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心配する親も…初めての生理「初経」が早まっているって本当? 早い場合の影響とは

女性とは切っても切り離せない「生理」。初めて迎える生理は「初経」と呼ばれますが、「初経を迎える年齢が早くなっているのでは」という声もあります。

初経の年齢が早くなっている?
初経の年齢が早くなっている?

 女性とは切っても切り離せない「生理(月経)」。初めて迎える生理は「初経(初潮)」と呼ばれ、一般的には小学校高学年(11歳~)の時期に経験する子どもが多いようです。しかし、近年は7~9歳ごろに初経を迎える子どもも珍しくないようで、「初経を迎える年齢が早くなっているのでは」という声も聞かれます。また、母親世代からは「閉経も早まるの?」など、閉経への影響を気にする声も。

 ネット上では「娘も9歳のときに初経がきました」「早すぎると心配になる」など、さまざまなコメントが寄せられています。初経に関するさまざまな疑問について、産婦人科医の尾西芳子さんに聞きました。

日本人の平均は12~13歳

Q.「初経」とはどのような現象でしょうか。

尾西さん「思春期に身長が急激に伸び、体脂肪率が17%を超えるようになると体が『子孫を残す準備ができた』と判断し、脳の『下垂体』と呼ばれる部分から、卵子を育てて排卵をさせるホルモンが分泌されるようになり、初めての月経を迎えます。これが『初経』と呼ばれるものです」

Q.初経とその後の月経の生理で、何らかの違いはありますか。

尾西さん「通常の月経は排卵の約2週間後に、不要になった子宮の中の膜がはがれて体の外に出てくるものですが、初経はまだうまく排卵を伴わなかったり、排卵後に子宮の中の膜を分厚くするホルモンが分泌されなかったりすることで、出血量は少なめです。

また、初経時はまだ子宮の入り口が非常に狭いため、経血が通過するときにかなりの痛みを伴うこともあります。この場合は、数回月経が来ると少しずつ子宮の入り口が開き、経血が通りやすくなるので痛みが和らいできます」

Q.医学的にみて、初経が「早い」「遅い」とは、おおよそでどのくらいの年齢のことを指すのでしょうか。

尾西さん「初経は一般に10歳から14歳で迎えることが多く、日本人の平均は12~13歳です。10歳未満で初経を迎えることを『早発初経』、15歳から18歳未満で初経を迎えることを『遅発初経』、18歳を迎えても初経がないことを『原発性無月経』といいますが個人差があり、体重やBMIが関与しているともいわれています。また、体格のよい女子の方が早く初経を迎える傾向にあります」

Q.近年「初経が低年齢化している」というのは事実でしょうか。

尾西さん「平均の初経年齢については、大阪大学人間科学研究科・日野林俊彦教授のデータによると、1961年から1990年にかけてはおよそ1歳早まっていますが、1990年代からは、ほぼ横ばいの12歳2カ月程度をキープしているため、初経年齢が急激に低年齢化しているということはありません」

Q.初経が平均より早い場合、子どもの体に何らかの影響はあるのでしょうか。

尾西さん「基本的には、単なる個人差であることが多いのですが、まれに『早期に急激に身長が伸びるものの、最終的には低身長のまま止まってしまう』『低年齢で陰毛が生えたり、乳房が大きくなったり、月経が来たりすることで心理的・社会的にストレスになる』などの問題がみられる『思春期早発症』を発症することがあります。また、初経が早い原因として、脳などに性ホルモンを出す腫瘍があるなどの問題がみられることがあります」

Q.初経を迎える年齢と、女性特有の病気や閉経年齢との相関関係はありますか。「初経が早いと閉経も早まるのでは」との声もあるようです。

尾西さん「閉経が早まるということはありません。ただ、初経が早いと、それだけ女性ホルモンに体がさらされている期間が長いため、乳がんや子宮内膜症といった、女性ホルモンによって進行する病気のリスクが高まるとされています」

Q.子どもが初経を迎えた際、もしくは初経が来ない(遅すぎる)場合、病院を受診する必要のある異常や症状はありますか。

尾西さん「まだ10歳未満で身長も低いのに初経が来た場合は、『胸が大きくなる』『陰毛が早く生えてくる』などの症状が出る思春期早発症の可能性があるので、病院を受診しましょう。一方、15歳を越えて18歳の間に初経の来る遅発初経は、単に脳から卵巣への指令が遅れているだけの他、甲状腺ホルモンの異常や、プロラクチンというホルモン分泌の異常、小児がんの治療歴や拒食症といったことが原因であることもあります。

また、18歳になっても初経が来ない原発性無月経の原因としては、子宮や卵巣、膣(ちつ)に先天的な問題があるケースが多くみられます。15歳になっても初経がない場合は、念のため一度受診してみるとよいでしょう」

Q.「娘の初経が早かった」ことを心配に思う親は少なくないようです。子どもの初経を気にする親に対して、医師の立場から伝えたいことはありますか。

尾西さん「初経の早い/遅いは、親としてはとても気になるところだと思いますが、初経の時期はかなり個人差が大きく、体格や栄養状態が関係していることも多いため、過度な心配は要りません。ただ、初経が早い場合は、本人や周りがまだ初経について十分理解しておらず、周りの一言でマイナスイメージを抱いてしまうことも少なくありません。まずは、親の立場から、月経の大切さについて話してあげてください。難しい場合は、産婦人科の医師がお話をさせていただくので、気軽にお子さんと受診してくださいね」

(オトナンサー編集部)

尾西芳子(おにし・よしこ)

産婦人科医(神谷町WGレディースクリニック院長)

2005年神戸大学国際文化学部卒業、山口大学医学部学士編入学。2009年山口大学医学部卒業。東京慈恵会医科大学附属病院研修医、日本赤十字社医療センター産婦人科、済生会中津病院産婦人科などを経て、現在は「どんな小さな不調でも相談に来てほしい」と、女性の全ての悩みに応えられるかかりつけ医として、都内の産婦人科クリニックに勤務。産科・婦人科医の立場から、働く女性や管理職の男性に向けた企業研修を行っているほか、モデル経験があり、美と健康に関する知識も豊富。日本産科婦人科学会会員、日本女性医学学会会員、日本産婦人科乳腺学会会員。オフィシャルブログ(http://ameblo.jp/yoshiko-onishi/)。

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