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都市伝説なのか…? 企業の「顔採用」は実際に行われている? キャリア専門家に聞く

企業の採用活動で話題になることの一つに「顔採用」がありますが、実際に行われているのでしょうか。それとも、単なる都市伝説なのでしょうか。

「顔採用」は実際に行われている?
「顔採用」は実際に行われている?

 企業の採用活動で話題になることの一つに、応募者の容姿も採用基準にする「顔採用」の有無があります。「顔採用なんて都市伝説…」と言う人もいる一方で、いざ人気企業の新入社員を見てみると、美男美女ばかりだったという声も聞きます。募集要項などで公に「顔を採用基準にしている」と掲げている企業はありませんが、実際、顔採用は行われているのでしょうか。キャリアコンサルタントの小野勝弘さんに聞きました。

容姿だけの「顔採用」はない

Q.日本の企業の採用活動で「顔採用」はあるのでしょうか。あるとすれば、近年、顔採用を行う企業は増えているのですか。

小野さん「キャリアコンサルタントなど人事の仕事に12年間携わっていますが、私の知る限り、顔採用はありません。少なくとも『顔採用をしている』と公表している企業に出合ったことはありません。また、キャリアコンサルティングを行う中でも、『顔採用された』と明言した人は見たことがありません。

ただし、顔だけではなく、身だしなみや印象面全体を評価しているケースはあるでしょう。言い換えれば、『他の要素とともに印象面もしっかりと判断する採用』であれば、行われている可能性はあります。

また、仮に顔採用があったとしても、減っていると考えるのが妥当です。例えば、ユニリーバジャパンが顔写真だけでなく、ファーストネームまで履歴書に記載することを不要とするなど、企業が人物本位の採用を加速させてきている傾向があるからです」

Q.では、「印象面もしっかり評価する採用」のメリット、デメリットは何ですか。

小野さん「メリットは、会社の名前を背負う社員が顧客や取引先に好印象を与える可能性があることです。例えば、ヨレヨレのスーツに寝ぐせで訪問する人と、パリッとしたラインが整い、頭髪も整っている人とでは印象が違いますし、話を聞く気にも違いが出ます。人前に立つための力として、印象面を評価するメリットはあるといえます。

デメリットは『人財』を獲得できなくなったり、仕事の効率が上がらなかったりすることでしょう。顔を含む印象面の良しあしと、仕事ができるかどうかは全く別の話です。少なくとも、美男美女かつ仕事ができる人ばかりを採用しようとするよりは、印象だけにこだわらず、能力面を重視した対応の方が幅広く人財を募集できるでしょう」

Q.採用時に印象面も重視するのは、どのような業界でしょうか。

小野さん「見たときの印象を特に重視するのは、人に接する機会が多い業界や、服装・メークなど身だしなみに関係する業界でしょう。具体的には、美容やファッション、航空業界の客室乗務員(CA)、化粧品業界、マスコミ業界などは、印象面を特に大切にしている可能性が高いです。

また、職種でいえば、営業部門や受付業務など、毎日多くの人と接する機会のある業務を担当する人については、面接という機会を利用して印象面をしっかりと評価していると考えられます」

Q.印象面を重視する業界、職種に応募したいとき、仮に印象面に自信がなくても諦める必要はないのでしょうか。応募希望者からこうした悩みを聞いたとき、どのようにアドバイスされていますか。

小野さん「諦める必要はありません。相談があったら、『熱意そのものがあなたの魅力の一つです』といった話や、『なぜ、容姿を重視するのか』ということを一緒にひもときながらアドバイスをしています。

また、容姿に自信がないことだけで自信がなくなっている人が多い傾向を感じますので、その人が今までやってきたことを一緒に棚卸ししながら、生かせることや強みを言葉にしていくことで、面接官に何を伝えるか/伝えたいかを一緒に考えていくこともしています。

印象は顔だけではありません。態度や熱意、口調、表情、整った髪、服装、あいさつ、歩き方など、実にさまざまなことが影響します。顔だけの採用というのは基本的にありませんので、自分のよさを見つけながら、行きたい企業で何をしていきたいか。貢献できるのかを共に言葉にしていきます」

(オトナンサー編集部)

小野勝弘(おの・かつひろ)

キャリアコンサルタント、一般社団法人セルフキャリアデザイン協会代表理事、株式会社ファサディエ EAP事業部 新規事業準備室

1969年東京都生まれ。桐蔭学園工業高等専門学校電気工学科卒業。2001〜2016年までIT系企業に所属。エリアマーケティングツールに携わり、営業・商品企画・事業企画・人材教育・労務管理などを経験。企業のホワイト化・健康経営・人事労務は、今後の会社経営に欠かせない重要な領域と考え、「労働者と企業のための人材定着、若者雇用促進による企業の生産性向上」をテーマとする。2016年〜現在は株式会社ファサディエ EAP事業部所属。2018年に一般社団法人セルフキャリアデザイン協会(https://self-cd.or.jp/)を設立し、キャリアコンサルタント、EAPコンサルタントとして活動中。

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