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知っているようで知らない「B級グルメ」の定義…A級やC級もある?

「B級グルメ」という言葉をよく聞きますが、感覚的に分かったつもりでも、意味を正確に言葉で説明できる人は意外に少ないと思います。「B級グルメ」とは、一体何なのでしょうか。

「B級グルメ」とは一体何?
「B級グルメ」とは一体何?

 全国各地で「B級グルメ」のイベントが行われ、すでに「B級グルメって何?」と聞く人はほとんどいないと思います。しかし、感覚的に「B級グルメは何か」を分かったつもりでいても、正確に言葉で説明できる人は意外に少ないのではないでしょうか。定義も、地域などによってさまざまのように感じます。正式な「B級グルメ」の定義とは、何なのでしょうか。また、B級グルメの「B」とは何でしょうか。トータルフードコンサルタントの小倉朋子さんに聞きました。

「C級」「D級」「E級」のグルメもある

Q.「B級グルメ」の正式な定義はあるのでしょうか。ある場合、どのように定義されていますか。

小倉さん「『B級グルメ』の定義は、幾つかの定義が存在したり、徐々に意味が派生したりした歴史があります。

基本的な定義は、『一定の地域で複数の店舗で提供され、地域の人間によって親しまれ、日常的に食されている、おいしくて手頃な価格の地域独特の料理』と考えられています。また、同時に町おこしの視点から、『安くておいしい地元で愛されている食べ物』といった定義もあります。

それが1985年ごろから、比較的昔からその土地にある伝統的なご当地料理のことを『B級グルメ』と呼ぶようになり、2006年に『B-1グランプリ』が開かれるようになった頃から、地域の伝統的なご当地料理でなくても、その土地にちなんだ庶民的な料理なら『B級グルメ』と称するように概念が変わりました」

Q.「B級グルメ」の「B」とは何ですか。何かの言葉の略なのでしょうか。

小倉さん「何かの言葉の略というわけではありません。『B級映画』のように、『A』『B』『C』とランキングを表現する頭文字として、『B級グルメ』と呼ばれています。しかし、グルメも映画も、通常はA級よりランクが下がるといったマイナスのイメージでは使われていません。より身近で良質、満足度が高いけれど、安価であるなどの意味合いが強いといえるでしょう」

Q.「B級グルメ」があれば、「A級グルメ」という言葉も存在するのでしょうか。存在する場合、どのような意味ですか。

小倉さん「『A級グルメ』は、2010年に新潟県で行われた『雪国A級グルメ』というプロジェクトから使われ始めたとされています。『気候風土にあった昔からの食が失われつつある中、その食文化を守り、次代に残していこう』というコンセプトのもと、新潟県を中心に、土地の食材を生かし伝統の調理法で作った料理を提供する旅館や飲食店、土産物店などを、永久に守りたい味として“雪国A級グルメ”に認定するものです。

また、一部の自治体は、大切にしたいと考える地元で取れる食材や、生産される食品・飲料を『A級グルメ』と位置づけ、2018年には『にっぽんA級(永久)グルメのまち連合』を設立しています。

『A級グルメ』は、こうした地産地消などの意味合いのほか、現在では『B級グルメ』よりワンランク上の『手の込んだ高級料理』という意味で、高値の料理や高級有名店の料理などに使われることが多くなっています」

Q.ネットで検索すると、「C級グルメ」という言葉もあります。どのような意味で使われていますか。

小倉さん「『C級グルメ』は、『B級グルメよりも安い』といった、主にへりくだった意味合いで使われています。例えば、食パンに、水溶き小麦粉とパン粉を付けてラードで揚げる感じで焼いた『パンカツ』は、八王子のC級グルメとして親しまれています。

また、特定のメニューではなく、地元食材を利用した料理全体を『C級グルメ』と呼び、埼玉県小美玉(おみたま)市や伊豆大島などで、『C級グルメ選手権』といったイベントが開催されています。

C級の『C』は、ランキングを表現する頭文字というだけではなく、Citizen(市民)やCommunity(地域)、Country(地方)、Cheap(安価な)、Challenge(挑戦)、Communication(人と楽しむ)など、幅広くさまざまな意味が込められています」

Q.なぜ、「〇級グルメ」とアルファベットを用いているのでしょうか。今後、「D級グルメ」「E級グルメ」などが、生まれてくる可能性があるのでしょうか。

小倉さん「『〇級』には、簡潔で分かりやすく、覚えやすいという利点があります。日本では昔から、『松・竹・梅』などの分け方がありますが、アルファベットの方が、現代において、若い人にも受け入れられやすい意味もあるでしょう。

『D級グルメ』や『E級グルメ』も存在はしますが、今のところ明確な定義はありません。『D級グルメ』は、主に個人がSNSなどで発信する際に使われているようで、B級グルメよりも安価であったり、あるいは、我流の食べ方であったり、それらを楽しんで食べるときに『D級』と表現していることが多いようです。

『E級グルメ』は、エコやexcellent(優秀な)の頭文字の『E』にちなみ、すでに多く用いられています。町おこしの一貫としてE級グルメイベントや、コンテストなどが開催されており、地産地消、地域の産物を守る、規格外の食べ物を食べ切る、保存食を無駄にしないなど、幅広く『E級グルメ』は使われているようです。

例えば、大分県では、2012年度から食品ロスを削減するための取り組みとして、『E級グルメコンテスト』を実施しています。食材を無駄なく活用し、エネルギー消費を抑えた環境に優しい料理レシピを広く募集した、エコ料理コンテストになっています」

(オトナンサー編集部)

【画像】「浜松ギョーザ」に「富士宮焼きそば」…一度は聞いたことがある各地の「B級グルメ」

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小倉朋子(おぐら・ともこ)

トータルフードコンサルタント、大学非常勤講師、日本箸文化協会代表

飲食店、企業、宿泊業などのメニューを中心としたフードコンサルティング、コンセプト立案、ロゴマーク作成、戦略プラン立案などを一括して請け負う。テーブルマナーと食を総合的に学べる教室「食輝塾」を20年以上主宰。亜細亜大学、東京成徳大学で非常勤講師。日本箸文化協会代表でもある。トレンド分析、食文化、ダイエット、食育など、食に関する幅広い専門性を持つ。著書は監修本含め50冊以上あり、ベストセラー「世界一美しい食べ方のマナー」のほか、「やせる味覚の作り方」「メニュー開発論」「愛さる一人店のつくり方」など。「世界一受けたい授業」「芸能人格付けチェック」「チコちゃんに叱られる」など、メディア出演も多数。トータルフード( http://www.totalfood.jp

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