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長男はひきこもり 退職金の当てが外れ、たった数十万円で老後に臨む父の決意

父親の出した答えとは?

相談者の収入の見通し
相談者の収入の見通し

 両親が持参した「ねんきん定期便」(保険料納付の実績や将来の年金給付に関する情報などを掲載した通知)と聞き取った情報をもとに、大まかな収入の見通しの表を作成してみました。両親は食い入るように表を見つめています。筆者は2人に説明しました。

「65歳以降の年金からは、介護保険料が天引きされます。お父さまが働いている間は、お母さまの介護保険料も高めになります。そのため、お母さまの年金額は、65歳からと70歳以降で多少変動しています。また、お父さまは70歳まで厚生年金に加入する予定なので、70歳以降の年金が増額しています」

 父親は表のある部分を指さしました。

「65歳から70歳までの収入はかなり多くなりますね。このくらいの収入があると安心できます」

「そうですね。70歳まで給与収入があれば、その分、貯蓄の減るペースは緩やかになります。その間に別の対策も考え、ご家族で実行していくことにしましょう」

 両親は「はい」と言ってうなずきました。

 最後に父親は胸の内を語ってくれました。

「高齢になっても父親が働き続け、ひきこもりの息子を支える。これって、やっぱり変ですよね…」

 悩む父親に、筆者はこう声を掛けました。

「いわゆる『世間の常識』といったものに照らし合わせると、違和感を持つ人は多いでしょう。ですが、『その答えは本当に間違っているのか?』というと、そうとも言い切れないと思います。学校のテストではありませんから、『これが唯一の正解』というものはありません。答えは、ご家族それぞれの数だけあってもよいのではないでしょうか?」

「そうですよね。ずっと、心の中でモヤモヤしていましたが腹をくくりました。できるだけ長く働いて家族を支えようと思います」

 真っすぐな目を向けた父親からは、強い覚悟が感じられました。

(社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー 浜田裕也)

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浜田裕也(はまだ・ゆうや)

社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー

2011年7月に発行された内閣府ひきこもり支援者読本「第5章 親が高齢化、死亡した場合のための備え」を共同執筆。親族がひきこもり経験者であったことから、社会貢献の一環としてひきこもり支援にも携わるようになる。ひきこもりの子どもを持つ家族の相談には、ファイナンシャルプランナーとして生活設計を立てるだけでなく、社会保険労務士として、利用できる社会保障制度の検討もするなど、双方の視点からのアドバイスを常に心がけている。ひきこもりの子どもに限らず、障がいのある子ども、ニートやフリーターの子どもを持つ家庭の生活設計の相談を受ける「働けない子どものお金を考える会」メンバーでもある。

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