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モラハラ夫に耐え続けた56歳女性、金の切れ目で決断した「コロナ離婚」の始終【#コロナとどう暮らす】

コロナ離婚を決断した56歳女性

 新型コロナウイルスの封じ込めにより発生した格差…具体的には、既往症の有無による生存格差、自粛対象の有無による業種間の経済格差、マスクの有無で生じる感染リスク格差によって壊れていく家族からの相談が絶えません。

 実際、危機的な状況に陥ると化けの皮がはがれ、本性が丸出しになるものです。例えば、物資の買い占め、自粛の無視、感染予防の非協力などによって配偶者の“本当の姿”が明らかになったとき、別れを決断するのがコロナ離婚。山城陽子さん(56歳、嘱託職員)もコロナ離婚を決断した一人です(登場人物は仮名)。

ソーシャルディスタンスを無視

 陽子さんの夫、和夫さん(58歳)は外資系企業に勤務しており、帰宅が夜中になることもある過酷な職業。結婚当初、陽子さんは温かい食事とお風呂を用意するため、どんなに遅くとも起きていたのですが、和夫さんの反応は感謝ではなく激怒。

「余計なお世話だ。お前が待っていると思うと仕事に集中できないじゃないか!」と吐き捨て、家事や育児を一手に背負う陽子さんに「頼んだ覚えはない。家のことはお前が勝手にやってるんだろ!」と逆上し、さらに「お前の気が強すぎるから、今まで何もできなかったんだ!」と攻撃するありさまでした。和夫さんのモラルハラスメントを長年、我慢し続けたところ、コロナ禍に突入したのです。

 5月中旬、緊急事態宣言が解除されれば元に戻るという陽子さんの淡い期待に水を差したのは、風光明媚(めいび)な山あいのレストランでの出来事でした。目の前に広がる木々と湖、小鳥のさえずりを楽しみつつ、朝食をいただける人気店。夫婦で外食するのは、緊急事態宣言が出された4月以降初めて。陽子さんはこの日を待ちわびていたのですが、「新しい生活様式」を守る必要があるので、完全に元に戻るわけではありません。

 レストランで人気なのは当然、窓側の席。まだ空席があるにもかかわらず、夫婦は窓側とは反対の壁側の席を案内されたのです。「空いているじゃないか!」と和夫さんが声を張り上げたのですが、2席に1席を空けるというのが店の方針でした。和夫さんが何度同じことを連呼しても、店員は「そういう決まりなので」の一点張りで、らちが明かない状況でした。

 そんな中、店員や他の客から送られる「ソーシャルディスタンスを守らないなんて」という痛々しい目線。和夫さんは針のむしろのような状態に耐え切れず、「それならいい! 本当にお前ら何も分かっていないな!!」と吐き捨てると、食事もせずに店を後にしたそうです。

 陽子さんは和夫さんを静止できなかったことを悔やみ、恥ずかしい気持ちにさいなまれたそう。「みんなが第2波、第3波が来ないよう注意しているのに…主人は『自分は特別』というタイプですが、この期に及んでも変わらないなんて。何より、主人と同じタイプだと思われたのは心外です!」。陽子さんは苦しい胸の内を明かしてくれました。

減収で金の切れ目が縁の切れ目

「主人の場合、6月から20%カットだそうです」。和夫さんの勤務先はコロナの影響を受け、本社は3分の2の社員を解雇し、会社の存続に必死になっているとのこと。「日本(支社)は解雇せず、今いる社員をどうにか守りたい」と、痛み分けで全社員の給与削減が決まったそうです。

 現在、和夫さんの家計負担は毎月8万円の家賃と4万円の生活費。しかし、和夫さんは「6月から厳しいから生活費は無理だ」と一方的に言ってきたのです。それは、陽子さんの給料で和夫さんの生活費を支払うことを意味するので、金銭的には、和夫さんとの結婚生活を続ける意味が薄れます。

