オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

リアルではなくネットの世界で行われる現代版「生徒指導」、その実情とは?

活発化している「サイバー補導」

 現代の生徒指導とインターネット、SNS、スマートフォンを切り離すことは不可能に近いです。そのためでしょうか。今どきの子どもたちは、「自ら考える」ことをしなくなってきているように感じます。分からないことは、ネットで検索すればすぐに答えが出てきますし、疑問から答えに結び付くスピードが速いため、昔ほど自らの頭で考えたり悩んだりすることをしなくなっているように感じます。

 現代の子どもは、「リアル」と「ネット」の2つの世界を生きています。SNSやメッセージアプリなどを通じ、自分の思いや気持ちが文字となって可視化されやすい時代です。個人の性的嗜好(しこう)や欲求など、本来は外へおおっぴらに出すものではない内容も、SNS上に多数出ています。

 こうした背景から、先生たちの「巡回」にも変化が起きています。現代はリアルな街中を巡回しても、問題行動を起こす子どもたちの姿はほとんどありません。子どもたちのいる場所がリアルからネットへ移っているからです。そこで、先生たちの見守りの目もネット上に移らざるを得ません。SNS上に問題のある投稿や援助交際を募る書き込みがないかチェックし、青少年センターや警察などの公的機関も連携して、発見時には当該校に通知しています。こうした「サイバー補導」が活発に行われているのです。

子どもの問題は「スマホの中」

 子どもたちが「スマホの中」で問題に巻き込まれていく背景には、教室や家庭で先生や保護者が子どものすぐそばにいても、問題に「気付けない」事情が根強くあります。子どもの問題が、子どもの手のひらにあるスマホの中で起こっているからです。例えば、ゲーム内で課金を繰り返したり、お風呂の中で裸の写真を撮って送信したりする行為は、周囲に可視化されにくく、近くに保護者や先生がいても気付きにくいものなのです。

 さらに問題なのは、子どもたちの中で、こうした行為への「現実感」が欠如していることです。ゲームの課金も裸の写真を送信することも「ネットの世界」での行動で、タップ一つで簡単に行えてしまうため現実感がないのです。リアルな世界にスイッチが切り替わり、大ごとになったときに初めて気付き、われに返った時にはもう遅いというケースも多く見られます。かつては、たばこや違法薬物に向いていた依存の対象が、現代ではスマホに取って代わっているのです。

 こうした問題行動の危険性について、先生がどんなに注意喚起や指導をしても、子ども自身が「自分ごと」と思わない限り、本人が気付くことはありません。また、いたずらと犯罪の境界線が分からず、いつの間にか犯罪に巻き込まれてしまうことも少なくありません。子どもたちには、裸の写真一枚で人生を棒に振るリスクがあること、つまり「ネット上でしていることはリアルの生活にも大きな影響を及ぼす」ということに気付かせ、未然に問題を防ぐことが求められます。それはもはや、先生たちだけではどうにもならず、手に負えないのが実情です。

 文部科学省は2008年3月以降、「情報モラル教育の充実は必要不可欠である」としていますが、今後は今まで以上に、生徒指導として「ネットとの関わり方」についての教育が必須だと思います。ただ、現場の先生たちはネットの専門家ではありません。関係機関や専門家と密に連携を取り、分からないところや専門的分野は積極的に補ってもらうべきでしょう。これからの生徒指導は「専門家」「機関」「現場の先生」が一つになって行っていく必要があると思います。

(文/構成・オトナンサー編集部)

1 2

上條理恵(かみじょう・りえ)

少年問題アナリスト

少年問題アナリスト、元上席少年補導専門員、東京経営短期大学特任准教授。小学校、中学校、高校講師を経て、1993年より、千葉県警察に婦人補導員として、青少年の非行問題(薬物問題・スマホ問題・女子の性非行)・学校との関係機関の連携・児童虐待・子育て問題に携わる。学会活動として、非行臨床学会の会員としての活動も行う。小中学生、高校生、大学生、保護者、教員に向けた講演活動は1600回以上に及ぶ。

コメント