トランプ大統領弾劾へ? クリントン氏のケースを振り返る
トランプ大統領の場合は「政治の本質」
クリントン氏の弾劾のケースでは、疑惑の浮上から弾劾裁判の決定まで1年以上かかり、そこから決着まで、さらに2カ月近くかかった計算です。弾劾プロセスとは、これほどの時間を要するものなのかもしれません。
ところで、トランプ大統領が弾劾されると仮定すれば、そこでは「司法妨害」「権力濫用」、今後の展開次第では「偽証」などが問われることになるでしょう。それらはクリントン氏のケースと類似するものです(同氏も「権力濫用」を指摘されたが、下院本会議での弾劾決定時に不採用となった)。
もっとも、両者の「事件」の本質は大きく異なります。クリントン氏のケースは、研修生との「不適切な関係」という個人の倫理に関するものであり、大統領の職務遂行に影響があったという証拠はありません。一方で、トランプ大統領が問われるとすれば、それは政治(選挙制度)あるいは外交の本質に関わるものとなるはずであり、極めて深刻な事態と言わざるを得ません。
もう一つの違いは国民の支持です。弾劾裁判の決定後も、クリントン氏は7割前後の支持率を維持しており、辞職を求める声は3割程度だったそうです。上院での弾劾裁判は、一部の下院議員が検察役、全上院議員が陪審員となって進められます。そこでは、厳密に法を犯したかどうかではなく、極めて政治的な判断が求められるようです。その点がトランプ大統領にとってプラスになる、ということは考えにくいのかもしれません。
(株式会社マネースクウェア・ジャパン チーフエコノミスト 西田明弘)
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