 陽子さんの職業はテーマパークの嘱託職員(年収600万円)。「本当はお墓のためにためておいたんですが…」と自嘲気味に言いますが、和夫さんに内緒で500万円を自分名義で確保していました。退職金はないものの実家が空き家になっており、最低限のリフォームを行えば、家賃なしで居住することが可能。筆者は「生活水準は現在と大差ないのなら、あとは気持ちの問題ですよ」と助言しました。

「主人とやり直そうという気持ちも、多少持っていました。しかし、主人は何も変わっていない…今回のコロナで分かったことです。離婚することに決めました」

 5月下旬、和夫さんの収入が元に戻るのを待たず、家庭裁判所から調停の申立書を取り寄せたのが、筆者が把握している陽子さんの近況です。

妻が愛想を尽かすのが早まった

 本来、有事というのは夫婦の絆を再構築することができる希少な機会です。離婚寸前の夫婦が、災害による避難、病気による看病、けがによる入院などによって配偶者のありがたさを再認識し、やり直す方向へ転換したケースを筆者は数多く見てきました。

 コロナ禍はどうでしょうか。人生最大級の有事に遭遇することで夫が反省し、心を入れ替え、言葉や態度を改めれば、コロナ離婚には至らないでしょう。これは妻を第一に考え、感染対策に協力し、社会貢献を継続している場合です。しかし、夫が自分第一で、感染対策を無視し、自粛せずに外出し続けたら…妻は「何があろうと夫が変わることはない」ことに気付き、復縁の余地はないという結論を出します。

 今まで、和夫さんのような非家庭的な夫が許されたのは、最低限の生活費を渡してくれたから。コロナショックは人命を奪うという直接的影響だけでなく、明日の金銭を失うという間接的影響も甚大です。和夫さんのケース以外にも、職場休業による給与カット、在宅勤務による残業代カットなどの事態が起こっています。妻の頬を札束で引っぱたくことを繰り返してきた夫の収入が大幅に減ったら、どうなるでしょうか。

 金の切れ目が縁の切れ目。生活費を減らされるなら、これ以上我慢したくない。妻への不義理はスナックのツケ払いと同じ。いつまでもツケを解消しないとママの不満が爆発し、出入り禁止になりますが、それが夫婦でいうところの離婚です。妻は我慢の限界に達し、結婚生活を続けることを諦め離婚へ踏み出すのです。しかも、コロナによって妻が爆発するタイミングが早まっているので、注意が必要です。

(露木行政書士事務所代表 露木幸彦)

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露木幸彦(つゆき・ゆきひこ)

露木行政書士事務所代表

1980年12月24日生まれ。いわゆる松坂世代。国学院大学法学部卒。行政書士・ファイナンシャルプランナー(FP)。金融機関の融資担当時代は住宅ローンのトップセールス。男の離婚に特化し行政書士事務所を開業。開業から6年間で有料相談件数7000件、公式サイト「離婚サポートnet」の会員数は6300人を突破し、業界最大規模に成長させる。他で断られた「相談難民」を積極的に引き受けている。自己破産した相手から慰謝料を回収する、行方不明になった相手に手切れ金を支払わせるなど、数々の難題に取り組み、「不可能を可能」にしてきた。朝日新聞、日本経済新聞、ダイヤモンドオンライン、プレジデントオンラインで連載を担当。星海社の新人賞(特別賞)を受賞するなど執筆力も高く評価されている。また「情報格差の解消」に熱心で、積極的にメディアに登場。心理学、交渉術、法律に関する著書を数多く出版し「男のための最強離婚術」(7刷)「男の離婚」(4刷、いずれもメタモル出版)「婚活貧乏」(中央公論新社、1万2000部)「みんなの不倫」(宝島社、1万部)など根強い人気がある。仕事では全国を飛び回るなど多忙を極めるが、私生活では30年以上にわたり「田舎暮らし」(神奈川県大磯町)を自ら実践し「ロハス」「地産地消」「食育」の普及に努めている。公式ブログ(https://ameblo.jp/yukihiko55/)。

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