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年収2300万円医者と離婚、39歳女性が「養育費」の安定的支払いを勝ち取るまで(下)

「債権差押命令」とは何か?

 今回の場合、「夫が妻に、未成年の子の養育費として毎月30万円を子が満20歳に達するまで支払う」という約束を、家庭裁判所(離婚の調停)を通して書面化しておいたことが功を奏しました。裁判所が発行した書面(調書)があれば、約束した養育費が期日までに支払われない場合、夫の財産を差し押さえて未払い分を回収することが認められています(民事執行法22条)。また、14年前に判例が変更され(平成17年12月6日、最高裁判決)、債務が養育費の場合も診療報酬が差し押さえの対象に加えられることになりました。

 クリニックは患者に診察や治療等を行うと、患者が国民健康保険の場合は国民健康保険団体連合会、社会保険の場合は社会保険診療報酬支払基金に対してレセプトを提出します。連合会や基金はクリニックに対して、レセプトに記入した額の診療報酬を支払います。裁判所は連合会や基金に対して、クリニックに診療報酬を支払う前に妻の口座に未払い分を振り込むよう命じてくれる、というわけです(債権差押命令)。

 いわゆる「天引き」状態を実現することが可能で、しかも一度、差し押さえの手続きを踏めば、最終回(子が20歳に達するまで)まで自動的に天引きされるのでとても便利です(民事執行法152条2)。あくまで、裁判所と連合会(基金)とのやり取りで天引きを行うので債務者(夫)は邪魔のしようがありません。

 今回の場合、夫は翌月の生活費として30万円を振り込んだだけで、過去6カ月の生活費は手つかずのままだったので、そのことを理由に、すぐに差し押さえの手続きに踏み切ることが可能でした。里美さんは早速、債権差押命令の申立書を記入し、必要書類を一緒に地方裁判所へ提出したところ、裁判所はすぐにクリニックに債権差押命令の通知書を送付してくれたのです。そして無事、差し押さえに成功し、長期安定的に養育費を確保できたことで、娘さんを引き続き私立の中学校へ通わせることが可能になりました。

 このように、相手が医師の場合、他の職業では起こり得ない特殊な事情が多すぎるので難易度が高いです。里美さんのように何の理論武装もせず、プライドが高い医者と別れようとしても泣き寝入りするのがオチなので、要注意です。

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(露木行政書士事務所代表 露木幸彦)

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露木幸彦(つゆき・ゆきひこ)

露木行政書士事務所代表

1980年12月24日生まれ。いわゆる松坂世代。国学院大学法学部卒。行政書士・ファイナンシャルプランナー(FP)。金融機関の融資担当時代は住宅ローンのトップセールス。男の離婚に特化し行政書士事務所を開業。開業から6年間で有料相談件数7000件、公式サイト「離婚サポートnet」の会員数は6300人を突破し、業界最大規模に成長させる。他で断られた「相談難民」を積極的に引き受けている。自己破産した相手から慰謝料を回収する、行方不明になった相手に手切れ金を支払わせるなど、数々の難題に取り組み、「不可能を可能」にしてきた。朝日新聞、日本経済新聞、ダイヤモンドオンライン、プレジデントオンラインで連載を担当。星海社の新人賞(特別賞)を受賞するなど執筆力も高く評価されている。また「情報格差の解消」に熱心で、積極的にメディアに登場。心理学、交渉術、法律に関する著書を数多く出版し「男のための最強離婚術」(7刷)「男の離婚」(4刷、いずれもメタモル出版)「婚活貧乏」(中央公論新社、1万2000部)「みんなの不倫」(宝島社、1万部)など根強い人気がある。仕事では全国を飛び回るなど多忙を極めるが、私生活では30年以上にわたり「田舎暮らし」(神奈川県大磯町)を自ら実践し「ロハス」「地産地消」「食育」の普及に努めている。公式ブログ(https://ameblo.jp/yukihiko55/)。

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