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米政府を待ち受ける「シャットダウン」と「デフォルト」の危機

もう一つの危機「デフォルト」

 そして、秋になると、もう一つの財政危機が浮上する可能性があります。それは米政府のデフォルト(債務不履行)です。現在、米政府の債務残高はデットシーリング(法定上限)にほぼ到達しています。現在の米国のように財政収支が赤字である以上、債務残高は増加します。

 そこで、財務省は裏ワザを使って、デットシーリングの対象となる債務が増えないように「やり繰り」しています。ただし、それも秋には限界がくるということらしいのです。そうなれば、国債の利払い(=新たに発生する債務)が滞るという事態も想定されます。いわゆるデフォルトです。これを回避するためには、議会がデットシーリングを引き上げるか、無効化する必要があります。過去に、デットシーリングは予算交渉における「バーゲニングチップ(交渉材料)」とされてきました。

 トランプ大統領の姿勢も気になるところです。昨年5月、共和党の指名を確実にしたトランプ候補は、インタビューで「景気が悪化すれば、債務の再交渉もありうる」と語りました。債務の再交渉とは、利払いの猶予や元本の割り引きを指すとみられますが、債券発行時の条件を後に変更することは、広い意味で「デフォルト」と認定される可能性があります。

 このインタビューが物議を醸したことで、トランプ候補は数日後に発言を訂正しました。現在のスタンスは不明ですが、ビジネス感覚が抜けていないとすれば、交渉の過程でアクシデント的にデフォルトが起きる可能性もあるのではないでしょうか。

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西田明弘(にしだ・あきひろ)

株式会社マネースクウェア・ジャパン(M2J)市場調査部チーフエコノミスト

1984年日興リサーチセンター入社。米ブルッキングス研究所客員研究員などを経て、三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社。チーフエコノミスト、シニア債券ストラテジストとして高い評価を得る。2012年9月マネースクウェア・ジャパン(M2J)入社。現在、M2Jのウェブサイトで「市場調査部レポート」「市場調査部エクスプレス」「今月の特集」など多数のレポートを配信するほか、テレビ・雑誌などさまざまなメディアに出演し活躍中。株式会社マネースクウェア・ジャパン(M2J)(http://www.m2j.co.jp)。

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