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モラハラ夫に耐え続けた56歳女性、金の切れ目で決断した「コロナ離婚」の始終【#コロナとどう暮らす】

夫婦関係悪化で「コロナ離婚」

 2月下旬、日本でも猛威を振るい始めた新型コロナウイルス。ようやく、全国に出されていた緊急事態宣言が解除されたものの、まだ感染のリスクがなくなったわけではなく、長期戦の様相を見せています。

 そんな中、金銭的、体力的、精神的に疲弊する家族を、筆者は数多く目の当たりにしてきました。3カ月の間に夫婦関係が悪化し、修復不可能になり、別れを決断したケースを「コロナ離婚」と呼びます。コロナ離婚の相談者の属性は、2月、3月は医師や会社経営者、そして、海外赴任中の会社員など年収が1000万円を超える富裕層ばかりでした。しかし、4月、5月になると、年収1000万円を下回る富裕層以外の相談も増えてきました。

 ここで紹介するのは、後者です。具体的には、賃貸住宅に住む60代の共働き夫婦ですが、コロナショックが離婚の引き金になったようです。三宮悦子さん(保険外交員、60歳)、進さん(62歳、建設現場の一人親方)夫婦に一体、何があったのでしょうか(登場人物は仮名)。

家事を手伝わない夫にうんざり

「コロナで大変なときなのに…夫には幻滅しました。あれがあの人の本性なんです!」

 進さんは離婚歴があり、悦子さんと再婚9年目。再婚前は、進さんから、前妻の悪口や愚痴、不満などをたくさん聞かされたそうです。悦子さんは進さんのことがかわいそうになり、私なら彼を幸せにしてあげられると思い、一緒になることを決めたのです。

 悦子さんは土日休みですが、進さんの仕事は不定休で現場の仕事がなければ平日、家にいることも。休日は悦子さんを気遣って、洗濯や掃除を代わってあげてもよさそうですが、家でゴロゴロするだけで、悦子さんに家事を丸投げ。悦子さんは「こんなはずじゃなかったのに…」と恨み節を口にしますが、結婚するまでは欠点が目に入らなかったようです。夫婦関係は次第に冷え込んでいったのですが、そんなときに起きたのがコロナウイルスの問題でした。

 お互いに休みが合わなくても、夕飯だけは一緒に食べる。それは夫婦の約束事でした。辛うじて夫婦としての形を保つことができたのは、悦子さんだけでなく、進さんも約束を守り続けてきたから。悦子さんが進さんを見限らなかったのは、進さんが外食するときは必ず、前もって連絡してきたからでした。

 そんな夫婦の接点を断ち切ったのは、リモート飲み会でした。進さんは3月下旬から、自宅待機を続けており、仕事仲間と会えずに寂しい日々を送っていました。そんなある日、「リモート飲み会をしようぜ」と仲間から誘われたのです。

 進さんは冷蔵庫からビール、棚からおつまみを持ち出し、自室で飲食を始めたのですが、いかんせん場所は自室。リアルの飲み会とは違い、門限や店の閉店、終電がありません。夕方から飲み始め、午後8時ごろにはベロベロの泥酔状態に。いびきをかきながら眠りに落ちて朝まで起きることはなかったので、悦子さんと夕飯を共にすることはなくなり…。そんな自堕落な生活が2カ月も続いたので、夫婦が同じ時間を共有することもなくなり、進さんは“同居人”に成り下がろうとしていたのです。

 決定的だったのは、5月中旬の出来事。当時はまだ全国に緊急事態宣言が出されており、飲食店ではアルコールの提供は午後7時まで、営業は午後8時までという自粛要請が行われていましたが、進さんは自粛に協力しない店を探して終電まで飲み明かし、ベロベロに酔っぱらって帰宅したのです。

「あんたの行動はおかしくない? みんなが自粛しているのに! 夜中の居酒屋なんて感染しに行くようなものでしょ? 私にうつして万が一のことがあったら、困るのはあなたでしょ?」

