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大企業でパタハラ疑い事案続く…男性に「育休」を取らせたくないのが、企業のホンネ?

先日、大手企業で育休明けの男性社員が不利益を被る「パタハラ」が疑われる事例が相次ぎました。企業は本音では、男性社員に育休を取らせたくないのでしょうか。

男性の育休取得者は増えてきたが…
男性の育休取得者は増えてきたが…

 育休を取得した男性社員が復職後に嫌がらせを受ける、いわゆる「パタハラ」を疑われる事例が大手企業で相次ぎ、話題になっています。カネカでは、育休から復職後、すぐに転勤を命じられたと元社員の家族がSNSに投稿(会社側は「育休に対する見せしめ」を否定)、アシックスでは、復職直後に出向を命じられた社員が会社を提訴し、会社側は「誠実に交渉を続けて来た」と主張しているようです。

 大手企業を中心に、男性の育休取得を奨励する企業が増えてはいますが、企業の本音としては男性社員に育休を取ってほしくないのでしょうか。その真偽や背景を、社会保険労務士の木村政美さんに聞きました。

ほとんどの企業で育休取得に消極的

Q.企業は本音では、男性社員に育児休業を取ってほしくないのでしょうか。

木村さん「男性の育休を推進するか否かは、特に経営者の考えによるところが大きいでしょう。昨今、特に若年層で『ワーク・ライフ・バランス』を重視する人が増え、政府も『働き方改革』で『育児をしながらでも働くことができる社会』を推進しています。

この考えを企業が取り込むことで自社のイメージが向上し、優秀な人材の確保や定着にもつながります。経営者がその意識を持ち、なおかつ、社員の業務管理がしっかりと行われている企業であれば、男性の育休取得を奨励するでしょう。

しかし、ほとんどの企業においては、いまだに社内の体制が追い付かず、また女性に比べて男性の育休制度そのものが浸透していないので、男性に育休を取得させることには消極的かと思われます」

Q.男性社員に育休を取ってほしくない、あるいは、積極的には取得してほしくないと思う背景は。

木村さん「『子どもの面倒は妻が見るもの』『男性が育休を取ると、将来のキャリアに響く』などの先入観や偏見が根強く残り、育休取得に対して上司や経営者の理解を得られにくいことがあると思います。

また、育休取得のため男性社員が長期間現場を離れると、その社員が担当していた業務をどうするのかという問題が出てきます。同じ部署に所属している他の社員に振り分けるのか、それとも他方から人材を補充して業務にあたらせるのか、いずれにせよ事前に決めておく必要があります。

しかし、企業によっては慢性的な人手不足で余剰人員がおらず、時間外労働時間や仕事量の増加により社員から苦情が出るなどの理由で、他の社員に業務を振り分けることが難しいのです。新たな人材確保も困難である場合が多く、これらの背景が男性の育休取得をより困難にしていると思います。

もっとも、業務の振り分けの問題は女性が育休を取る場合も同様ですが、先述した先入観や偏見から、男性の方が育休取得のハードルが高いと思われます」

Q.育休取得後の男性社員に転勤を命じたり、休業前と違う仕事をさせたりすることはパタハラに当たるでしょうか。

木村さん「『パタハラ』とは、男性社員が育休の取得および育児支援目的の短時間勤務や、フレックス勤務を活用することへの妨害、ハラスメント行為を指します。具体的にいうと、制度の利用を拒否される、『出世に響く』など言葉による嫌がらせ、制度を利用したことによる降格、担当業務を外すなどが挙げられます。

もし、育休明けの社員の異動や配置転換を就業規則で定めていれば、その範囲内で会社に裁量がありますが、厚生労働省の指針により、育休後は原則として元と同じ仕事に復帰させるよう配慮することが定められています。正当な理由もしくは本人からの希望がないにもかかわらず、異動や配置転換を行えば、職権の乱用にあたり、パタハラとなる場合があります。育休の取得を理由とする不利益な取り扱いは、育児介護休業法で禁じられており、法律違反となる可能性もあります」

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木村政美(きむら・まさみ)

行政書士、社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー

1963年生まれ。専門学校卒業後、旅行会社、セミナー運営会社、生命保険会社営業職などを経て、2004年に「きむらオフィス」開業。近年は特にコンサルティング、講師、執筆活動に力を入れており、講師実績は延べ700件以上(2019年現在)。演題は労務管理全般、「士業のための講師術」など。きむらオフィス(http://kimura-office.p-kit.com/)。

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