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料理レシピが「少々」「適量」とあいまいに書くのはなぜ? 実際の分量は?

料理レシピの調味料の分量表記には、「少々」「適量」というものがあります。なぜ、人によって分量がバラバラになるような、あいまいな表記をするのでしょうか。

「少々」「適量」ってどれくらい?
「少々」「適量」ってどれくらい?

 新型コロナウイルスの影響で在宅勤務や外出自粛をする人が増え、自炊をする人も増えているようです。普段はあまり料理をしない人でも、ネットの料理レシピを見て自炊に取り組んだ人もいるのではないでしょうか。

 ところで、料理に慣れていない人が悩むことの一つに、「少々」「適量」といった調味料の分量表記があると思います。通常、調味料の分量は「小さじ1」「大さじ2」などと書かれており、これであれば、料理の味付けで失敗する可能性は低いはずですが、なぜ、人によって分量がバラバラになりそうな「少々」「適量」というあいまいな表記にするのでしょうか。

 料理研究家で管理栄養士の関口絢子さんに聞きました。

味付けの最終調整をする

Q.なぜ、料理レシピには調味料について、「少々」「適量」というあいまいな分量表記があるのでしょうか。

関口さん「料理のレシピの分量は、そもそもが『目安』です。食材の大きさや調理器具、作る人などによってどうしても誤差が生じるので、仕上げ段階で味を微調整する必要があります。『少々』『適量』という表現は『好みや状況に合わせて調整してください』という、味付けの最終的な微調整のための手段として生まれたものです。

例えば、『キュウリ1本』『キャベツ4分の1個』のような表現がレシピに載っていても、そもそも、キュウリやキャベツの大きさはさまざまで、その段階から誤差が生まれています。大きな鍋と小さな鍋では水分蒸発量が異なり、鍋の材質によっても火の通り時間が変わります。『中火』と表記があっても、感覚的な調整なので、仕上がりは変わります。

このような、さまざまな誤差により、レシピ通りに作っていても出来上がりは同じではありません。つまり、料理とは、感覚的な部分がかなり大きく、作り手のセンスや好みに委ねて調節せざるを得ない背景があります。そこで、『少々』『適量』という、あいまいとも受け取れる表現があるのです」

Q.では、「少々」「適量」とは、それぞれ具体的にどれくらいの分量を指しているのですか。「味付けのさしすせそ」の調味料で教えてください。

関口さん「『少々』とは、親指と人さし指でつまんだ量のことで、小さじ8分の1~10分の1(0.5グラム)程度をいいます。砂糖や塩のような粉状のものであれば、2本指でつまんだ量。しょうゆ、酢、みその場合は小さじ8分の1程度の量です。『適量』は、お好みの量を、という意味合いがあり、パラパラと少しずつ入れながら味を調整することをいいます。液体であれば、小さじ4分の1程度の量を加減しながら加えていきます。

どちらも、厳密な量の目安はありません。料理を作る量によっても変わるので、慣れないうちは先述の分量を目安に、少しずつ足しながら調整していきましょう」

Q.「少々」と同様、少しの量の表現として「ひとつまみ」があります。指の大きさによっても量が違いそうなのですが、どのくらいの量なのでしょうか。

関口さん「『ひとつまみ』とは、親指と人さし指、中指の3本でつまんだ量が目安で、小さじ5分の1(約1グラム)程度を指します。指の大きさによっても誤差が出そうですが、その程度の誤差であれば、味に大きな影響はありません」

Q.料理を作ることに慣れた人は「少々」「適量」という分量表記を見たとき、迷わないのでしょうか。一瞬で、どれくらいの分量の調味料を入れたらよいのか分かるものなのでしょうか。

関口さん「味付けは、経験値で身に付きます。例えば、塩なら、分量に対してどの程度の塩でどのくらいの塩加減になるのかは、料理の経験を積めば自然と分かってきます。目玉焼きに塩を振るときの味加減も、焼き魚に塩をかける場合もです。

また、日々の食事の中で、食卓で使う調味料の量は、まさに自分のとっての『適量』です。そうした中で感覚は身に付いていくものなので、料理に入れる調味料も最初は少な目に入れて、徐々に調整していくとよいでしょう」

Q.料理に慣れていない人は「少々」「適量」という分量表記が出てくると、どれくらいの分量にすればよいのか悩みそうです。味付けで失敗しないための秘訣(ひけつ)があれば、教えてください。

関口さん「『少々』と書いてある場合は、その調味料を入れない状態で味見をして、味が足りなければ、先述の目安量で入れてみるとよいでしょう。『適量』と書いてある場合は、『お好みの状態や味に任せます』という意味のことが多く、料理を作る量によっても変わるので明確な目安はありませんが、最初は少な目に入れて、味を確認しながら増やしていくとよいでしょう。

『入れ過ぎた』と思うときもあるかもしれませんが、『料理がうまくなっていくための勉強だ』と思って、感覚を磨いていってください」

(オトナンサー編集部)

関口絢子(せきぐち・あやこ)

料理研究家・管理栄養士・インナービューティースペシャリスト

米国栄養カウンセラー、ヘルスケアプランナー。企業やウェブサイトなどの各種メディアで、レシピやコラム、企画提案などを行う。斬新なアイデアやニーズを捉えた企画が人気を博し、CM用のフードコーディネートやフードスタイリング、商業施設のフードプロデュースなど多岐にわたり活動。「毎日続けられること」をモットーに簡単・おいしい・おしゃれ、かつ美容と健康に直結したレシピを発信。自らの体調不良を食で克服した経験から執筆した著書「キレイになる!フェロモンレシピ」で「食から始めるアンチエイジング」をテーマに、女性が一生輝き続けるための食事法を紹介。セミナーや女性誌の特集で人気を集めている。

■オフィシャルブログ(http://ameblo.jp/ayako-sekiguchi/
■YouTubeチャンネル「管理栄養士:関口絢子のウェルネスキッチン」(https://www.youtube.com/channel/UC6cZRYwUPyvoeOOb0dqrAug

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