オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

高齢ひきこもり者が「自活」へのこだわりを捨てるべき理由

自活できなければ本当に生きていけないのか

 当事者や家族と話していると「自活」にこだわる声が目立ちます。

「今まで、どうすれば子どもが自活できるようになれるのか、そのことばかり考えてきました。でも、それが難しいということもうすうす分かっています。しかし、分かったところで、何をどうすればよいのかが分かりません。だから、今まで何もしてこれませんでした…」とつぶやいた親御さんもいらっしゃいます。

「自活する以外に生きていける道はない」という考え方にとらわれ、身動きが取れなくなってしまった家族が多くおられます。身動きが取れなくなる、つまり外部に助けを求めることをしなくなるので、家族がどんどん社会から孤立していきます。

 自活できるようになるのが一番望ましいということは、言うまでもありません。しかし、自活にこだわりすぎると、ひきこもり状態にあるお子さんが自活できるようになるまでの道のりが、長く厳しいものになってしまうことでしょう。

 ひきこもり状態の本人から「月20万円くらい稼げるようになって、生計は自分で立てられるようにしなければいけませんよね? でも、そんなのとても無理。もう駄目ですよね…」と言われたこともあります。

 働いて自活することが難しいからといって、すべてが終わってしまうのでしょうか。できることはもう何もないのでしょうか。もちろん、そんなことはありません。親御さんの財産や社会資源を活用することで、仮に自活が難しくても何とか生きていける、そのような方法を探すことはできるはずです。すべてを諦める必要はありません。

 まずは外部に相談し、助けを求めることや社会とのつながりを持つことが重要です。その上で(1)柔軟に考え、まずは自活をすることが難しい前提でお子さんの将来設計を立ててみる(2)お子さんが生きていける方法を家族と一緒に考え、今からできることを実行していく――といったプロセスを踏んでいくことが大切だと思います。

 次回からは、自活することが難しいお子さんを持つ家族の支援に関するお話をご紹介していこうと思います。

(社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー 浜田裕也)

1 2

浜田裕也(はまだ・ゆうや)

社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー

2011年7月に発行された内閣府ひきこもり支援者読本「第5章 親が高齢化、死亡した場合のための備え」を共同執筆。親族がひきこもり経験者であったことから、社会貢献の一環としてひきこもり支援にも携わるようになる。ひきこもりの子どもを持つ家族の相談には、ファイナンシャルプランナーとして生活設計を立てるだけでなく、社会保険労務士として、利用できる社会保障制度の検討もするなど、双方の視点からのアドバイスを常に心がけている。ひきこもりの子どもに限らず、障がいのある子ども、ニートやフリーターの子どもを持つ家庭の生活設計の相談を受ける「働けない子どものお金を考える会」メンバーでもある。

コメント