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物価高でも「おにぎり店」ブーム なぜ? 見解を飲食店コンサルタントに聞く

近年、おにぎり店が増え続けているのはなぜなのでしょうか。飲食店コンサルタントに聞きました。

おにぎり店が増加している理由は?(画像はイメージ)
おにぎり店が増加している理由は?(画像はイメージ)

 近年、首都圏を中心に「おにぎり店」が増え続けています。こうした店ではすじこや卵黄など、さまざまな食材を使ったおにぎりが売られており、中には、行列ができる店もあります。

 物価高が続く中、なぜおにぎり店が増え続けているのでしょうか。ブームは続くのでしょうか。飲食店コンサルタントの小倉朋子さんに聞きました。

片手で手軽に食べられる点が人気に

Q.近年、おにぎり店が増加していますが、なぜなのでしょうか。考えられる原因について、教えてください。

小倉さん「ブームの背景の一つにコロナ禍があります。テイクアウト需要の高まりにより、持ち帰りしやすいおにぎりは需要がありました。また、1人で食べる場面が増えた中で、スマホを見ながら食事を済ませる人も多く、片手で食べられるおにぎりはスマホ時代に重宝される食べ物になっているという背景もあります。

2023年産のコメの価格は高騰しているといわれていますが、それでもコメは小麦よりも比較的価格が安定しており、安価で食後の満足度が高いということもあります。

さらに、物価高や将来への漠然とした不安を感じる人が多い中、昔ながらの親しみのあるコメの安心感もあるのでしょう。最近では具材のバリエーションが豊富になり、安心感だけではなく新しさも加わっている点が人気につながっていると考えます」

Q.では、企業がおにぎり店を出店すると、どのようなメリット、デメリットがあるのでしょうか。

小倉さん「出店するメリットとして、低予算で出店できることがあります。仕込みから販売まで、比較的小さなスペースで行うことが可能なため、設備投資も低く抑えられます。また、1人体制で店舗展開をすることができるため、人件費も削減できます。

このほか、さまざまな食材を使用することが可能で、食材に合わせて地域性を出すことができます。また、ベジタリアンの人向けに商品開発をしたり、食物アレルギーへの対応もしやすかったりなど、客層を選ばずに作りやすい商品です。

手で握っている店もありますが、おにぎりの型を使っている店も少なくありません。料理のプロでなくても、店を出しやすいといえます。

一方、出店しやすいからこそ競争も激しいため、今のブームが落ち着いたときからが勝負といえるかもしれません。専門店の中には、今後、コメの価格が本格的に上昇した際に利益を出すのが厳しい店が出る可能性もあります」

Q.おにぎり店のおにぎりは、1個200~300円程度で売られていることが多く、コンビニやスーパーで売られているおにぎりと比べても決して安いとは言えません。それでもなぜ売れ続けているのでしょうか。

小倉さん「店舗ごとにコメの種類や食感、具材のバリエーションなど、さまざまな特徴があります。また、握りたてのおにぎりを出す店や、購入した商品を店内で食べることができる店もあるなど、各店舗が付加価値をつけています。

ハンバーガーのような形で、白米で具材を挟むタイプのおにぎりもあり、こうした『進化系おにぎり』には話題性があります。コンビニのおにぎりが売れていないわけではありませんが、ブームになったことで、より専門店ならではのクオリティーや個性を求める傾向があると考えられます」

Q.おにぎり店のブームは、今後も続く可能性があるのでしょうか。それとも、一時期急増した唐揚げ店のようにブームがすぐに終わる可能性があるのでしょうか。

小倉さん「今後も、需要はある程度維持されると思います。日本国内だけではなく、海外でもおにぎりの認知度は上昇しており、海外で出店する店も増えています。すしよりも手軽に作れて、地域や文化に合わせた具材を入れることができるため、利便性もあります。

また、近年は炊飯器の売り上げが伸びたり、コメの種類にこだわる人が増えたりするなど、老若男女問わず、コメのおいしさを再確認もしています。おにぎりは、日本人にとって飽きのこない食べ物でもあるため、定番料理として安定した人気が続くのではないでしょうか」

(オトナンサー編集部)

【画像】どれもおいしそう! これがおにぎりの“定番の具材”です

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小倉朋子(おぐら・ともこ)

トータルフードコンサルタント、大学非常勤講師、日本箸文化協会代表

飲食店、企業、宿泊業などのメニューを中心としたフードコンサルティング、コンセプト立案、ロゴマーク作成、戦略プラン立案などを一括して請け負う。テーブルマナーと食を総合的に学べる教室「食輝塾」を20年以上主宰。亜細亜大学、東京成徳大学で非常勤講師。日本箸文化協会代表でもある。トレンド分析、食文化、ダイエット、食育など、食に関する幅広い専門性を持つ。著書は監修本含め50冊以上あり、ベストセラー「世界一美しい食べ方のマナー」のほか、「やせる味覚の作り方」「メニュー開発論」「愛さる一人店のつくり方」など。「世界一受けたい授業」「芸能人格付けチェック」「チコちゃんに叱られる」など、メディア出演も多数。トータルフード( http://www.totalfood.jp

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