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暗い教室でビデオを見ながら…コロナ禍の「給食」の工夫で残食が増える逆効果

チャレンジは大切、しかし本分は…

 次に「子どもの食べる意欲」という観点からも、よい指導とは思えません。小学生くらいの年齢では「テレビやビデオを見ながら食べる」ことで意識が食べること以外にそれてしまい、食べるのが遅くなることが考えられます。

 学校給食はただでさえ、「時間がない」ことがよく問題となっており、さらに今は、新型コロナ対策として消毒を徹底するなどやるべきことがさらに増えているので、「食べるのが遅くなってしまうこと」は、より重大な問題になると考えられます。

 もちろん、食べられないものや食べられない量までを無理に食べさせる必要はありませんが、このような指導によって、結果的に「クラスの残食が増えること」にもつながっているのでしょう。このような理由から、給食時間に教室を暗くしてビデオを見せるという指導は、学校給食には特にふさわしくないと筆者は考えます。

 不自由なことが多いコロナ禍の給食時間でも、楽しく食事ができるようにする対策として、給食時間の校内放送を活用するなど、さまざまな工夫を行っている学校も多いです。先生たちはこの状況下でいろいろと大変だという声を聞きますし、この状況下だからこその新しい取り組みをするチャレンジ精神は大変素晴らしいと思います。

 しかし、その一方で、子どもにとって食事が「楽しいもの」になるようにという本分を見誤らないよう意識することも大切でしょう。

(日本会食恐怖症克服支援協会 山口健太)

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山口健太(やまぐち・けんた)

月刊給食指導研修資料(きゅうけん)編集長、株式会社日本教育資料代表取締役、一般社団法人日本会食恐怖症克服支援協会代表理事

人前で食事ができない「会食恐怖症」の当事者経験から、食べる相手やコミュニケーションの違いによって食欲が増減することを実感。既存の「食べない子」への対処法に疑問を感じ、カウンセラーとして活動を開始。「食べない子」が変わるコミュニケーションノウハウの第一人者として、延べ3000人以上の相談を受ける。著書に海外でも翻訳出版されている「食べない子が変わる魔法の言葉」(辰巳出版)などがあり、給食指導などの研修を保育所や学校などの栄養士・教職員に向けて行っている。「目からうろこの内容」と言われるほど“とにかく分かりやすい解説”と、今日からすぐに使える実用的な内容が特徴。月刊給食指導研修資料(きゅうけん)

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