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森法相提出で話題 「進退伺」は辞表や退職願と何が違う? 会社はどう対応?

賭けマージャン問題での検事長辞職を巡り、森雅子法相が「進退伺」を首相に提出したことが話題になりました。そもそも、進退伺とは何でしょうか。

森雅子法相(2020年5月、時事)
森雅子法相(2020年5月、時事)

 東京高検検事長だった黒川弘務氏が賭けマージャン問題で辞職したことを巡り、森雅子法相が5月21日、「進退伺」を安倍晋三首相に提出したことが話題になりました。森法相は「安倍首相に強く慰留された」として大臣の職にとどまりましたが、ネット上では「辞表を出すべきだったのでは?」「茶番だ」と批判の声も上がっています。

 この「進退伺」は「辞表」「退職願」と何が違うのでしょうか。キャリアコンサルタントの小野勝弘さんに聞きました。

自己決定の放棄でもある?

Q.「進退伺」とは、どういうものでしょうか。

小野さん「大きなミスを自分がしたり、部下のミスを防げなかったりして、会社や役所など自分が所属する組織に大きな迷惑をかけた人が、『責任の取り方』を上司や組織(会社や役所など)に委任するときに使います」

Q.進退伺と「辞表」「退職願」とは何が違うのでしょうか。

小野さん「進退伺は『責任の取り方を組織(会社など)に委ねる』という意思表示ですが、辞表や退職願は組織に対する『退職や辞職の意思表示』です。

例えば、同じミスをした場合であっても、辞表を提出すれば、『責任を取って辞める』という構図となりますが、進退伺を提出すれば、『責任の取り方は上司や組織』が行うことになります。極端な話、組織が『問題ない』と判断すれば、おとがめなしという構図があり得るのが進退伺であると言えるでしょう。

ただ、私たちキャリアコンサルタントからすると、辞表も退職願も進退伺も自己決定の過程に問題がある場合が多く、あまり良いとは思えません。

辞表や退職願の場合は本当に、組織に大損害を与えるほどのミスと言えるのでしょうか。本人が大きなミスだと思い込んでいるだけの場合もありますし、『上司が怖い』など人間関係におびえて出した判断かもしれません。いずれにせよ、辞表や退職願を出したという事実だけでは、本当にそれが議論が尽くされた後の判断なのかは疑問です。

進退伺の場合は『自分の判断を相手に委ねる』という、自己決定を放棄したとも取れる部分に問題があると思います。上司や組織に投げてしまえば、判断はしてくれるでしょう。しかし、それはあまりにも組織依存になってしまうという危険性も考えておくべきでしょう。

人生の中で訪れるさまざまな転機の中には、組織に所属していない場合や、誰も判断してくれず自分で決めなければならない場合も数多くあります。自分の力で人生を決めていく力をつけるためにも、しっかり自分で考えるべきだと思います」

Q.進退伺には、必ず書くべき事項や書式があるのでしょうか。

小野さん「進退伺は他の人や組織に自分の責任の取り方を決めてもらうものですから、必ず書くべき事項はあります。

一つのコツとしては、自分に責任があるということを『5W2H』を意識して書くとよいでしょう。すなわち、いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのようにやって、どの程度のミスを起こしたかを、正確に記載すべきです。

その上で、心よりの謝罪と、組織に責任の判断を委任する旨を書き添えるとよいでしょう。書式は特にありませんが、インターネットで検索すればテンプレートを見つけることはできます」

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小野勝弘(おの・かつひろ)

キャリアコンサルタント、一般社団法人セルフキャリアデザイン協会代表理事、株式会社ファサディエ EAP事業部 新規事業準備室

1969年東京都生まれ。桐蔭学園工業高等専門学校電気工学科卒業。2001〜2016年までIT系企業に所属。エリアマーケティングツールに携わり、営業・商品企画・事業企画・人材教育・労務管理などを経験。企業のホワイト化・健康経営・人事労務は、今後の会社経営に欠かせない重要な領域と考え、「労働者と企業のための人材定着、若者雇用促進による企業の生産性向上」をテーマとする。2016年〜現在は株式会社ファサディエ EAP事業部所属。2018年に一般社団法人セルフキャリアデザイン協会(https://self-cd.or.jp/)を設立し、キャリアコンサルタント、EAPコンサルタントとして活動中。

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