もし大地震が起きたら…会話ができない自閉症の息子とどう逃げる? 母が痛感した“共助だけに頼らない備え”
怖かったからこそ「備えよう」と思えた

「そなエリア東京」では、防災グッズや非常食も販売されています。非常食の種類はかなり豊富です。あまり見かけないタイプのものもあれば、普段から食べているお菓子の非常食用パッケージなど、なじみのある商品もありました。防災体験をする前だったら、私が必要なものを選んで買っていたと思います。
しかし、この日は違いました。
「家族みんなの分、買っておこうよ」
そう言い出したのは娘でした。自分が好きそうなもの、お兄ちゃんが食べそうなもの、家族みんなに足りるように、娘は真剣に悩みながら、一つ一つ手に取っていました。そんな娘の姿を見て、私はうれしくなりました。
防災というと、大人が子どもに「地震がきたらこうするんだよ」と教えるものだと思いがちですが、この日は少し違いました。怖さを体験して、自分で「備えたい」と思った娘。小学2年生の娘にとって、それは大きな心境の変化だったと思います。
7月28日に発生した熊本の地震を経て、私自身も改めて地震への危機意識を持ちました。そんな中、住んでいる自治体から、災害時に避難が困難な人を掲載する「避難行動要支援者名簿」についての文書が届いたのです。
息子は障害の程度から対象者だったため、災害時の避難支援を希望し、地域団体などへの名簿提供にも同意しました。
もちろん、名簿に登録したからといって、災害時に必ず支援してもらえるとは限りません。災害が起きれば、支援する側も被災者になるからです。
それでも、事前に利用できる制度は知っておき、できる申請はしておく、そして、自分たちでもできる備えをしておく、その両方が大切なのだと思います。
9月1日は「防災の日」です。障害がある子どもを育てていると、災害について考えるだけで不安になるものです。私も、まだ準備万端というわけではないですし、不安は完全にはなくなりません。
しかし、ただ不安に思っているだけでは何も変わりません。
「避難場所を確認する」「必要な支援を受けるための制度を調べる」「子どもが食べられる非常食を用意する」「災害が起きたときに必要なものを家族で考える」「災害時の行動を子どもたちと考える」
そんな小さな準備から始めればいいのだと思います。
そなエリア東京を訪れて、私は「防災は大人だけのものではない」と感じました。地震の怖さを体験した娘が、自分から「家族のために備えたい」と思ったように、子どもにも子どもなりの方法で、防災を自分ごととして考えることができます。
そして、障害がある息子だって、すべてを理解できなくても、怖さや周囲の変化を感じることはできるはずです。
だからこそ、家族みんなで考えておく。完璧な備えはできなくても、何も知らなかった昨日より、少しだけ準備した今日のほうがいい。その考えで、今できることを一つずつやっていきたいと思います。
9月1日の防災の日が、みなさんも家族で「もしも」を話すきっかけになればと思っています。
(ライター、イラストレーター べっこうあめアマミ)

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