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大学名で門前払い 「学歴フィルター」は存在するのか【就活・転職の常識を疑え】

就職活動や転職活動には、さまざまな「常識」があります。しかし、それは本当に正しいのでしょうか。企業の採用・人事担当として、2万人超の面接をしてきた筆者が解説します。

「学歴フィルター」は本当に存在する?
「学歴フィルター」は本当に存在する?

 新卒学生の就職活動についての言説の中で、毎年繰り返されるものの一つが、いわゆる「学歴フィルター」の存在の有無についてです。以前はもっときつい言葉で「学歴差別」と呼ばれていたこともあります。もう何十年も続く話題ですが、今回は「学歴フィルター」について、企業の採用・人事担当として2万人超の面接をしてきた筆者が解説します。

門前払いという意味では「ない」

 学歴フィルターのあるなしを言うのであれば、まずは定義をしなければなりません。もし、「学歴」によって「門前払い」「絶対に採用しない」といったことがあるのかどうかという話であれば、基本的には「ない」と断言できます。この採用難時代、良い評価をした人を学歴を理由に落とすわけがありません。

 先般、ある日系大手メーカーの人事部長とお話した際も、「どれだけバラエティーに富んだ学校から採用できたかということを、採用における重要指標として追いかけている」とおっしゃっていました。こういう話は珍しいことではありません。

 どんな企業でも、社員が例えば、早稲田、慶応出身者ばかりになることは望んでいません。「ダイバーシティー」(多様性)は組織の創造性を高めたり、採用力を高めたりすると考えられており、企業の人事における一つの目標になっているくらいです。

 しかしもし、会社説明会に学校別の人数枠を設けるとか、スカウトメールを送る対象を学校で選別するとか、学校によって、リクルーターを研究室やゼミに派遣したり、学内説明会に出るかどうかを決めたりするという意味なら、これは明確に「ある」です。

 企業が採用にかけることができるマンパワーやお金には、当然ながら上限があります。50万人以上いるとされる就職活動中の学生全員に同じ対応をできるかと言えば、どんな企業でも不可能でしょう。そうすれば何らかの方針で「選択」を行わざるを得ません。

 その選択の軸として、学歴がよく使われるというわけです。それは学歴(≒偏差値≒学力)が、数学や国語などの知的能力と相関関係があり、そして、知的能力と仕事の成果に相関関係があると考えられているからです。実際、多くの企業が自社データで分析し、「学歴は仕事の成果を予測する確率が高い」と考え、自分たちから狙いを定める際に学歴を一つの指標としています。

 もちろん、会社によってはその軸が「理系」になったり「体育会」になったりすることもあります。ただ、結果として今ではまだ、学歴が一番普遍的ということです。

「個」として認識される努力を

 ただ、出身学校の偏差値が低くても絶望しないでください。というのも、結局のところ学歴をどうのこうの言うのは「集団」に対してだけで、個人を見るときにはあまり関係がなくなるからです。

 何とかして「個」として認識されれば、学歴など関係なく、一人の人として普通に評価対象とされます。方法はあります。例えば、出身校と関係なくOB・OG訪問を(社会人は皆、自分のOB・OGだと思って構いません)してみるのは、おすすめです。

 さらに、もう一つの良い情報は採用の「科学化」です。人事上のさまざまな判断をデータ分析で行う「HR Tech」(Human ResourceとTechnologyの造語)と呼ばれる領域がありますが、これが各社でもっと進めば、今は知的能力ぐらいにしか見いだされていない仕事の成果との相関関係を、性格など学歴以外の属性との間にも発見できるかもしれないからです。

 AI選考(エントリーシートや面接をAIなどで選考する)も、今はリスクばかり言及されがちですが、学歴「以外」による選考を進める可能性があるという意味では、期待の領域です。

 要は、企業はいろいろな学校の人を採りたいものの候補者が多い場合、何らかの軸で選抜を行うしかない。それが、いまだに学歴しかないというだけのことです。変に卑屈になったり諦めたりする必要はありません。

 ただ、それを乗り越えるには、OB・OG訪問をしたり、インターンシップや合同企業説明会に参加したりして、自分を「個」として認識してもらう努力が必要です。そのエネルギーを消耗しないためにも、「学歴フィルター」についていろいろ悩むことはやめた方がよいのではないでしょうか。

(人材研究所代表 曽和利光)

曽和利光(そわ・としみつ)

人材研究所代表

1971年、愛知県豊田市出身。灘高校を経て1990年、京都大学教育学部に入学し、1995年に同学部教育心理学科を卒業。リクルートで人事採用部門を担当し、最終的にはゼネラルマネジャーとして活動した後、オープンハウス、ライフネット生命保険など多様な業界で人事を担当。「組織」「人事」と「心理学」をクロスさせた独特の手法を特徴としている。2011年、「人材研究所」を設立し、代表取締役社長に就任。企業の人事部(採用する側)への指南を行うと同時に、これまで2万人を超える就職希望者の面接を行った経験から、新卒および中途採用の就職活動者(採用される側)への活動指南を各種メディアのコラムなどで展開している。著書に「組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス」(共著、ソシム)など。

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