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高齢ひきこもり者が「自活」へのこだわりを捨てるべき理由

高齢化・長期化に伴い、社会問題となりつつある「ひきこもり」。長期のひきこもりで「自活」が難しくなった場合、どうすればよいのでしょうか。

高齢化・長期化する「ひきこもり」にどう対応する?
高齢化・長期化する「ひきこもり」にどう対応する?

 誰もが一度は「ひきこもり」という言葉を聞いたことがあると思います。「ひきこもり」と聞くと、若い人が一時的に家に閉じこもる現象をイメージする人が多いと思いますが、近年、「ひきこもり」が高齢化・長期化し、社会問題化しつつあります。高年齢化・長期化すればするほど、自分で働いて生計を立てること、つまり「自活」が難しくなっていきます。そのため、「自活」だけにこだわるのではなく、別の方法も探る必要があります。

「60歳のひきこもり」も実在

 ひきこもる人は、一日のほとんどを家の中で過ごすため、社会との接点がなくなっていきます。そのため、次第に社会から孤立していく傾向にあります。

 内閣府は、2015年12月に行った調査をもとに、15~39歳のひきこもりの人数を56万3000人と推計しています。調査では「趣味の用事のときだけ外出する」「近所のコンビニなどには出かける」「自室からは出るが、家からは出ない」「自室からほとんど出ない」といった状態が6カ月以上続く人を「ひきこもり」と定義しています。

 調査が39歳までを対象としているため、「ひきこもりに40歳以上はいないのか」と考えるかもしれませんが、そんなことはありません。40歳以上のひきこもりの人数は年々、増加傾向にあると筆者は感じています。

 筆者は全国で、ひきこもりのお子さんがいる家族や支援者向けに、講演会でお話をする仕事もしています。高年齢化したひきこもりの人の生活設計について考え、親亡き後、ひきこもりのお子さんが生きていくためにどのような準備をしていけばよいのか、具体的な手法を交えアドバイスしています。講演会に参加する親御さんのほとんどは60代以上で、中には80代の人もおられ、高年齢化の深刻さを物語っています。

 個別相談も受けています。ひきこもりのお子さんの年齢は30~50代が中心ですが、母親が90歳、ひきこもりのお子さんが60歳という家族の相談も受けたことがあります。

 自治体やNPO法人などの支援者とお話をしても、ひきこもりのお子さんやその家族の年齢層は年々上がっており、「高年齢化の流れは止められていない」ことでほぼ意見が一致しています。そんな中、内閣府でも動きがありました。2018年秋、40~64歳の人を対象にした、ひきこもりに関する実態調査を実施しました。年度内に結果を公表する予定です。

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浜田裕也(はまだ・ゆうや)

社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー

2011年7月に発行された内閣府ひきこもり支援者読本「第5章 親が高齢化、死亡した場合のための備え」を共同執筆。親族がひきこもり経験者であったことから、社会貢献の一環としてひきこもり支援にも携わるようになる。ひきこもりの子どもを持つ家族の相談には、ファイナンシャルプランナーとして生活設計を立てるだけでなく、社会保険労務士として、利用できる社会保障制度の検討もするなど、双方の視点からのアドバイスを常に心がけている。ひきこもりの子どもに限らず、障がいのある子ども、ニートやフリーターの子どもを持つ家庭の生活設計の相談を受ける「働けない子どものお金を考える会」メンバーでもある。

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