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森法相提出で話題 「進退伺」は辞表や退職願と何が違う? 会社はどう対応?

進退伺に企業はどう対応?

Q.進退伺を受けた側は通常、どのような対応を取るのでしょうか。「慰留する」「慰留はするが何らかの処分をする」「辞任を求める」「辞職を求める」に分けて、具体的な流れを教えてください。

小野さん「組織によって違いますが企業の場合、基本的には、人事権を持つ人と社長などのトップが就業規則などを考慮しながら、協議の上で決めていることが多いと聞いています。

流れは4パターンのいずれも、会社が出した結論を本人に伝えて終わりです。そもそも、進退伺は責任の取り方の判断を上司・組織に委任しているわけですから、仮に結論に不満があったとしても、それについて異議を申し立てることは相当ではないからです。

それを踏まえて、『伝えて終わり』の進退伺の返事を会社や上司の側から、ワンランク上のコミュニケーションにするためのコツを場合分けしてお伝えします。キャリアコンサルタントとしてお伝えしたいポイントは『相手のこれからのキャリアを共に考える姿勢を持つ』ということです。

(1)慰留する場合
慰留する場合は、今回の失敗をどう生かすかなどの振り返りを上司と共に行いながら、継続的なフォローアップも一緒に伝えることが望ましいでしょう。慰留に応じたとしても、大きなミスは消えません。次につながるプロセスを共に歩めるとよいですね。

(2)慰留はするが何らかの処分をする場合
部下の気持ちの面に深く配慮しましょう。例えば、『処分』という表現ではモチベーションを下げてしまうかもしれません。『未来に向かってやり直すためのコストを負担してほしい』と言い換えた上で、これからの仕事について話していくなどの配慮が大切になるでしょう。

(3)辞任を求める場合(※役職を辞めるが、会社にはとどまる)
辞任を求める場合は、辞任後のポジションについての理解を深めていくといいでしょう。仕事についての理解がないままで辞任させてしまうと、仕事のやり方などについていけず、結局は退職してしまうリスクが考えられます。

(4)辞職を求める場合
辞職を求める場合であっても、次のキャリアに向けての相談などはしっかりと受けるべきです。もちろん、本人の責任ですから、必要ないとも思えますが、世間は狭いです。同じ業種で転職すれば、嫌でも関わる可能性が出てきます。『責任は取ってもらうことにはなるけど、気持ちよく退職してもらう』という心掛けがあれば、双方にメリットとなるのではないでしょうか」

Q.企業で進退伺を受けての退職の場合、会社都合退職になるのでしょうか、それとも自己都合退職になるのでしょうか。

小野さん「進退伺をすることと、会社都合の退職になるかは別の話です。そもそも、進退伺は大きなミスをしてしまった場合の責任の取り方の話であって、会社都合で退職させてもらう制度ではないからです。実際、懲戒が相当という場合に温情を狙って進退伺を行うというケースはよく聞きますが、処理としては自己都合退職扱いになっているケースを多く聞きます」

(オトナンサー編集部)

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小野勝弘(おの・かつひろ)

キャリアコンサルタント、一般社団法人セルフキャリアデザイン協会代表理事、株式会社ファサディエ EAP事業部 新規事業準備室

1969年東京都生まれ。桐蔭学園工業高等専門学校電気工学科卒業。2001〜2016年までIT系企業に所属。エリアマーケティングツールに携わり、営業・商品企画・事業企画・人材教育・労務管理などを経験。企業のホワイト化・健康経営・人事労務は、今後の会社経営に欠かせない重要な領域と考え、「労働者と企業のための人材定着、若者雇用促進による企業の生産性向上」をテーマとする。2016年〜現在は株式会社ファサディエ EAP事業部所属。2018年に一般社団法人セルフキャリアデザイン協会(https://self-cd.or.jp/)を設立し、キャリアコンサルタント、EAPコンサルタントとして活動中。

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