 悦子さんがとがめると、進さんは悪びれずに反論。「自粛、自粛って何なんだよ? うつるかどうかなんて運だろ?! 俺はうつらない自信があるから外で飲むんじゃないか。うちにいると息が詰まるんだよ。息抜きして何が悪い! お前みたいなやつのことを何ていうか知っているか? 自粛警察だよ!!」と言い放ったのです。

「もう終わりだと思いました。コロナが落ち着いたら離婚しようと思っています」

 悦子さんは涙声で言いますが、ぜんそく持ちの彼女は、いつどこでウイルスに感染し、重症化して命を落としてもおかしくない状況。「自分らしく生きたいです!」と進さんがいない人生…つまり、離婚を選択したのです。

コロナ離婚の明暗を分ける4つのポイント

 悦子さんと進さんは、辛うじて細い糸でつながっていた夫婦。しかし、コロナによって最後の糸を断ち切られた形です。例年通りなら、致命的な傷を負わず、無理に離婚せず、のらりくらりと結婚生活を続けていたのでは。「コロナ離婚」は存在するのです。

 コロナショックは、結婚生活を見直すきっかけになるでしょう。まず、問題への取り組み方に疑問点はなかったでしょうか。コロナ発生から現在まで、さまざまな問題が起こりました。夫婦で話し合い、意見を言い合い、結論を出すことができたのならよいのですが、話が通じず、何を考えているか分からず、けんかをしてばかりだとしたら、今後も夫婦関係が悪化の一途をたどるのは明白です。

 次に、危機的な状況でも、配偶者への信頼は変わりませんか。危機的な状況に陥ると、化けの皮がはがれ、本性が丸出しになるものです。例えば、物資の買い占め、自粛の無視、虚偽情報の入手など、夫の醜い部分を目の当たりにした場合、それでも信用できますか。

 そして、次の問題が起こったとき、配偶者と行動を共にしたいですか。コロナ危機の長期化に伴って、2月の時点では想像だにしなかった別の問題が次々と発生しています。夫は足手まといなので、自分でやった方がいいと思いますか。

 最後に、限りある人生で、配偶者は最良のパートナーでしょうか。老若男女を問わず、コロナウイルスには死亡リスクがありますが、60歳以上ならなおさらです。もはや、完全に安全な場所はなく、どこで感染してもおかしくありません。思わぬ形で命を落とす可能性があることを踏まえ、今後の人生をどのように過ごしたいのかを再考しましょう。

 隣にいるのは、誰がいいですか。いま一度、胸に手を当てて自問自答してみてください。

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露木幸彦(つゆき・ゆきひこ)

露木行政書士事務所代表

1980年12月24日生まれ。いわゆる松坂世代。国学院大学法学部卒。行政書士・ファイナンシャルプランナー(FP)。金融機関の融資担当時代は住宅ローンのトップセールス。男の離婚に特化し行政書士事務所を開業。開業から6年間で有料相談件数7000件、公式サイト「離婚サポートnet」の会員数は6300人を突破し、業界最大規模に成長させる。他で断られた「相談難民」を積極的に引き受けている。自己破産した相手から慰謝料を回収する、行方不明になった相手に手切れ金を支払わせるなど、数々の難題に取り組み、「不可能を可能」にしてきた。朝日新聞、日本経済新聞、ダイヤモンドオンライン、プレジデントオンラインで連載を担当。星海社の新人賞(特別賞)を受賞するなど執筆力も高く評価されている。また「情報格差の解消」に熱心で、積極的にメディアに登場。心理学、交渉術、法律に関する著書を数多く出版し「男のための最強離婚術」(7刷)「男の離婚」(4刷、いずれもメタモル出版)「婚活貧乏」(中央公論新社、1万2000部)「みんなの不倫」(宝島社、1万部)など根強い人気がある。仕事では全国を飛び回るなど多忙を極めるが、私生活では30年以上にわたり「田舎暮らし」(神奈川県大磯町)を自ら実践し「ロハス」「地産地消」「食育」の普及に努めている。公式ブログ(https://ameblo.jp/yukihiko55/)。

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