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不登校や会食恐怖症の原因にも…学校の過剰な「完食指導」がはらんでいる問題とは

「会食恐怖症」とは?

 完食指導が行われることで、「学校給食が嫌で不登校になった」というケースの相談も多いのですが、この完食指導がきっかけで「会食恐怖症」などの精神疾患を引き起こすケースもあります。会食恐怖症とは「人とご飯を食べることができない」というもので、神経症の社交不安症における一つの症例とされています。

 会食恐怖症の人が、人と食事を取ろうとしたり、あるいは食事機会を想像したりしただけでも、吐き気、めまい、胃痛、動悸(どうき)、食べ物が飲み込めなくなる嚥下(えんげ)障害、口の渇き、体の震え、発汗、顔面蒼白(そうはく)、空気を飲み込んでおなかが張る呑気(どんき)、黙り込んでしまう緘黙(かんもく)などの症状が起きて、「みんなで楽しくご飯を食べる」どころではなくなってしまうのです。

 そして、日本会食恐怖症克服支援協会が会食恐怖症の当事者に向けて行ったアンケート(2018年9月)では、384人の回答者のうち62.5%にあたる240人が「完食指導が会食恐怖症のきっかけになった」と回答しました。

 会食恐怖症当事者の中には、50代以上の人もいますが、そのきっかけとして「子どもの頃、先生に給食の完食を強制されたこと」を挙げる人もいるので、それがきっかけで長年悩むことになったと考えれば、その人の人生に大きな影響を与える問題です。

 しかし、完食指導の全てが悪いのかというと、そうではありません。完食する子どもが増えるということは、その子どもたちの栄養がしっかり満たされることにつながりますし、食べられる食材が増えて、子どもたちの「食の楽しみ」が広がることにもつながります。また、クラスの残飯が少なくなれば、食料の廃棄量が減ることにもつながります。

 では、何が問題かというと「やり方」です。例えば、勉強が嫌いな子に無理やり勉強させたところで、嫌いなものは嫌いですし、自分から前向きに勉強する気は起きないはずです。つまり、「無理やり食べさせる」「食べろと言えば食べるだろう」というのが古いのです。また、食べられない子は「食べろ」と言われても食べられないので困っているのです。

 強制することなく、食べられるようになる方法はあります。しかし、ほとんどの大人たちはそれを知らず、どこかで勉強機会があるわけでもないので、ついやってしまうということなのです。今回は「完食指導」の現状や問題点についてお伝えしました。次回以降、さらに内容を深めていきたいと思います。

(日本会食恐怖症克服支援協会 山口健太)

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山口健太(やまぐち・けんた)

一般社団法人日本会食恐怖症克服支援協会代表理事

盛岡市出身。2017年5月、一般社団法人日本会食恐怖症克服支援協会(アドバイザー・田島治・杏林大学名誉教授)を設立し、代表理事を務める。薬を使わずに「会食恐怖症」を克服した自身の経験を生かし、会食恐怖症に悩む人へのカウンセリングを行っている。相談実績は年間延べ1000件超。学校や保育所への給食指導コンサルティング活動、食べない子に悩む保護者の食育相談や、それをテーマにした講演・研修も行う。著書に「会食恐怖症を卒業するために私たちがやってきたこと」(内外出版社)など。

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