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44歳ひきこもり長男が「自閉スペクトラム症」と診断…先行き見えず、途方に暮れる母に差し伸べられた“救いの手”

質問を手掛かりにし当時の記憶を呼び覚ます

 面談後、勤さんから同意が得られた私は、さっそく母親とともに病歴・就労状況等申立書の作成を始めました。

 まず私は、自閉スペクトラム症の人に見られる幼少期の頃によくある事例を母親に伝えました。その事例は次の通りです。

【自閉スペクトラム症の人に見られる幼少期の頃によくある主な事例】
・始語が遅い。自分から話そうとしない
・味やにおいに敏感で、食べ物の好き嫌いが激しい
・花火の爆発音や車のクラクションなどの大きな音が苦手
・感覚が敏感で服や下着を着るのを嫌がる
・高い所が苦手
・運動が苦手
・幼稚園での歌の練習やお遊戯会の練習などの集団行動ができない
・一人遊びを好む
・こだわりが強く、周囲を困らせていた

 母親はこれらを参考に、勤さんの幼少期の出来事を思い出していきました。最初は時間がかかりましたが、1つ思い出すとそれにひもづいた記憶が次々とよみがえってきました。私は母親からの回答を基に、勤さんの幼少期の話をまとめました。

 その内容は、おおむね次の通りです。

【勤さんの幼少期の話】
食べ物の好き嫌いが激しく、野菜や魚はほとんど食べなかった。薬を飲ませようとするとすぐに吐き出してしまい、飲ませるのが大変だった。家族と旅行で海に行っても嫌がって入ろうとせず、山へ行っても高いところを怖がってロープウェーに乗ることができなかった。音に敏感で、花火などの大きな音をとても怖がっていた。近所の犬に吠えられてしまい、母親と一緒にいてもその道を通ることが一切できなくなってしまった。幼稚園で、お絵かきの時間に使ったクレヨンをしまう際、箱の見本にある順番通りに並べていかないと気が済まず、片付けにかなりの時間がかかっていた。先生に「順番はバラバラでもいいんだよ。みんなが待っているから早く片付けましょう」と注意されても、まったく耳を貸さなかった。幼稚園では自分から友達に声を掛けることもなく、一人離れて友達の様子を見ていることが多かった。

 幼少期の話をまとめた私は、次に小学校の頃によくある事例を母親に伝えました。その主な事例は次の通りです。

【小学校の頃によくある主な事例】
・国語の漢字や文章題、算数の計算や文章題が苦手だった
・社会の地理や歴史がなかなか覚えられなかった
・手先が不器用で、図画工作や家庭科での裁縫や料理が苦手だった
・体育(運動)が苦手だった
・忘れ物や宿題を忘れることが多く先生に怒られていた
・集団行動が苦手だった
・クラスメートからいじめられてしまった
・好き嫌いが激しく、給食はほとんど残していた
・宿題をしなければいけないことは分かっているのに、どうしても遅くまで遊んでいた
・朝起きることが難しく、遅刻ギリギリに登校していた

 母親からの回答を基に、私は次のような具合的なエピソードをまとめました。

【エピソード】
国語は漢字を何度練習しても書くことができなかった。文章の読み飛ばしや言い間違えも多くあった。算数は計算が合わず、文章題では式を作ることができなかった。本人は要領が悪いので、宿題は母親に手伝ってもらって毎日夜遅くまでやっていた。ある日、ランドセルに何も入れずに帰宅したことがあり、母親がその理由を聞いた。すると本人は「学校の先生から『ランドセルに教科書や筆記用具を入れて家に持ち帰るように』と言われなかったから」と答えた。友達ができなかったので、放課後は1人で家で遊んでいることが多かった。高学年になると、からかいやいじめの対象にされてしまった。本人は相手に対して文句を言ったり抵抗をしたりすることもせず、母親にもいじめのことは何も言わなかった。本人が大人になった後、いじめの出来事を母親に伝えたことがあり、母親はそこで初めて小学生の頃にいじめられていたことを知った。

 その後も同様に、中学校、高校、社会人でよくあるエピソードを母親に伝え、母親が当時の出来事を思い出し、それを私がまとめていくといった作業を繰り返していきました。

 そして、ついに幼少期から現在までを記載した病歴・就労状況等申立書を完成させることができました。

 しばらくしたのち、母親から連絡がありました。

「おかげさまで長男は障害年金(障害基礎年金)の請求が認められました。もし私一人で請求しようとしていたら、いまだに病歴・就労状況等申立書は完成していなかったことでしょう。ご協力いただきどうもありがとうございました」

 母親からの連絡を受け、私も一安心することができました。

(社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー 浜田裕也)

【画像】要注意! これが、ひきこもりの人にやってはいけない“NG行為”です

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浜田裕也(はまだ・ゆうや)

社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー

2011年7月に発行された内閣府ひきこもり支援者読本「第5章 親が高齢化、死亡した場合のための備え」を共同執筆。親族がひきこもり経験者であったことから、社会貢献の一環としてひきこもり支援にも携わるようになる。ひきこもりの子どもを持つ家族の相談には、ファイナンシャルプランナーとして生活設計を立てるだけでなく、社会保険労務士として、利用できる社会保障制度の検討もするなど、双方の視点からのアドバイスを常に心がけている。ひきこもりの子どもに限らず、障がいのある子ども、ニートやフリーターの子どもを持つ家庭の生活設計の相談を受ける「働けない子どものお金を考える会」メンバーでもある。

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