてはどのような方法が考えられるでしょうか。
森さん「まずは衣服での調節を試みるのがよいでしょう。重ね着とひざ掛け、レッグウオーマーやネックウオーマーなどを取り入れて調節することをおすすめします。『使い切りカイロ』の活用も保温に効果的といえるでしょう。
また、窓際など直接冷たい空気があたる座席であれば、暖房の近くなどに移動させてもらえないか相談してみることもすぐにできる改善策です。個人で暖房器具を持ち込むことが可能なら、家電ショップやホームセンターなどで販売されているオフィス用のヒーターを足元に置くのも一つの方法だと思います」
(オトナンサー編集部)
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