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「算数」ができる子、できない子の差は? 身に付くヒントは“体験”にあり

母親や父親が算数に苦手意識があると、「わが子には同じ苦労をさせたくない」と思うものです。子どもの算数力を伸ばすには、どうすればよいのでしょうか。

算数に弱いのは生まれつき?
算数に弱いのは生まれつき?

 母親や父親が算数に苦手意識があると、「わが子には同じ苦労をさせたくない」と思うものです。実際に算数で苦労しているわが子を見て、つい、「わが家は理系でなく文系だから」と遺伝のせいにしたくなることもあります。

 しかし、「生まれつき算数に強い子/弱い子」は本当にいるのでしょうか。私は長年、学習塾で小学生を指導してきましたが、環境的要素が大きいように感じます。

理想は「買い物体験」

「お店やさんごっこ」の様子(筆者撮影)
「お店やさんごっこ」の様子(筆者撮影)

 例えば、「5+3」などの数式問題や「花子さんは、あめを5個持っていました。太郎君は、あめを3個持っていました。合わせて何個になるでしょうか」という文章題。

 計算問題は数をこなすことで理解が進みますが、中には、式と答えを単に暗記している子もいます。また、文章題は「合わせて」「全部で」など足し算であることのヒントになるキーワードを拾って、正解を出すこともできます。しかし、次のような問題ではどうでしょうか。

「太郎君は買い物に行きました。お店の人に10円を渡すと、お釣りは3円でした。太郎君はいくらのものを買ったのでしょうか」

 このような問題になると、ヒントとなる言葉がないので、足し算なのか引き算なのか途端に分からなくなる子がいます。文章を読んでも状況を想像できないのです。

 小学校入学前の幼児に算数の力をつけさせようとして、プリントばかりやらせていても、残念ながら力がつくわけではありません。算数力は「ああ、これ知っている」という感覚、つまり、「実体験をどれだけ積んでいるか」がポイントになるのです。これを「先行体験」といいます。その具体例を見ていきましょう。

【「買い物体験」をさせる】

 キャッシュレス決済は便利な半面、子どもにとっては「お金を使う」のがどういうことなのか、あまり身近に感じられません。

 そこで、時間に余裕があるとき、子どもと一緒に商店街まで足を延ばしてみませんか。お肉を買うのもニンジンを買うのも「その都度、お金を出して、商品を受け取る」ことを体験させましょう。スーパーやコンビニでも「110円のあめを買うときに200円を出して、お釣りを受け取る」ことは引き算の実体験になります。

 こうした実体験をなかなかさせられない場合は、親子で「お店やさんごっこ」をしてみましょう。食べ物の形をした消しゴムなどを「商品」と見立て、お客さんになったり、店主になったりして物を売り買いし、お金のやりとりをします。こうした体験が算数の力を伸ばすのです。

 お金はおもちゃでもよいのですが、臨場感を持って学習させるには実物の方がベターです。ただし、硬貨はしっかりと消毒しておきましょう。

【自動販売機で買うことを体験させる】

 小学2年の算数の単元では「『120』は10の固まりがいくつ集まった数でしょうか」という問題があります。普段から、お金を触っている子は「120円は10円玉が12個集まった数だ」「120円は『100円』と『20円』だ」と理解でき、すぐに答えが分かるようです。一方、そうした経験のない子はなかなか答えられず、苦戦します。

 そこで、自動販売機で飲み物を買うときや電車を使って外出するとき、電子マネーでさっさと済ませるのではなく、子どもに硬貨を使わせてみませんか。

 例えば、150円のウーロン茶を買うときに10円玉を15枚入れたり、100円玉と50円玉を使って買わせたりするなどの方法があります。切符なら、「○○駅まで、地下鉄で210円だよ」と親の運賃分の硬貨を渡し、券売機で買ってもらうのも一手です。このように、日常生活の中で子どもに「何気なく体験させる」だけで、大きな数の単位を理解する素地ができます。

日常生活でできる工夫を

 100まで数えることができても、それが実物と一致していなければ、身に付いているとはいえません。

 小学生に、100ページある本の「55ページを開けましょう」と指示すると、1ページ目から丁寧にめくっていく子と、だいたい半分の50ページからめくっていく子に分かれます。数の概念としての「100」を理解できている後者の子に対し、前者の子は単に“唱えているだけ”の子です。おはじきや、100個の玉で数え方などを学べる「百玉そろばん」を使って、「100とはどれくらいの量なのか」を目で見て感じさせることがポイントです。

 もう一つ、小学生が共通してつまずく単元があります。2年生で出てくる「かさの単位」、要するにリットル(l)、デシリットル(dl)の単元です。

 普段、日常生活の中であまり使われない単位なので、子どもたちは最初、意味不明な感覚に陥ります。紙面上で習うとなおのこと分かりづらいです。最初は「l」や「dl」を「英語だ~」と喜んでいるのですが、換算問題が登場するとお手上げ状態になる子が多いのです。

 皆さんの中にも「1000ミリリットルは何デシリットルですか?」と聞かれて、とっさに答えられない人は多いのではないでしょうか。正解は「10デシリットル」です。かつて、義務教育の期間に習ったことでも、日常生活の中であまり出てこない単位だと忘れてしまいがちです。子どもたちも同様で「体験していないと分からない」のです。

 算数は小学校入学後、好き嫌いがはっきり分かれる教科です。嫌いになるとますます勉強しなくなって悪循環が起きやすく、その結果、成績差もはっきり出ます。算数はプリント学習だけではなかなか身に付きません。コロナ禍の影響や、キャッシュレス時代の到来により、実物のお金を触る機会は徐々に減りつつありますが、日常生活の中でできる工夫を見つけてみてくださいね。

(子育て本著者・講演家 立石美津子)

立石美津子(たていし・みつこ)

子育て本著者・講演家

20年間学習塾を経営。現在は著者・講演家として活動。著書は「1人でできる子が育つ テキトー母さんのすすめ」「はずれ先生にあたったとき読む本」「子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方」など多数。ノンフィクション「発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年」(小児外科医・松永正訓著)のモデルにもなっている。オフィシャルブログ(http://www.tateishi-mitsuko.com/blog/)。

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