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店内放送の「川中さま」 “万引犯”を指しているのは本当?

商業施設の「店内放送」では、客に分からない「隠語」を使ってアナウンスを行うことがあり、中でも「川中さま」という名前が出たときは万引犯を指しているそうです。本当でしょうか。

店内放送「川中さま」はもしかして…
店内放送「川中さま」はもしかして…

 百貨店やスーパー、ドラッグストアで買い物をしているとき、従業員がレジの応援を要請したり、担当者を呼び出したりする「店内放送」をよく聞きます。この放送では、店員同士の意思疎通のため、客に分からないように「隠語」を使うこともあるそうです。特に、放送で「川中さま」という名前が出たときは、万引犯を指している場合があるとネット上にありますが、本当でしょうか。経営コンサルタントの大庭真一郎さんに聞きました。

「買わなかった」が由来

Q.商業施設の店内放送で、店員同士の意思疎通のため、客に分からないように隠語を使っているのは本当ですか。

大庭さん「本当です。緊急で店員同士が共有する必要がある内容を、直接的な言葉で表現すると、客に悪い印象を与えてしまう、あるいは混乱させてしまうことを防ぐためです。

例えば、店内で万引行為が発生した場合、『万引が行われています』といった直接的な表現で店内放送を流すと、『店内に犯罪者がいるのか』との不安を客に与えてしまいます。あるいは、店内でゴキブリなどの害虫が目撃された場合、『害虫がいます』のような直接的な表現で放送を流すと、店内が不衛生なのではないかという悪い印象を客に与えてしまいます。

このような事態の発生を防ぐために隠語が使われています。隠語は多くの商業施設で共通するものもあれば、それぞれの商業施設で独自に使われているものもあります」

Q.店内放送で「川中さま」という名前が出たときは、万引犯を指している場合があるとネット上にありますが、本当ですか。本当の場合、なぜ、万引犯のことを「川中」という名前で呼ぶのですか。

大庭さん「店が万引犯を発見したとき、『川中さま』という隠語を使い、店内放送で店員向けの連絡を行うことがあるのは事実です。『買わなかった(かわなかった)』という意味合いで『川中(かわなか)』という言葉を使っているというのが通説です。

その他にも、万引犯は『万引をした=レッドカード』の意味合いで『赤井さま』という隠語が使われているケースもあります。さらに、万引しそうな不審な動きをしている客は赤になる手前という意味合いで『桃井さま』という隠語が使われているケースもあります」

Q.店内放送では、どのように「川中さま」を使ってアナウンスするのですか。

大庭さん「万引犯や万引しそうな人を発見した場合、犯行を未然に防止し、あるいは速やかに取り押さえるために、付近にいる店員に注意を促し、店員間で連携を図る必要があります。そのことを知らせるための店内放送なのですが、客に不安を与えないためにも、また、万引犯に警戒されないためにも、日常的な業務連絡を装ったアナウンスを行います。

例えば、『○○の御用で川中さまというお客さまが2階の○○でお待ちになっていますので、○○フロアのスタッフは対応をお願いします」などのアナウンスです」

Q.万引犯ではなく、本当に「川中さま」に要件があり、店内放送を使うときには、どのようにアナウンスしているのでしょうか。

大庭さん「この場合は相手の名前や要件、要望事項などを直接的に伝えるアナウンスをすることで使い分けています。

例えば、店が川中という客に対して伝えたいことがある場合、「お客さまにお呼び出しを申し上げます。○○からお越しの川中さま、お伝えしたいことがございますので、2階○○までお越しいただけますよう、お願い申し上げます」などのアナウンスです。

『○○からお越しの』などの『川中さま』を具体化する表現が使われている場合は、実際の用件に対するアナウンスだと考えていいと思います」

Q.万引犯の隠語以外にも、どのような隠語がありますか。

大庭さん「ゴキブリなどの害虫を『太郎さん』といった人の名前で呼ぶケースがあります。また、万引を防ぐために警備の見回りを強化したいとき、客に不安を与えないために『補充をお願いします(警備要員の補充)』という隠語を用いているケースもあります。

さらに、スーパーマーケットなどのレジが混雑しているとき、他の店員にレジの応援に行かせる場合、『○○さん、100番をお願いします』というような言い方を行っているケースもあります。

直接的に『レジが混雑している』と言うと、客に『レジが混んでいて時間がかかりそうだから、買い物を早く切り上げよう(早くレジに向かわなければ)』と思わせてしまいます。そうすると、店側が販売機会を失ったり、レジの混雑に拍車がかかったりすることがあるため、それらを防止する狙いです」

(オトナンサー編集部)

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大庭真一郎(おおば・しんいちろう)

中小企業診断士、社会保険労務士

東京都出身。東京理科大学卒業後、企業勤務を経て、1995年4月に大庭経営労務相談所を設立。「支援企業のペースで共に行動を」をモットーに、関西地区を中心に企業に対する経営支援業務を展開。支援実績多数。以下のポリシーを持って、中堅・中小企業に対する支援を行っている。(1)相談企業の実情、特性に配慮した上で、相談企業のペースで改革を進めること(2)相談企業が主体的に実践できる環境をつくりながら、改革を進めること(3)従業員の理解や協力を得られるように改革を進めること(4)相談企業に対して、理論より行動重視という考えに基づき、レスポンスを早めること。大庭経営労務相談所(https://ooba-keieiroumu.jimdo.com/)。

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